…うん、自分でも思うときがある。例えば。この年の瀬の押しつまった今、クリスマス・イヴだというのに、締切も迫っているのに、自分は何をやっているのかと。
 あんまり先を深く考えてはいなかったです。走り続けて、気がついたら、こんなことになっていた。「そういう人だよね」と、夫に言われた。「突撃、驀進していくのが、あひる」と。暴走機関車か、オレは。
 私はどうも、まっすぐ以外に、人との向き合い方を知らない。人間関係も、本音でつきあうか、つきあわないか、自分でもものすごく極端だと思う。おかしいのかもしれない。でも、そうやって生きてきてしまったので。
 …“変節”に見えるのかもしれない。途中で姿勢が変わったと。でも、その上では、貴方の存在も大きい気がする。別に、人のせいにしようとしているわけでは決してないのですが。最初は、美に取り組んでいる人が一人しかいないような気がした。…その当時の自分には、その一人しかわからなかった。けれども、どんどん突き進んでいったら、次々と人が加わってきて、もう、全員一緒でということの方がむしろ素敵だなと、そう感じた次第。それに、だんだんと隠された部分も見えてきたことだし――何も最初から、これはこうなっていくなとすべて見通した上で取り組むわけじゃなし。
 …アホですか、の件。思うに、それこそが、美の入り口なのではないかと。生の根源だから。私だって、どうしていつも同じようなことが起こるのか、と思う。同じ失敗ばかり繰り返していると言われたことも、何も今夜が初めてではない。でも。相手が違えば同じ失敗ではないし、そもそもそれが本当に失敗なのかどうかもわからないし、万が一失敗だったとしても、そこから学べばそれでいいと思っているので。今夜起きたことも、きっと大きな何かへとつながっていくことなのでしょう。
 無理禁物! 今夜の宇野昌磨もかっこよかった! 立ち向かって、闘った! 王者!

 全日本選手権についてはこれにて終了!
2018-12-24 22:59 この記事だけ表示
 笹原景一郎。じわじわ、感涙。とてもよかった。一つ一つのエレメンツに、どれだけ莫大な時間と労力がかけられているんだろう…と、見入らずにはいられなかった…。つらいことも多かっただろうと思う。でも、リンクにいる彼からは、楽しかった! という幸せな思いばかりが伝わってくるのだった。これからは一緒に応援しましょう!

 小林健斗。頭の上から透明な糸でぴんとつられているような、端正さ。

 山田耕新。激しく手を震わせる最初の振りから“山田耕新劇場”をエンジョイ。コミカルな振りも交え、彼だけの確固とした世界がある。社会に出て、社会を知って、その上で表現できるスケートを見られるすばらしさ。

 三宅星南。曲は『レ・ミゼラブル』。「オン・マイ・オウン」では胸締め付けられ、「民衆の歌」では、観ているこちらもどんどんたぎって来て…。大いに見どころあり。

 鈴木潤。ビートルズ・メドレー。…北海道の大地、大空の下にたたずむ一人の男。飄々と…。けれども、曲が「Let It Be」に変わったあたりで、…やせ我慢をして、何食わぬ顔で口笛を吹くその姿が見えて、ぶわあっと涙が出そうに…。スケート文化をますます根付かせていきましょう! 髪型は要検討。

 佐藤洸彬。…こんなに硬派な叫びを秘めたフィギュアスケートを、初めて観た。突き抜けるように壮大な、強固な世界観を、リンクに描き出した。すごいものを観た。しびれた! (内容的には、平昌五輪の羽生結弦のフリースケーティングの演技に近いものがある) ――“亡命”していく、一人の人間。亡命は通常、不自由な国から、自由な国へとなされるものである。貴方のような力強い仲間を待っていました! 共に闘っていきましょう。

 日野龍樹。“私をみんなが見るの”の『ラ・ボエーム』の「ムゼッタ・ワルツ」に乗せて、「見よ!」との堂々たる演技。いざとならば潔く散らんとの、武士のような覚悟を秘めた、美しい心の人。壮絶な生き様を見せる姿に、美男ぶりが際立って。

 山本草太。ブレない上半身が美しい。…スケートを手放してたまるか! と、何度も、何度も強く伝わってきた…。生きていてよかった…と。そんな姿を観られて、こちらも生きていてよかった。涙。人間、ときには泣きたい夜もある。でも、励まし合って、前向きに生きていける。今日の貴方の演技に、励まされました!

