ご紹介が遅くなりましたがアップされています。少女のころ、ルーマニア革命の報道にふれたときの気持ちを思い出しながら観ていました。

https://spice.eplus.jp/articles/311161
 32年前、夫が大学入学時に購入したテレビが今週遂に映らなくなったので買い換えました。ブラウン管テレビから一気に有機ELテレビの世界に突入〜。大画面で観る『最初はパー』第5話の四代目市川猿之助の演技に泣かされた……。キャスト全員で踊っている主題歌「Good Luck!」の振り、マスターしたい。
 26日13時半観劇(東京文化会館大ホール)。パトリック・ド・バナが芸術監督を務めるガラ公演。以前取材したことのあるダンサーの方が数名出演していて、その記憶を懐かしく思い出し。

 マリアネラ・ヌニェス&ワディム・ムンタギロフで『白鳥の湖』より “黒鳥のパ・ド・ドゥ”。肘から先、膝から先がびよーんと伸びてゆくような、ヌニェスの腕と脚の動き――腕がとても蠱惑的。オディールという存在について改めて考えたくなる示唆に富む舞。

 マチュー・ガニオで『月の光』。途中くすっと笑ってしまいそうなおかしみを感じた。

 ダリア・パヴレンコ&ダニーラ・コルスンツェフで『スパルタクス』。今観るとどうしてもいろいろ考えてしまう演目なり。

 ナタリア・オシポワで『Ashes』。身体能力の高さ。

 エレナ・マルティン&パトリック・ド・バナ(振付も)で『MEDEA MOTHER』。不思議な吸引力と、メディテーション効果を感じる作品。

 エドワード・ワトソンで『インポッシブル・ヒューマン』。ベヴ・リー・ハーリングがポロポロと歌う同題曲ともマッチした舞に、非常におもしろく引き込まれた。自嘲タッチの表現に哀愁。イギリスはブロムリーご出身とのこと、私、チャーチル劇場でかかっていた『ロッキー・ホラー・ショー』を観るために、一週間ブロムリーに滞在した楽しい思い出があります。

 エレオノラ・アバニャート&マニュエル・ルグリで『Árbakkinn』。「難しいリフトです」「降ろし方に趣向が凝らされていました」等、脳内でついついフィギュアスケート風の実況中継を行ないながら、さまざまなジャンルを通じて世界とつながる喜びを感じたひととき。

 スヴェトラーナ・ザハロワで『瀕死の白鳥』。2017年の「トランス=シベリア芸術祭」で観たときより心に響いた。

 ダリア・パヴレンコ&ダニーラ・コルスンツェフで『シェヘラザード』。パブレンコの描く曲線が綺麗。

 エレナ・マルティン(振付も)で『Limbaé』。巧みに操るショールと衣装の裾とが見事な相似形を成して動く様に見惚れた。

 エレオノラ・アバニャート&マチュー・ガニオの『病める薔薇』、ナタリア・オシポワ&エドワード・ワトソンの『Ambar』、スヴェトラーナ・ザハロワ&パトリック・ド・バナ(振付も)の『Digital Love』は、3演目連続で、男性ダンサーが女性ダンサーからそれぞれ魅力を引き出していく様に魅せられた。

