今宵から第二部! 18時からのNHKBSプレミアムでの放送を、久しぶりに実家でゆっくりご飯を食べながら見よう…と思いきや。阿部サダヲ演じる“まーちゃん”こと主人公田畑政治のキャラが超ハイテンション過ぎて強烈過ぎて、そんな主人公を得た宮藤官九郎の脚本のスピードがさらに加速していて、途中から口あんぐり。そして、あまりの情報量に、20時からの総合チャンネル見返しました…。
 何なのこの人〜〜〜!
 「口から先に生まれてきた」を絵に描いたような…。五りん(神木隆之介)の語りや孝蔵(森山未來)の噺さえ追っつかない。人が話しているそばからひたすらつっこみまくる。嘉納治五郎先生(役所広司)には、「彼は口が“いだてん”だね」と評されていましたが。こんな強烈な人、実人生でもあまり会ったことがなく…。
 第一部の残りのお話。パリ・オリンピックの予選会。後輩たちを励ましながら一緒に走っていたら、一位でゴールしてしまった金栗四三(中村勘九郎)。結果、三度目となるパリ・オリンピックにも出場することに。
 関東大震災後の日本橋。焼け野原になった街、でも、日本橋のたもとの赤レンガの「大栄ビル」(設計:辰野金吾)は残っている。そんな中を、田畑政治は朝日新聞社の面接へ。新聞社名物の伝書鳩が羽ばたく中、廊下を進む。入社試験でしゃべりまくるまーちゃん。「違う! そう!」と、まずは間髪入れずとりあえず否定してからすぐさま肯定する芸風? の人。入社後は、政治部なのに、運動部の記事の書き方を批判。陸上ばっかり持ち上げやがって!
 パリ・オリンピック報告会。またもや意識を失い、途中棄権した金栗四三。四三を面と向かって批判、体協の陸上贔屓に業を煮やした末、まーちゃんは体協からの水連の独立を宣言! 初対面の嘉納治五郎先生に背負い投げされても、そのときは一瞬ビビるけれども、あとあと「箔がついた」と豪語する始末。
 当時の日本は温水プールがないから、水泳は夏しか練習できない。それ以外の季節は、東京帝国大学工学部でマージャンに馳せ参じる水連の人々。しかし。彼らは見つけてしまう。床の下に、船舶実験用の水槽があるのを――関東大震災後の帝大は、工学部教授にして営繕課長の内田祥三が安田講堂はじめ今も残る多くの建物を設計してキャンパスを復旧させたのですが、そんなキャンパス内に、こんな秘密基地みたいな空間があったとは。
 日本橋のバー「ローズ」のママ・マリー(薬師丸ひろ子)に手相を見られ、「30で死ぬと出ています」と告げられて、「あと2年しかないじゃんねー」と悲観するまーちゃん。おかげで、日日新聞の記者が書き残していった新元号、忘れちゃった! あれ、何だったっけ? このくだり、志ん生(ビートたけし)の語りとまーちゃんの悩みっぷりがマッチして大爆笑! でも、おかげで新元号、「光文」と誤報せずに済んでよかった! それにしても。「普通選挙法」のスクープにも改元のスクープにも関係せず、水泳界の発展に駆けずり回っているけれども、…あの、仕事の方は?
 工学部地下にめでたく温水プール完成! 次のアムステルダム・オリンピックには水泳部のみんなを連れていっちゃる! …だが、またもや体協にはお金がない。「金がなくてやっとられん!」と治五郎先生。もう、オリンピックに参加するの、やめちゃう? そこに、まーちゃんが大金6万円を持ってくる。高橋是清(萩原健一)に直談判して、国から特別予算、ぶんどってきちゃった♡、と。スケール、デカ。口八丁手八丁、生来せわしない上に短き? 余命を生き急ぐ男、田畑政治のこれからに注目! …あ、まーちゃんが訪れた高橋是清邸は、東京小金井の「江戸東京たてもの園」(あひる大好きスポット!)に復元されていますぞ〜。
2019-06-30 23:02 この記事だけ表示
 第一部ラストの回『種まく人』! 第二部が始まる前に何とか“いだてん”して追いついた〜。
 ――大変なのは、関東大震災の後だった。焼け野原となった東京の街。必死に生きる人々。
 …思う。天災も、戦争も、人の生活を変えてしまう。天災は、人の力でなくすことはできない。防ぎようを何とか考えるしかない。けれども、戦争は、人の力で防ぎ得る。
 嘉納治五郎先生(役所広司)は建設中の神宮競技場を避難所として提供。そして依然行方不明のシマちゃん(杉咲花)を四三(中村勘九郎)は探していた。家族、さすがに心配しているか…と思い、熊本に帰郷する四三。オリンピック周期と同じ、四年ぶりに。そんな四三を義母幾江(大竹しのぶ)が一喝!