 壷井達也。やはり落ち着いて安定感がある中に、この夜はわくわくする気持ちも伝わってきた。完成されたものを感じさせるけれども、まだ16歳、個性を見つけて、どんどんはじけていけ〜!

 友野一希。リンクに躍動する魂を、茫然と観ていた…。何度でも這い上がって来るとの、不屈の魂。まだまだ遠く、高くに行けるこのプログラム、ぜひ来年へと練り上げていってほしい。

 田中刑事。
 …貴方と、私の思いは同じです! 今年の秋に、気づいた。そのために神様に遣わされたんだろうな…と。それまで、自分でもわからなかった。やり始めてみないとわからないこともある。今夜、貴方の滑りを観ている時間は、とても楽しかった。幸せな時間をありがとう。温和で優しい人だから、その心にときに大きな負荷がかかっているのも、今夜、非常によくわかった。けれどもやはり、貴方のような大きな心の持ち主が、美のために踏ん張るべきときもあるんじゃないかと…。そう、今夜のように! 応援は惜しみませぬ。

 鍵山優真。ジャンプに見惚れる。そして、氷に吸い付くようなスケーティング。キラキラした姿、その躍動感に、未来を感じてわくわくする!

 中村優。ショートも途中までよかったのですが。物語を自分の中で構築し、それを滑る力がある。なかなか素敵なロミオ。

 島田高志郎。曲は「アンダルシアの冬」。シニアに果敢に挑んでいった17歳。――情熱。心に咲いた小さな花を、慈しみ、いとおしむような。
2018-12-24 22:46 この記事だけ表示
 …なぜだろう。最近、坂本花織の演技を観ていると、冒頭から涙がじわっとあふれてくる。そして、自分が彼女と同じ年齢だったときのことを強く思い出す。私、あのころ、何を考えていたのかな…と。
 ずっと気になる存在だった。周りがときとしてこんなに「女」を競い合う競技なのに、天衣無縫と言おうか、無邪気と言おうか…。だから、「化粧!」とお節介も言った。私は宝塚歌劇を見慣れているので、“男役/娘役”という一つの判断基準が自分の中にあるのを否定し得ないのだけれども、それで言うと、坂本花織は性格的に男役トップスター向きの人だということなんだろうな…と、最近になって気づいた。男役トップスターは、一つの組を背負う。組子全員の思いを背負って、舞台に立つ。
 …そして、この夜の坂本花織は、大きなものを背負って立った。滑るうちに、決意を新たにした。包容力を感じた。年下の彼女に、深い敬意の念を感じた。気づいたら嗚咽していた。ずっと、ずっと。
 そうして滑って、坂本花織は、全日本選手権を制した。
 王者にふさわしい滑りだったと、私は思う。
2018-12-24 21:39 この記事だけ表示
 中塩美悠。浮かべ続けた晴れやかな笑顔が実に印象的。…スケートへの思いがあったから続けて来られた! 感謝しかない! と圧巻のラスト。

 十倉日和。彼女のことは、ショートのときから気になっていて、どう書こうか悩んでいた。ぽっちゃり体型である。どうしてもそこに目が行ってしまう。けれども。高いジャンプはド迫力、技術もある。性格もチャーミングな感じ。今後、さらなる個性が見られるのか、気になる存在。

 本田真凜。…ずっと涙を浮かべて観ていた。流れるような滑り。大輪の花が氷上に咲いたような瞬間のあるスピン。スケートと、ひいては自分と向き合う姿勢が真摯なものへとますます変わってきた。18歳、今いろいろなことに気づけてよかった! 未来は明るい。

 竹野比奈。後半、音楽に乗っていて、気持ちが非常に入っていた。ショートのときからちょっと気になっていたのは、もう少しメリハリがつくといいかなと。動きに流れがあるのと、流れていってしまうのとでは異なる。この動作は前の動作からの続きなのか、それともここから次へと続いて行くのか、若干?となるところがあり。

 本郷理華。見えない糸が全編にわたってぴんとはりめぐらされているような、気迫みなぎるプログラム。見入ってしまった。とてもよかった!