 マリアネラ・ヌニェス&ワディム・ムンタギロフで『ドン・キホーテ』。ヌニェスの舞に女王感あり。ムンタギロフに颯爽とした魅力。

 マニュエル・ルグリで『The Picture of…』(パトリック・ド・バナ振付)。彼にとって、本公演がラスト・ステージとのこと。澄み切った境地から伝わってくる万感の惜別の念に、涙せずにはいられなかった。――タイトルロールを踊った『オネーギン』を含め、これまで観てきた彼の数々の舞台を思い出した。組んだ女性ダンサーたちを輝かせるその手腕を思い出した。彼の踊りについて友人たちと交わした会話や、舞台鑑賞の前後に起こった人生のさまざまな出来事をも思い出した――そうした事柄すべてを含めて、マニュエル・ルグリというダンサーが与えてくれた観劇経験なのだと思う。日本の観客とたくさんの素敵な時間を分かち合ってくれたことに感謝。公演最終日となる明日の一日が幸せに満ちたものでありますように。
 18時半の部観劇(紀伊國屋ホール)。ハロルド・ピンターの不条理劇を小川絵梨子が演出。出演はイッセー尾形、木村達成、入野自由。おもしろい! 第二幕にさしかかるあたりでぐわっと作品に引き込まれ、……今置かれた不条理な状況を改めて客観視して泣き笑いすると共に、他者の置かれた不条理な状況に思いを馳せるひととき――先月、新国立劇場中劇場で上演されたトム・ストッパード作『レオポルトシュタット』演出の際にも感じた、現状をとらえる小川の視線が光る。……不条理劇、難しそう……みたいな思いは捨ててぜひ劇場へ〜(東京公演は29日まで)。ちなみに、来月初めに開催される兵庫県立芸術文化センター公演の方では、先日SPICEに掲載されたお三方の鼎談記事の一部抜粋が配布ちらしになっています。
 『HiGH&LOW−THE PREQUEL−』は、テレビドラマや映画等、さまざまなメディアで展開されているEXILE TRIBEの総合エンタテインメント・プロジェクトの宝塚版で、作品群の前日譚をオリジナル・ストーリーで送る(原作・著作・構想:HI-AX、脚本・演出:野口幸作)。6月に東京ガーデンシアターで上演された『FLY WITH ME』(構成・演出:野口幸作)でその予告編たるパートを観たとき、「HiGH&LOW」シリーズについて何も知らなかったあひるは目が点に。
「……ふ、不良の抗争。これを宝塚でやるの?!☆」
 最近の宝塚、攻めすぎである。しかし。攻めの姿勢には慣れている。「不良の抗争と言えば、真風涼帆トップ時代の宙組で『WEST SIDE STORY』(2018)やったっけ……」と、何だか柔軟に受け入れてしまう自分がいた。『FLY WITH ME』では、宙組生たちが “EXILEがよくやる、タイミングを一人ずつずらしてぐるぐる回るダンス”を披露する場面もあったが、大人数で綺麗に回っていて、センターブロックで観ていたら実にド迫力。
 そして、いよいよ東京宝塚劇場に登場した『HiGH&LOW−THE PREQUEL−』と言えば。余命いくばくもないヒロイン・カナ(潤花)が、山王連合会を率いる主人公コブラ(真風涼帆)と一緒に、人生が終わるまでにやりたいことを叶えていくという物語、そこに、ミュージカル『ロミオとジュリエット』風味も加わった構成で、……考えてみれば、『ロミオとジュリエット』にも若者の抗争が描かれているな……と。山王の街に5つの勢力が群雄割拠するという構図も、宝塚の文脈における解釈もでき得るようにも感じた。そして、“清く正しく美しく”の宝塚において不良の抗争を描くという難業に、宙組生たちが演者として堂々挑戦、宝塚作品として見事成立させていた。この舞台がなければ、「HiGH&LOW」シリーズと出会うことも、日本における不良文化について考えることもなかっただろうな……と思う。世界が広がった。
 真風涼帆のコブラの演技には、トッププレお披露目公演『WEST SIDE STORY』でトニーを演じたときより、生のパワーを持て余した若者の心に寄せる深い共感があり、そこに、役者としての大きな成長を感じた。そして、終幕、……俺はこの街を守る……とコブラの心情を歌い上げるとき、男役として、宙組トップスターとして、長年宝塚を守ってきた者の矜持を感じずにはいられなかった。『FLY WITH ME』での予告編を観ていてその活躍を期待させたカナ役の潤花も、せつない発声に人生のはかなさを知る者らしさを感じさせる演技。ボイスレコーダーに残ったカナの声を聞き、物思いにふけるコブラの前に、カナの幽霊が「出ちゃった」と出現するラストは、あまりの唐突さに虚を突かれて一瞬なぜだか笑ってしまい、そして、泣いてしまう……。限りある時間をいかに生きるか、観る者に問いかける刹那。芹香斗亜は“Vシネマの帝王”哀川翔を連想させる風貌で、女性をとことん守り抜くWhite RascalsのリーダーROCKYを飄々と快演。役柄に少々とぼけた味わいがにじむのがその大きな魅力だと思う。RUDE BOYSのリーダー、スモーキー役の桜木みなとは、キレのある踊りのうちにやり場のない憤りを感じさせ、自身が抱える心の葛藤を静かな演技の中に見せた。そして、『FLY WITH ME』における予告編を観ていて、作品の起爆剤になりそうと感じさせた、レディースチーム苺美瑠狂(いちごみるく)の総長純子役の天彩峰里が大暴れ。ピンクの特攻服に身を包んで颯爽と踊る姿のかっこよさに、「自分も純子さんについていくっす!」と忠誠を誓いたくなるものが。天彩は、『夢千鳥』(2021)ではモラハラ夫である画家・竹久夢二の芸術のために愛人をもらい受けにいく妻の役、『プロミセス、プロミセス』(2021)ではモラハラ上司と不倫した挙句自殺未遂を起こすOL役と、宝塚作品のヒロインとしては風変わりな役どころで好演を見せてきた。今回も、……こういうスケバン、いたいた……と思わず頷いてしまう役の造形。娘役の枠を踏み出すような役柄を与えられ、没入して役作りをし、その都度、……娘役って何だろう……と自分に問いかけては芸を磨き上げてきたことは、彼女の大きな強みだと思う。