「なーし帰ってきた!」
 妻スヤ(綾瀬はるか)が出産のときには帰って来なかったのに。東京が一番大変なときに帰ってくる男は、熊本が大変な時にはきっと熊本を捨てる意気地なしたい!
仲裁を促され、何となく大声で叫んでみる兄実次(中村獅童)。
「逆らわずして勝つ!」
 何も考えんととりあえず口から出たその言葉に、悟る四三。「そもそも人間は無力たい」そうと決まったら、早速東京へ! そういうときの決断はさすが“いだてん”。幾江は言う。“いだてん”とはそもそも、人々のために走って食い物を集めて走った神様ばい。そして東京に大量の援助物資を送る幾江。豪気。その物資を背負って東京の街を走るいだてん金栗四三。
 寄席はいつから開くのか…と孝蔵が思いきや、もう焼け跡でやっていた。…東日本大震災のときも、舞台をやるべきかやらざるべきか、議論になりましたが。まだ余震が多発していて、正直、日常生活にまだまだ不安があった時分、日本橋三越の三越劇場に若尾文子主演の舞台を観に行った。さすがにちらほら空席がある。しかし。いざ開演となったとき、「前の方の空いている席、きっと来られない人の分だよね〜」とばかりに、後ろからうわあーっと押し寄せる人々。ほとんどが高齢の方。少しでも前で若尾文子を観たい! そのパワーに圧倒されて、思った。どんな状況でも、舞台を観たい人はいる…と。「復興節」を早速作ってみんなで歌っていたのだって、そんな心の表れのような。ちなみに、日本橋三越はその少し前に耐震工事をしていたため、東日本大震災のときも、舞台のセットから花瓶一つ落ちなかったそうな。
 清さん(峯田和伸)小梅(橋本愛)夫婦のいる神宮のバラックで噺をする孝蔵。夜ともなれば、そこら中からすすり泣きが聞こえる。昼は気が張っているけれども、夜ともなれば、つらくて、涙してしまう…。笑っても泣いてもいいじゃねえかっていう落語をやってほしいと、孝蔵に語る清さん。
 大震災から一カ月。治五郎先生は、こんなときだからこそ! と、四三発案の復興運動会をみんなに提案する。スポーツマンは、スポーツによる復興を! やってきたその日。楽しく盛り上がる人々。――その姿に、思う。英語の”play”とは実に幅広く用いられる言葉である。遊びも”play”。 楽器の演奏も”play”。スポーツだって、”play tennis”とか”play basketball”と言う。“上演する”、“演じる”、そして“芝居”そのものも”play”。生きていく中で、人が集まり、楽しみや喜び、悲しみを分かち合うことの大切さ。そんな場の大切さ。
 フィギュアスケート、そして、『いだてん』について書くようになって、気づいた。みんな、よく観てるんだな…と。もちろん私は舞台評論家である。多くの人に少しでも多くの舞台を観てほしいと強く願っている。しかし、劇場だとなかなかすぐには足を運べない事情があることもわかる。公演中の舞台人が、同時期に公演している他の舞台を観に行くのは日程的に難しかったり、とか。でも、テレビで放映されているものなら、録画して、自分の好きな時間に観ることができる。…ああ、この人も羽生結弦選手、観てるんだな…とか、…この人は『いだてん』を毎週楽しみにしているんだな…とか、接点がますます増えて、多くの舞台人とさらに心のやりとりがしやすくなったな…と感じる今日この頃。
 そんな場としての、『いだてん』。マラソンなら、ここで折り返し地点。第二部も盛り上がって応援だ〜!
