紀平梨花。――うねり。その激しさが、知らず封印していた私の想いを解き放っていった。私は世代的に、憧れの女子フィギュアスケーター=伊藤みどり選手である。トリプルアクセルを跳ぶみどりちゃんを、…うわあ、気持ちよさそうだなあ、楽しそうだなあ…と思って見つめていた。でも、観る側のトリプルアクセル成功への期待が過剰になりすぎると――それは、トリプルアクセルに限らず、すべての大技に言えることだけれども――、みどりちゃんはじめ、多くの選手たちを苦しめることになるのではないかといつしか思うようになって、…何だか、そういう報道を目にするだけで自分まで胸が苦しくなってしまって、だから、その点に関してはできるだけ淡々と向き合おうと思ってきていて…。でも、軽やかに跳ぶ紀平梨花を観ていて、ああ、自分はやっぱり女子選手のトリプルアクセル、とても好きだな…と。
 改めて。敵も魔物もリンクにはいませんね。

 三原舞衣は化粧大改善〜◎。彼女は昨年末の「メダリスト・オン・アイス」で、感情を昇華させて滑っていて、その様が美しかった。内に芯の強さを秘めた人だと思った。そんな彼女の魅力が、フリーでは一層感じられて、軽やかに鳴り響くベルを連想。エキシビションの『シンデレラ』はキュートでとっても楽しそう。

 最近ものすごく気になるエリザベータ・トゥクタミシェワ。今大会はショート、フリー、エキシビションとも“トゥクタミシェワ感”――けだるい色気というか――が抑え目。その分、もともとの美しさがすっきり際立っていたけれども。今回不発なだけだったのか、キャラ変なのか、今後の展開からますます目が離せませぬ。

 宮原知子。自分ですべてわかっていると、エキシビション(堂々たるエレガンス!)を観てわかったので、私はもう書きません。

 山本草太のフリーの演技にはいい意味での緊迫感があり、非常に引き込まれた。鋼のように強い彼の精神に美を感じた。絶望を知る人は、希望をもまた知る人である。エキシビションの演技など、18歳にしていささかの哀歓さえ漂う。でも、まだまだ若いので、表情まで老成させてしまうのはもったいないような&毛の量的に重く見える髪型は要再考〜。

 宇野昌磨。フリー。――吹っ飛んでしまっている。そこから“リンクは最高のエクスタシー”まではあと少し。
 ――四回転ジャンプが跳べるってどんな感じですか? と訊かれたとき、彼ならどう答えるだろう。跳べるということです、と答えるだろうか――彼の答弁はどこかすっ飛んで人を食っているようで、けれども、本質をついていていつも興味深い――。それと同じことです、と私も答える。できるということです。それだけのことです――ただ、それは美のためだけに用いるというのが、神様との大切な約束です。それでときには魔物も鬼も見る。でも、多くの場合、とても美しいものを見ることができて、その美のきらめきのかけらが私の心の中にはいっぱいつまっていて、それを文章という形で取り出して、多くの人と分かち合うことができる。そのときまた、美しいものを見ることができて――。その繰り返しが、今の私の人生です。
 エキシビション。いいぞ〜、もっと好き勝手やれ〜!!!

 「レジェンドオンアイス」についてはまた明日〜。
2018-11-11 23:46 この記事だけ表示
 昨夜観てきたゲネプロのレポート記事が掲載されました。

https://spice.eplus.jp/articles/216407

 舞台を観ながら、自分にとっての至高のベートーヴェン経験――作曲家は彼岸を観、聴いて、それを譜面に記したのだと感じられた、2014年1月の「クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル」<http://daisy.stablo.jp/article/448444907.html>――を思い出していました。
2018-11-11 15:09 この記事だけ表示