先週はお休み、二週間ぶりにテーマ音楽が聞けてうきうき。
 ストックホルムから無事帰ってきた金栗四三(中村勘九郎)。その間に明治天皇が崩御し、元号は大正に変わっていた。オリムピックで棄権した彼を、周囲は温かく迎える…かと思いきや、「敗因は?」と鋭く立ちふさがった人が。二階堂トクヨ――「女史」と呼びたくなる、寺島しのぶの怪演。いきなりイギリスに留学してしまいましたが、今後の展開が気になる。
 海外視察を経て、四三より後に帰国した嘉納治五郎(役所広司)はといえば、…大日本体育協会の部屋で机が隅に追いやられており。会の新たなメンバーとして紹介され、にやっと笑う岸清一(岩松了)――代々木の「岸記念体育会館」にその名を残す人ですな。ちなみに私、岩松了が社長を演じている、名刺管理サービスのCMが好きでして。満員電車でも、車内モニターであのCMが流れていたりすると、なごむ。こちらの展開も、気になる。
 一方、若き日の志ん生こと孝蔵(森山未來)は、師匠橘家円喬(松尾スズキ)とは違う噺家について巡業に出ることに。師匠に捨てられたかのように思う孝蔵。そんな彼を見送るため、新橋ステイションまで走って追いかけてきた師匠。…泣けるねえ。師匠に言われた「フラがある」が、意味はよくわからないながらも孝蔵の心の支え。そして、足元をもつれさせながら去る師匠を見て、…師匠はフラフラ…と。『世界は一人』でも如何なく発揮されていた松尾スズキの不思議な身体性が活き。
 と、新橋ステイションがたびたび登場した今回でしたが。これからほどない大正三年には閉鎖されて貨物駅・汐留駅になり、西洋文明の窓口としての新橋が地盤沈下、「明治の新橋」から「大正の銀座」へと時代は移り変わっていく――という話をちょうど『銀座と資生堂』(戸矢理衣奈著)で読んだばかり。ラストでは四三の見合いも描かれ、『いだてん』の物語もますます新展開へ〜。
2019-04-14 23:39 この記事だけ表示
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 三浦璃来&市橋翔哉。
 今日の方が二人の動きが合っていたと思う(昨日のショートでは、女性はせかせか、男性はゆったりとしているように見えた。同じ振りでも、身体の大きさが違うとそれだけで違った振りのように見えたりすることがある)。いいコンビだな…と感じる。

 ブレイディ・テネル。
 さまざまなバージョンの「ロミオとジュリエット」の音楽によく合った演技だった。運命を懸命に生きようとするジュリエットが見えた(前は、…これ、ティボルト? …と思うほど強さが強かった…)。

 エリザベータ・トゥクタミシェワ。
 今夜の彼女のような表現世界を展開した人は、男子選手にはいても、女子選手で観たのは世界初。
トリプルアクセルがエロティックな美と自然に結びついている様は、他ではあまり観たことがないかもしれず。スポーティで、セクシー。だから、彼女の体現する色気には、濃厚かつ清新という、複合的な魅力がある。トリプルアクセルというジャンプにさまざまな表現の可能性が広がっていることを、その姿に教えられる。
 それぞれの選手が望むだけ長く、その人の選手生活が続けばいいな、そのための環境が整うといいなと常々思っていて。だって、みんなそれだけフィギュアスケートを愛して、続けてきたのだろうと思うから。ビバ! エリザベータ・トゥクタミシェワ。来シーズンの演技もますます楽しみ!

 紀平梨花。
 身体が固い〜と心配になったけれども、心は固くなくて安心。しなやかに、志が高かった。決意の滑り。
もちろん、無理やりいろいろなものを背負ってしまう必要はないと思う。けれども、今の時点で気づきがいろいろあったことで、ますます大きな可能性を秘めていることを、自分自身で証明したわけだから。自分で考えて出した結論が一番。大丈夫! そんな貴女の一歩で、世界も確かに変わっていっています。
2019-04-13 23:46 この記事だけ表示
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 三浦璃来&市橋翔哉。
 「Cry Me A River」の曲を表現しようという気持ちは伝わってきた。二人の音楽の感じ方をさらに合わせるようにしていくといいのでは?

 小松原美里&ティム・コレト。
 リズムダンスの曲より、今日の音楽の方が合っているように感じた(リズムダンスでは、女性の衣装も配色が少々気になった)。今日は、演技の冒頭からひきこまれるものがあり、優美さも感じられた。

 ガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン。
 演技が大きい! 自分の前を吹き抜けていく一陣の風――目には見えないはずの――を見るような陶然。

 マッテオ・リッツォ。
 クイーンの楽曲のメドレーと、心を一体化させていこうという演技。私にとっても心に響くところの多いクイーンの曲を分かち合えるのがうれしい。「Don’t Stop Me Now」でのステップでは魂が炸裂!