2019-06-30 19:50 この記事だけ表示
 ちなみに6月は舞台を23本観劇。『いだてん』でもときどき印象的に登場する富士山。「六月大歌舞伎」(歌舞伎座)夜の部『三谷かぶき 月光露針路日本』のラストを飾る富士山もまた美しかったのでした。
 さて、金栗四三(中村勘九郎)の免職撤回を求め、教室に立てこもった竹早女子たち。そんな彼女たちに四三は呼びかける。「腹ば減っとらんかね」。一同、ズコ。出てきたら豚鍋でもバナナでも大福でも好きなものを食わせてやる。乙女の空腹に訴えようという戦法である。しかし、足袋職人黒坂辛作の妻ちょう(佐藤真弓)は、四三先生に辞められたら困る〜と、食料と武器? をこっそり差し入れ。四三の計画、失敗。そして、シマちゃん先生(杉咲花)が女の身体はヤワじゃない! と発言したことから、村田富江(黒島結菜)とその父(板尾創路)が四三の免職撤回をかけて100メートル競走で戦うことに。負ける父。「もう一回やらせろ〜」。…大人げないなあ。結局6本走って全部娘の勝ち!
 嘉納治五郎先生(役所広司)は神宮競技場の計画を着々と進め、若き日の志ん生=孝蔵(森山未來)は人生で初めて夜逃げ。…初めてということは、二度目もあるのだろうか? そんな折。
 大正12年(1923年)9月1日。
 その日、四三は治五郎先生とシマちゃん先生と三人で神宮競技場を見に行くことにしていた。しかし、四三はシマちゃん先生に伝え忘れており、シマちゃん先生は浅草オペラ『お蝶夫人』を観るため、正午に浅草十二階で教え子と待ち合わせ。四三と治五郎先生は神宮へ。東京にオリンピックを招致し、愛する柔道を世界中に広めるためには150歳まで生きないと追いつかない! そのころには地球と火星とで交信できているかもしれないから、火星人にも柔道を叩きこまないといけない! と、神宮の空を見上げ、おーいおーいと叫んで火星との交信を試みる治五郎先生。…いや、スケールの大きな人はときに不思議ちゃんでもあり。
 そして、11時58分。――関東大震災。
 …揺れる浅草十二階の模型。
 東京中の酒を飲まないと! 酒屋に駆けつけ酒をあおる孝蔵。いや、酒飲みは発想が違う。酒飲みすぎて自分がふらふらしてるんだか、地面が揺れてるんだからわからねえや! …この人もまた、スケール大の不思議ちゃんなり。そして、東京の被害を語り出す。
 訛りゆえ、日本人であることを自警団に疑われる四三を救ったのは富江の父だった。四三は浅草の空を見上げる。…十二階が、八階のところで折れている。
 ――シマちゃん先生。
 探しに来たシマちゃんの夫増野(柄本佑)は泣く。今朝、初めて文句を言ってしまった。ご飯が固いと文句を言ってしまった。あんなこと、言わなければよかった…と。
 酒を飲むことをたしなめる妻おりん(夏帆)に向かい、「こんなときだから飲む」と言う孝蔵。酒飲みってホントこういうこと言いますよね…。亡くなった伯父も、アル中だった時分、飲酒について意見したら言ってました。「飲まなきゃやってられないときもある」と。
 震災噺の高座の後で、被災したおばあちゃんの写真を取り出す五りん(神木隆之介)。そこに写っているのは、シマちゃん。ということは、五りんは、シマちゃんの孫。
 私は、母方の祖母、愛子さんから関東大震災の話を聞いたことがある。大正6年(1917年)生まれの愛子さんは、銀行の支店長だった父に連れられ横浜、下関と日本中を転々としていたけれども、その時分は地元関西に落ち着いていた。9月1日は小学校の二学期の始業式だった。お昼時、学校で起きたことをお母さんに話していた。そしたら、揺れた。まさか、東京でそんな大きな地震が起きているとは思わなかった…と。
地震の話は笑いに持って行けない…とぼやく志ん生(ビートたけし)の嘆きはそのまま、作者の思いでもあろう。
 『いだてん紀行』でもやっていましたが、昨年、浅草の工事現場から十二階の遺構が出てきて、「赤レンガ、持ってっていいって〜」とツイッターで拡散されていて。忙しいのもあったし、何となく、積極的に駆けつける気が起きなかったんですよね…。この回を観て、自分の中で腑に落ちた。