『Capricciosa!!−心のままに−』はイタリア各地を舞台に送るショー(作・演出:藤井大介)。心でイタリアの上質なジェラートを味わったような、でも舌ではやっぱり味わっていないので観劇後に食べに行きたくなるような、そんな爽快感が残る作品である。次に控える退団作『カジノ・ロワイヤル〜我が名はボンド〜』が一本物なので、真風涼帆にとっては最後の大劇場ショー作品となるが、過去に藤井大介が手がけてきたトップスターの退団ショーをも思わせるサヨナラ風味が感じられた。それにしても、男役・真風涼帆はどこまでもかっこよく、そこに芹香斗亜、桜木みなととスターが揃い、下級生にも男役としての意気込みが大いに感じられ、娘役も生き生きと個性を発揮して、宙組、非常に盤石である。イタリアを取り上げた宝塚の過去作品へのオマージュもどこか懐かしく感じさせながら、主題歌「Capricciosa!!」を挟みつつ、オペラの楽曲やナポリ民謡等で綴っていく。フィナーレで印象的に響くのは、日本の歌謡曲、ラテン・サウンドが魅力の中森明菜の「ミ・アモーレ」――何だかそれが、この世の他のどこにもない、宝塚ならではの幻想のラテン・ワールドを描き出しているように感じられて。だから、「Capricciosa!!」の一節、「♪カプリチョーザ カプリチョーザ カプリチョーザ」というフレーズを口ずさむと、……心の中に巻き起こる幻想の熱狂の渦に、自分自身が飲み込まれていくような思いさえする。「ミ・アモーレ」に乗って真風涼帆と潤花がデュエットダンスを見せる際、パンチの効いた歌唱を披露したのは天彩峰里。天彩はナポリの場面でも見事な歌唱を披露、何かのリミッターが外れたような凄まじいエネルギーを放っていた。気迫に満ち満ちたラインダンスもすばらしかった。私が観劇した日は、ラインダンスが終わって拍手があり、それが止みそうになってからもう一度ぐわっと押し寄せるように拍手が起こってなかなか鳴り止まなかった。その体感が忘れられない。ラインダンスの衣装は、白を基調に、黄色い縁取りの白い羽を背負うというもので、その色彩の鮮やかさから、観劇後に食べに行くジェラートはレモン味がいいなと思った次第。

 『HiGH&LOW−THE PREQUEL−』で、山王の街の覇権を狙う苦邪組(クジャク)の頭リンを演じた留依蒔世は、男役としての歌唱を朗々と聴かせ、悪役ぶりで魅せた。退団の日、最後の瞬間まで宝塚の男役を思いっきりENJOY!