 田中刑事。曲はロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」
 ダイナミックでほれぼれする大きなジャンプ!
 どんどんのってきて、――彼の身体が、ウィリアム・テルがきりりと絞る弓のように見えた。そこから放たれた矢はビューンと飛んでいって、観る者の心に突き刺さるのだった。
 ――そして私は、彼が滑りながら感じているのであろう風を、我が身にも確かに感じた…!

 宇野昌磨。曲はベートーヴェンの「月光」。
 世界をあまねく煌々と照らす月の光に、敢然と己が身をさらけ出して立つ人がいた――。
 …周りを思いやる、本当に優しい人だな…と、でも、その優しさがときに彼自身を苦しめることはないのかな…と、観ていてちょっとつらかったから、昨夜は書けなくて…。
 今宵の闘う宇野昌磨、私はとても好きです。

 ヴィンセント・ジョウ。
 軽々すぎて、4回転ルッツが4回転に見えない〜。あれだけ跳べるのはすごい。

 ネイサン・チェン。
 こちらも、観ていて楽しかった!
 …私自身、つい最近まで、誰かが訳してまで自分の文章を読みたいと思うようなことになるとは思ってもみなかったから、まあ、出会いが遅くなってもしかたない――日本語は、話し、読み書きする人が世界でも少ない言語だから。でも、そんな出会いがあちこちで起きてきたことで、私自身、「自分にとって母国語とは」というテーマに行き着くことができたので。
 私が、誰かの心に届くようなことを書けているのだとすれば、それは、私が評論家という形で携わっている、日本舞台芸術界がすばらしいところだからだと思います。
 アメリカ文化でいうと、個人的には最近、アーサー・ミラーの戯曲に感銘を受けることが多いです――アメリカという国から、世界的な普遍性を提示した知性であると、改めて感じます。
 貴方が多くの人々に支えられてきたように、後に続く人々を支えていってあげて!
2019-04-12 23:19 この記事だけ表示
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 ガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン。
 ツイズルの際の動きのシンクロ率がすごい。そしてパパダキスが実にセクシー。タンゴにのって、愛を求めるひりひりとした激しい想いがかきたてられるような、情熱的なダンス。――男性が女性を遣う、文楽のようにも見えた。

 エリザベータ・トゥクタミシェワ。
 よけいな力みが抜けていて、トリプルアクセルも自然で軽やかな美しさ。
 …自分をあざ笑っていたかに見えた“運命”を乗り越えて、自らの手で新たな運命をつかみ取った、強い女性がそこにいた。あざ笑っていたものに、にこやかに微笑み返す、彼女のその表情は実に妖艶だった…!
 フィギュアスケートによって、大人の女性の美の可能性もどんどん拓かれていってほしいと私は思います。世界選手権、貴女がいなくてさみしかった。紀平梨花との美のトリプルアクセル合戦が、今後も楽しみ!

 ガブリエル・デールマン。前半は颯爽とした強さがあったのだけれども。

 マライア・ベル。
 互いに認め合った上で競い合い、高め合っていく、スポーツの闘いっていいなと感じた。相手を負かして倒す虚しい戦いとの、それが大きな違い。今日の演技、芯があってとてもよかった!

 紀平梨花。
 今日の演技は美美美美美!!!
 一つ大人になった貴女なら、これから新たな物語を切り拓いていける。一歩一歩、一緒に進んでいきましょう。

 ブレイディ・テネル。
 これまでだと、「強い!」というのがまず前面に来ている感じがあったのだけれども、今日の彼女の演技からは、しなやかな糸を何本も束ねて丹念に編み上げていったような、繊細さによって培われた強さを感じた。まだ行ける!

 田中刑事。
 自信みなぎる男はかくも美しい!
 もっともっと内なる美を開花させて、世界を大いに翻弄しちゃって!!!