2019-06-30 19:44 この記事だけ表示
 原稿19本、やっと終わった〜。ということで、時を巻き戻しまして。
 6月上旬、『ブラスト!:ザ・ミュージック・オブ・ディズニー』の公演プログラムの取材のため、山形県南陽市の赤湯温泉に赴いたあひる。…山形と仙台、近いよね…ということで、これまで行ったことのなかった仙台まで足を延ばしてきました。フィギュアスケートのオリンピックモニュメントと、今年の三月に亡くなった建築家の伯父(母の兄)が建築事務所のスタッフとして関わった東北大学附属図書館、そして、まだ見たことのない仙台の近代建築を見たいなと思い。…途中で、思った。『ファンタジー・オン・アイス』が仙台に行く週にあひるは神戸、神戸に行く週にあひるは仙台。まあ、週を入れ替えたところで観られないのですが、それはさておき。
 山形から仙台までは高速バスで一時間ほど。車中ではっと気づいた。『いだてん』を観ていて、…あ、この場面を書いているとき、平昌オリンピックの羽生結弦選手のことが作者の念頭にあったんだろうな…と感じることが、何回か。思えば、そこには、宮城県出身の宮藤官九郎が、宮城県出身の羽生結弦、同郷人に寄せる思いもあったんだな…と。
 一夜を過ごして翌日、早速、オリンピックモニュメントのある地下鉄東西線国際センター駅へ。ちなみに、出張先で充電できなくなったあひるの携帯ですが、国際センター駅で取り出してオリンピックモニュメントの写真を一枚撮った瞬間、ご臨終。そこから、日本のフィギュアスケート発祥の地「五色沼」まで、数分の道のりを歩いて行った。その名称に引っかかりを覚えながら。
 五色沼は、青葉城の堀の一部である。小さな池である。こちらにもフィギュアスケートにちなんだモニュメントがあり、そして、写真の添えられた説明版がある。大正13年(1924年)、五人並んで互いに手を組んで滑る、学生服姿の旧制第二高等学校の生徒たち――。
「…おじいちゃん!?」
 その写真を見た瞬間、はっとした。
 あひるの母方の祖父は明治43年(1910年)生まれ、会津若松出身で足袋屋の次男。飛び級して、仙台の二高、そして東京帝国大学に進んだ。その祖父が、下駄に刃をつけてスケートをしていた…という話を、子供のころ、スケートをするたびに母から聞かされた。私は、それは会津若松での出来事だと思っていた。でも。二高に進んでからは、仙台で、五色沼で、スケートをしていたかもしれない。その可能性に、仙台の地に足を運んで初めて気づいたのである。だいたい。福島県に縁のある人間にとって、「五色沼」といえば、裏磐梯にある美しい小湖沼群の地名としてなじみがある――だからこそ、国際センター駅から数分、私は引っかかりを覚えながら歩いていたのである。
 …しばし、その場で呆然としていた。
 そして、五色沼から徒歩数分のところに、東北大学附属図書館があるのだった――国際センター駅から歩いても徒歩数分である。私はそこで、伯父がその建物の建設に確かに関わった証拠を探した――書架の間を歩きながら、図書館と、人間の脳とのアナロジーについて考えていた――誰かがアクセスすることで初めて何かしらの意味をもつ、そんな情報のつまった小宇宙。伯父は、東京大学建築学科を卒業して鬼頭梓建築設計事務所に入所、そして、鬼頭梓設計の東北大学附属図書館が建設される際、東北大学の建築学科で一つ空いていた助手のポストに採用され、そこから施設部に出向するという形で、現地常駐スタッフとして関わっていたことがわかった――そうして建てられた図書館で、私はそんな情報にアクセスしていた。だいたいが、図書館の建物を見た瞬間、私は苦笑の内に大ウケしていたのだった――コンクリート打ち放しだ! と。伯父が自分の設計で東京・中野に建てた自邸もそうだったから。その手法ゆえに、湿気と雨漏りに大いに悩まされたあの白い四角い家――「コンクリート打ち放しだったよ」と報告したら、母も弟も苦笑していたくらい。内側もよく似ていた。上がったり下がったりする階段によって、幾層もの階層が構成される内部空間。