 大庭雅。魂の入り込みを感じたショートに続き、腕を柔らかく使えているのが◎。ところどころムラはあったものの、観ているこちらに音楽が伝わってくる演技だった。

 長縄和奏。ジャンプ高い! キレがある。「オペラ座の怪人」で、前半、手で仮面をつける振りは、やるならもっと明確に見せていった方が◎。15歳ながら実に堂々としていて、今後が気になる。

 細田采花。トリプルアクセル2本、きれいに決まった! ジャンプがこれだけ飛べて、後は伸びしろしかない。遅咲きスケーター、いいじゃない! 人生設計等いろいろあるだろうから、無責任に続けて! とは言えない。でも、やっぱり、世界でトリプルアクセルを跳ぶ姿が観たい。

 白岩優奈。音楽の変化も明確に表現されていて、緩急ついた演技が◎。

 青木祐奈。スケートに流れがあり、その中にジャンプが組み込まれていた。

 山下真瑚。女性ヴォーカルの『蝶々夫人』の歌声の広がりと共に、観ているこちらの心もふわっと広がっていく、そんな演技。とりわけ後半、ドラマティックでダイナミック。音楽が気持ちよく心に入ってくる。
 彼女については以前、「音になる」と書いた。この表現につき、もっと掘り下げていくべきだと、その演技に教えられる思い。おそらく、私がその音楽を感じるのと、演者がその音楽を感じて表現しているのと、シンクロ率が高いときにそのように感じるのだと思うのだけれども、そのメカニズムを自分でももっと探求していきたい。

 川畑和愛。後半ちょっと疲れてしまったけれども、長い手足を活かした大きな演技が氷上に実に映える。

 横井ゆは菜。音楽を感じようという強い思いと、芸を伸ばそうという貪欲さがうかがえる演技。

 紀平梨花。この日は、彼女本来の美しいスケート(グランプリファイナルのフリーについては、「心がストーム」と書こうかと一瞬思った)。
 美は心から生まれる。すばらしい才能をもっているのだから、その心を安定させないと! 揺れるのはわかる。繊細だから。繊細だからこそ美も表現できるわけで。でも、まずは心の安定。
 演じる場でのやつあたりは本当にお勧めしません。芸が崩れる。そして、その立て直しに時間がかかる。それは、その場が、そうすべき場ではないからなのだろうと思う。私は、職業柄、芸をしていない人には怒る。そして、芸をするんだったら、じゃあ…と、怒りはすぐに消える。しかし。神様に別のお考えがある場合――美は本来、神様に捧げるものとして始まったところもあるわけで――、何が起こるか私にもわからない。

 樋口新葉。フリーじゃなくてショートだったんじゃ…というくらい、あっという間の演技。ひりひりとしたヴィヴァルディの音楽とあいまって、すさまじい緊迫感。シャープに、タイトに、引き締まった演技。貴女は、いろいろ鋭い。これから未来に向けて、大人の女性同士、深い対話をしていきたい。祈、怪我完治〜!

 三原舞依。テーマは“天使”。――ときに、空に舞い上がっていくような演技。
 天使もいろいろあると思う。失敗もするだろう。悪魔と闘わなくてはいけないし、そのためにも強くなくてはならない。例えば、宝塚歌劇のモットー「清く正しく美しく」は揶揄されがちだけれども、しかし、それは、決して「清く正しく美しく」あるばかりではない世界で敢えての「清く正しく美しく」だと私は思うものである。
 この日、演技のラストで彼女が至った境地は、トップ選手でもなかなか到達し得ない次元だと思う。スケートの天使!

 宮原知子。途中でじわっと涙がこみあげた。タンゴと共に解き放たれていく心。超絶美のスピン。彼女は自分で答えを出しつつある。それを一緒に見届けに行く。
2018-12-24 21:37 この記事だけ表示