 マッテオ・リッツォ。
 美しい自然、晴れ渡る青空――街の裏通り、影差す石畳の道。笑いの陰にある涙。決して明るいだけではない、イタリア人の心。その陰影の美しさ。

 ネイサン・チェン。
 今日は楽しかった! そして、彼の演技で初めて泣いたかも。
 平和じゃなければ、オリンピックだって無事開催されないわけだし、47年生きてきて、世界はこれでも少しずつましな方向に進んでいっていると思う――思いたい。これからも、自分も精いっぱい頑張る。そして、若い世代にはもっともっといい方向へと進めていって欲しい。期待しているから!
2019-04-11 23:11 この記事だけ表示
 …男子フリースケーティングの羽生結弦の演技の際の聴覚と視覚の記憶が、またしても、ない。「ロシア杯2018」男子ショートプログラムの「秋によせて」の演技のとき同様、吹っ飛ばされている。辛うじて残っているのは、意識がホワイトアウトしそうになった瞬間の画面の記憶のみ。
 文章も、…本当に自分が書いたものなのかな…と思ったりもする。それだけ、あの文面は、自分の内に在った時間が短かった。演技を観ているとき、心か頭の電光掲示板に浮かんだ文言を、まるで「イタコ」か何かのように自分の外に出していった。「使命創生」のタイトルがぱっと浮かんだ瞬間は、今でもはっきり覚えている。あの文章がこの世に存在するために、私という人間の肉体が必要とされていたような、不思議な気持ち。

 …それで、私は、…羽生結弦があんなにも美しい演技をするのだったら、自分は、もっともっと立派な評論家にならなければならない、美についてさらなる確固たる見解と言葉を持った評論家にならなければならない…と思って、男子フリーの翌日も午後から早速劇場に行き、会見に行き、取材に行き、原稿を書き…と、この二週間、休みもなく少々頑張りすぎて、昨日あたり疲れすぎておかしなことになっていた。人間、つくづく無理はいけません。
 ――蜷川幸雄に対して、思っていた。どうして年齢が父と子ほど違うのだろうと。どうして同じ世代に生まれなかったのだろうと。タイムマシンができたなら、まっさきに行きたいのは1960年代だった。その時代の蜷川幸雄の舞台を観たかった。――そして今、羽生結弦に対して、思っている。どうして年齢が母と子ほど違うのだろうと。どうして同じ世代に生まれなかったのだろうと。昨年の12月7日、彼が誕生日を迎えて24歳になって、思ったのは、…あ、これでやっと、倍以上の年齢じゃなくなった…ということだった。これから先は、私の年齢を彼の年齢で割っても、その数はただ1へと近づいていくだけ。
 否。「どうして」は、いい。Why? はいい――要らない。今生、そのように出逢った。その運命のもと、出逢った相手と進んでゆくだけ。その道の続く限り。

 たとえどんなに仕事が忙しかろうが、その合間には、桜の花見もしなくてはいけない。花は、桜は、待ってくれない。人間の気持ちや都合など、おかまいなしに咲いてしまう。
 私の花見は、基本的には一人で、桜の咲いているところをどんどん歩いていくスタイルである。そうして、そのとき浮かんだ想い――美しいものに向き合ったときの想い――を心にためておく。次に見られるのは一年先だから、できるだけいっぱいためておかなくては。
 今年の桜は、何だかとても幸せな桜だった。日本の春の、今だけのその美しさを愛でに、世界中、遠くからやって来た人の姿も多く見た――分かち合う幸せも知った。蒼空の下、桜吹雪に吹かれながら、満開の桜を見上げると、――私が心から愛する多くの人々の笑顔が、花の向こうに、きらきら光って揺れていた。多くの人々の心と共に在る美。それが私の今年の桜なのだった。

 「春よ、来い」にのって舞うエキシビション。
 ――美の彼岸に在る湖で、白鳥が舞う姿を観るとしたら、こんな気持ちになるのかもしれない――。

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 ↑最近着ているカーディガン。
2019-04-08 23:59 この記事だけ表示
 …このところめちゃめちゃ忙しくて、3月24日深夜地上波放映分だけですが、やっとゆっくり落ち着いて観られました。

 宇野昌磨。
 …じわーっと涙を浮かべて観ていた。
 確固たる芯が一本通っていて、でも、芯の周りはふわっとしていた印象だったのが、ここへ来て、その芯がどんどん太くなっていっているのを感じる。
 宇野昌磨がいたから、私は、多くの仲間と共に歩んでいく道を選べたのだと思う。出逢ってくれて本当にありがとう。

 紀平梨花。
 16歳にして、独自の世界観の作り方を確立していっている。
 …彼女なら、日本の女子選手とトリプルアクセルの因縁を変えてゆけるかもしれない…と思った。

 ネイサン・チェン。
 …男子フリーの翌朝、それはすさまじい怒りで目覚めた!
 どうして、自分の才能を使って、社会を、世界をよりよくしていこうという発想にならないの?
 美を多少は意識した分、エキシビションの演技はフリーよりは全然よかった。世界と、自分の中の美を信じるところからまずはスタート。
2019-04-08 23:58 この記事だけ表示