 ということで。その前日まで何の思いもなかった、仙台の国際センター駅の近くに、私にとって非常に感慨深いトライアングルが一気に形成されたというわけです。人生の不思議。
 それから、祖父が通った二高の跡地(東北大学旧雨宮キャンパス)や、東北大学片平キャンパスの近代建築群も見学。東北大学史料館に行った際には、偶然にもいきなり「ニールス・ボーア博士が…」なる映像が流れてびっくり。ニールス・ボーアといえば、20世紀を代表する理論物理学者の一人で、あひるが大好きな戯曲『コペンハーゲン』の登場人物。その彼が、戦前東北大学を訪れていたとは! さまざまな偶然の重なりに、ほとんど、…ああ、私はこの地に呼ばれたんだな…と思い。
 翌日は山形に戻り、「自転車節」では追っつかないようなスピードで観光レンタサイクルを飛ばして近代建築めぐり。いや、二年前に赤湯に出張した際も山形に足を延ばして見ましたが、いい近代建築は何回見てもいいのです。廃墟となっている「山形師範学校音楽練習室」の、人間の造形物と自然とが織り成す偶然の風化の美しさ。三島通庸が設計にも口を出したという「旧済生館病院本館(山形市郷土館)」には、彼の息子である三島弥彦の評伝本も置かれていました。
 …え? 『いだてん』と関係ない話が長い? いや、何がどこでどう関係しているかわからない、その不思議を語るのがこの作品の醍醐味の一つでは? 祖父の青春時代と『いだてん』の時代は重なっているわけだし。
 ということで、二十二回目『ヴィーナスの誕生』〜。
 若き日の志ん生=孝蔵(森山未來)は真打ちになるも相も変わらずの無頼ぶり。見かねた小梅(橋本愛)&清さん(峯田和伸)夫婦に世話され、おりん(夏帆)と結婚することに。一方、金栗四三(中村勘九郎)の思いが通じ、スポーツに熱中する「竹早」(東京府立第二高等女学校)の女生徒たち。憧れのフランスのテニス選手、スザンヌ・ランランばりのかわいいユニフォームを、ハリマヤの黒坂辛作(三宅弘城)のミシンを借りて製作〜。話題となったユニフォームは、シマちゃん先生(杉咲花)の夫増野(柄本佑)の勤務先である日本橋の百貨店のウィンドウも飾ることに。陸上選手の美しい脚に憧れ、走り始めた竹早女子。しかし、岡山でのテニス大会で、人見絹枝(菅原小春)と戦い、惨敗。絹枝を陸上競技にスカウトするシマちゃん先生。でも、女子として背が高いことがコンプレックスの絹枝は首を縦に振らない。――大正11年(1922年)、初めての女子の陸上大会。村田富江(黒島結菜)は足と靴をフィットさせるため、靴下を脱いでしまう。女生徒の素足に、光るカメラのフラッシュ。――それが、問題に。エロに紛れて浅草で売られる富江の素足写真――売っていたのは、怪しげな露天商となった美川(勝地涼)だった。おいおい(笑)。富江の父(板尾創路)は大憤慨、「男が目隠ししたらいい」と言い返した四三にさらに憤慨し、四三の免職の署名運動を。それに抗議し、教室に立てこもる竹早女子たちの叫び。
「女らしさって何ですか!」
 ――そういや、それから百年ほど経った今も、とある国の大統領が、自分のところで働く女性たちに対して「女らしい服装をしろ」と言ったとか言わないとか。それはさておき。さあ、四三先生、どうする?
 『いだてん紀行』で、二階堂トクヨ創設の日本女子体育大学に伝わる「トクヨのダンス」が実際に見られてよかった。ちょっとシュールに見えるあのダンス、実際にあるものだったんですね。いつか生で観てみたい。
2019-06-30 01:18 この記事だけ表示
 今月末までには何とかする所存〜。
2019-06-23 23:18 この記事だけ表示
 『いだてん』、まだ先週分も観られておらず(涙)。書いても書いても原稿終わりませぬ〜〜〜。
2019-06-16 23:35 この記事だけ表示
 仕事のため後日ゆっくり観て更新します。本日は昼に新国立劇場オペラ『カルメン』を観劇、ダッシュで移動して『ピピン』のゲネプロを観てきました。そのレポートは速攻でSPICEに掲載される予定です。そして明日も取材!
2019-06-09 23:52 この記事だけ表示
 なってみて初めてわかったことがある。評論家とは、何も必ずしも人に必要とされる職業では決してない。クリエイターであれ、出演者であれ、観客であれ、舞台評論家を必要としない人は大勢いる。他者の意見は必要ない。己を恃みに創る。演じる。観る。
 それでいいと思う――本当にそう思っている。けれども。それでは私、藤本真由という人間の、舞台評論家の、存在意義がなくなってしまうではないですか。だから、ときに必要とされに行くわけである。評論家、いらんかえ〜――厭らしくない、いい感じの居方を常に模索しながら。親切の押し売り、お節介になってもいけない。いい感じにスタンバイしていて、いざというときぱっと出て行く。そこはもう、出番の合図を待つ演者のようなものというか。

 本日、宝塚歌劇団を去る美弥るりかは、長らく評論家を必要としない男役であった。9年間星組で育ち、その後7年間を月組で過ごした。小柄で華奢である。ルックス的にも、娘役の方が…? と思いきや、かつて星組時代に女役を演じたとき、やはり男役の方がしっくり来るのだなと納得したことがある。
 そして彼女は、そんな自身の身体性を最大限活かした男役像を創り上げることに成功した。今、宝塚の舞台に立つその姿を観ると、美弥るりかという男役が見事なまでに完成形に達していることに、深く感じ入らずにはいられない――その人物が自身の男役としての完成形に達したかどうかは、トップスター、二番手といった肩書に必ずしも関係するものではない。指先等の細かなしぐさの一つ一つに至るまで、男役美弥るりかとして完成されきっている。
 前回大劇場公演『エリザベート』では、美弥はフランツ・ヨーゼフに扮した。――フランツ・ヨーゼフ! 写真も多く残る、実在のオーストリア皇帝。美弥は、顔から零れ落ちそうな大きな瞳が印象的な顔に、フランツ・ヨーゼフの壮年時代のトレードマークであるヒゲも見事に似合わせて、男役の力業でこの役を演じきった。銀橋に立つその姿を観ていて、――彼女の上空に、皇帝その人の姿がふっと浮かんでいるのが見えて、慄きが走った。それは、エリザベートやフランツ・ヨーゼフにまつわるさまざまな書物をこれまで読んできて、私自身の中に蓄積された彼についての数多のイメージの結集体であったのかもしれない。あるいは――いずれにしても、その人物としての演技が、人間としての実像に迫ったときにしか浮かばないものであることは確かである。
 宝塚生活最後の『夢現無双』で演じたのは、主人公宮本武蔵(珠城りょう)の終生のライバルである佐々木小次郎。武蔵の父と戦ってこれを倒した――という前段があり、そこから、父を超えたいという武蔵の思いは、小次郎を超えたいという思いとも自然重なっていく。自らの名を騙る不届き者を軽くいなす様、美剣士ぶりを誉めそやされても飄々とした様、美弥小次郎のその姿は、なるほど、泥臭い生き方を見せる今作の武蔵(左に右に、とにかく走る姿が印象的である)と好対照を成す。元気で威勢が大変よろしい月組の娘役陣と並んだとき、少々かかあ天下風に見えたりするのが月組男役のまたいいところだったりもするのだけれども、美弥の男役像はいい意味でナルシスティックで――『クルンテープ 天使の都』で珠城と二人踊る蓮の場面は、そんな美弥の持ち味がよく生かされた場面であった――、相手とする娘役がどのような風情であったとしても、動じず自分を押し通すところが魅力である。――そして、何とはなしに、かつての雪組の男役の香りを感じるときがある。私が感じているのは、もしかしたら、彼女が星組にいた時代、トップスターを務めていた、雪組育ちの安蘭けいの男役像に通じる香りなのかもしれない。
 ――すなわち。私は、長らく評論家を必要としなかった男役美弥るりかと、その宝塚生活の最後の方で出逢ったと思ったけれども、それは、思いもかけないような再会でもあるのだった。とてもうれしい。
 さて。男役美弥るりかの宝塚生活は本日で終わりである。――でも。舞台人としては? ――どんな道を目指すのか、私は今のところ知らないけれども――。でも。己を恃みに自身の男役を完成形にまで至らしめた彼女だから、また、評論家を必要としない日々が続くのかもしれない。でも。
「評論家、いらんかえ〜」となる日が、いつか来るとも限らないじゃないですか。また、思いもかけないような再会があるのかもしれない。神のみぞ知る。

 今回がトップ娘役お披露目となった美園さくらの、芝居、ショー共、惚れ惚れとするような一途な突っ走りぶりを観ていて、――前トップ娘役愛希れいか、前々トップ娘役蒼乃夕妃の前には、トップ娘役ではなかったけれども実質“三番手”だった城咲あいがいたことを思い出した。トップスター瀬奈じゅん、二番手霧矢大夢と共に銀橋でポーズを決めたとき、それは颯爽としてかっこよかった城咲の姿がまざまざと甦って、月組娘役の系譜の伝承を幸せに思った――。
 『クルンテープ 天使の都』でも、金の冠のよく似合うこと! 宝塚の名曲『セ・マニフィーク』の斬新アレンジに乗って、男役陣を引き連れ、タイのアイドル風に歌い踊るシーンは、魅力満開、破壊力満点である。王子と王女に扮しての新トップコンビのデュエットダンスでは、珠城を迎える姿に大らかな包容力さえ感じさせた。ちょっと異次元の娘役である。どこに走って行くのか、今のところ皆目見当つかない。それがうれしい。トップスターとして円熟期に入った珠城りょうが新境地を拓いてゆく上で、よきパートナーとなることは間違いない。
 作・演出の藤井大介が、大好きだというタイをモチーフに大暴れした感のある『クルンテープ 天使の涙』。男役輝月ゆうまは、宝塚の舞台においてそもそも女性から男性へと越境しているところでさらに女性(美!)へと越境し、そして男性へと越境し返し、その越境の自由闊達さがタイおなじみのニューハーフ文化の奥深さを思い起こさせる。ムエタイの場面では、それは強そうな夏月都と白雪さち花が出てきたので、てっきり二人が戦うのかと思いきや、セコンドであった(笑)。シャム(タイ)が舞台の『王様と私』の有名曲『シャル・ウィ・ダンス?』はそれは景気よく銀橋において歌い継がれ、黒燕尾服姿でターバンをまいた男役陣が全員大階段に座る姿には、「大階段に黒燕尾服で座るのがかっこいい? なら、みんなで座っちゃえYO!」という、作者のそれは景気のよい心の叫びを感じる。そして実際、かっこいい。珠城を筆頭に、美弥、月城かなと、暁千星、皆がそれぞれ個性を発揮して、そして揃っていて◎。

 宝塚歌劇団90周年の年に入団した二人が退団する。
 男役響れおなの名前を聞くだに、私の中では即座に“クーポー”と思い起こされる。『THE SCARLET PIMPERNEL』の敵役ショーヴランのズッコケ部下コンビの片割れ。それほど、響クーポーのとぼけた演技は強い印象を残している。『夢現無双』では、宮本武蔵を導く剣の達人・柳生石舟斎宗厳を演じて、人としての大きさ、存在感を見せた。
 月組娘役陣の中で、私は、ダンサー玲実くれあのことを、心の中でひそかに“侯爵夫人”と呼んでいた――高貴が似合うその美貌ゆえに。だから、格の高い役を演じていると、内心狂喜乱舞。クール・ビューティである。世事になど動じないように見える。その実、心に熱いものが燃えている。レヴュー『カルーセル輪舞曲』の中詰のサンバの場面、踊り子の扮装をした彼女は、クールな面持ちで、身体を激しく揺らしていた――その姿に、私がブラジルのサンバ・カーニバルに対して抱くイメージすべてが凝縮されていた。――一瞬の至福。『クルンテープ 天使の都』でも、エキゾティックな黒塗りがよく似合い、ひときわ輝くオーラで魅せる名ダンサーぶりに、目が釘付けに。90周年、100周年、――そして宝塚は続く。
2019-06-09 02:55 この記事だけ表示
 早いもので、今日は亡き父の七回忌でした。一緒に『いだてん』観ていたら、どんな感想が聞けたのかな…。ちなみに、母は毎週「元気出る〜!」と言っています。
 アントワープ・オリンピック16位で傷心の金栗四三(中村勘九郎)はベルリンをさまよっていた。そこで出会ったドイツのおなごたちは元気だった。戦争に負けても、夫を戦地で亡くしても、「くそったれ〜!!!」と叫んで槍投げ。つおい。四三さん、女子たちに紅一点ならぬ黒一点で妙に馴染んでいるのは、その人間的魅力ゆえか。
 東京の学校で、女子体育に取り組む。一度決意したら絶対ぶれない四三さん。…この人、また熊本に帰らないの〜?! 妻のスヤさん(綾瀬はるか)、オリンピックと同じ周期で四年に一度の大爆発タイム。そんなスヤさんを四三さん、後ろからハグして、…一緒にいてほしい…と。志ん生(ビートたけし)にも突っ込まれていたけど、今週の『いだてん』、何だかラヴラヴムード満開〜。
 アントワープ・オリンピックでの敗戦は、日本水泳界にも衝撃を与えていた。日本泳法、遅いじゃん!!! …昔見た模範演技を思い出す。優雅というか、遅いですよね…。水泳を止められている田畑政治(原勇弥)もショックで浜名湖にダイブ! その財布を失敬して、若き日の志ん生=孝蔵(森山未來)は東京に帰り着く。と、車屋の清さん(峯田和伸)と小梅(橋本愛)がちゃっかり所帯を持っていた。つきまとい続ける美川(勝地涼)に啖呵をきる小梅。はたして美川くんの反撃はあるのか?!
 東京府立第二高等女學校、通称「竹早」に勤務することになった四三。…実は。あひるは十日ほど前、十八回目の項でふれた『セーラー服と女学生』(内田静枝編著)の続編ともいうべき『ニッポン制服百年史』(森伸之監修 内田静枝編著)を読んでいた――正確には、両著とも、東京・弥生美術館の展覧会を機に発行された本である。私は小学校から高校まで、途中カナダに行っていて日本にいなかった三年間以外は同じ成蹊のセーラー服をずっと着て過ごしたのだけれども、二冊の本を読んで知ったのは、学校によってスカーフの結び方がいろいろと異なるということ。例えば、映画『セーラー服と機関銃』でヒロイン薬師丸ひろ子が着ていたセーラー服は当時彼女が通っていた都立八潮高校のものがベースなのだけれども、ここには「八潮巻き」という独特の結び方があるそうな。そして、竹早高校には「竹の子結び」というこれまた独特の結び方があると知り、いったいどんな結び方だろう…と検索していたら<「いだてん」金栗四三先生と竹早高校>というページにぶちあたって、おお、またもや偶然が〜とびっくりしていたのでした。大正中期、先行きを危ぶんだ足袋屋が学生服製造に乗り出していたことも、『ニッポン制服百年史』を読んで知り。
 さて。女子の園に赴いた四三先生、髪も伸ばし、女子体育に心たぎらせる熱血キャラに。…四三というより、修造? フィギュアスケートでも氷を溶かしかねない中継ぶり、画面の向こうからあひる家のお茶の間に直接話しかけてくるかのような熱い熱い男、あのナイスガイ松岡修造キャスターを思わせる四三のキャラ変なり。しかし。袴姿の女学生たち、四三先生に、冷たい。女子が体育なんてやって、お嫁に行けなくなったらどうしましょう! …「体育」を「勉強」に変えたバージョン、昔、よく聞いたような。でも、半世紀近く生きてきて、今思うことは。男子も女子も、体育でも勉強でも何でも、自分が好きでやりたいと思ったことを一生懸命やるのが一番! 
 テニスネットをひらりと超えて登場の永井道明先生(杉本哲太)に、香水をつけるようアドバイスされた四三。いつの間につけたテクニックなのか、女学生たちの心をくすぐり、槍を投げさせることに成功! そして、ドイツでも日本でも、おなごたちの叫びは同じだった。「くそったれ〜!!!」…思いを込めれば、飛距離も伸びる(笑)。そして、四三に影響されてか熱血キャラになったシマちゃん先生(杉咲花)には、自分と結婚しても仕事を続けてオリンピックにも出ればいいと言ってくれる増野(柄本佑)が。いい人と出会えてよかった! …でも。増野さん、もともとは今回登場せずの二階堂トクヨ先生(寺島しのぶ)のお見合い相手だったわけで。トクヨ先生の幸せを考えると、複雑。そして次回もおなごパワーが炸裂しそうな予感〜!
2019-06-02 23:59 この記事だけ表示
 昨日より公開の映画『氷上の王、ジョン・カリー』観て来ました。フィギュアスケート好き、必見。芸術家とお金、メンタルの問題、そして内なる“悪魔”との闘い(どうも少し破滅的なところのある人物だったようである)。フィギュアスケートの歴史、流れをさらにつかんだところで、放映済分&これから放映分の『ファンタジー・オン・アイス』を観るのが楽しみ(先日録画した幕張公演をチラ見したところ、エフゲニー・プルシェンコが何だか凄そうなり)。
 その足でKバレエカンパニー『シンデレラ』へ(13時半の部、オーチャードホール)。ハッピーエンドだけれども、甘ったるくない。終幕など、なぜか若干ビターでせつなくすらあり、そこが、セルゲイ・プロコフィエフのあのどこか”doomed”な音楽にマッチして。『ロミオとジュリエット』といい、熊川哲也芸術監督はプロコフィエフと相性良し。――難しいことを考えています。だから最近あまりKバレエについて書けていません。すべては、今年、新たな境地に至ろうとしている芸術監督と歩みを合わさんがためなり。
 次週も出張、その後は怒涛の入稿と、6月のあひるは大変忙しいので、取り急ぎ。
2019-06-01 23:59 この記事だけ表示