「高円寺阿波おどり」のお囃子が聞こえてくる中、18時からのNHKBSプレミアムの放映を視聴、そして「阿波おどり」へ。20時、今年の「阿波おどり」終了の瞬間――最高に盛り上がる瞬間――を踊り手、観客で分かち合ってから、50メートルくらい家まで“いだてん”ダッシュして再び視聴〜。思った。阿波おどりも、オリンピックと同じようなお祭りである! というわけで今宵は、街にいまだ阿波おどりの熱気残る高円寺よりお届けしております。阿波おどり、惜しくも見逃しちゃった方は、歌舞伎座で27日まで上演中の『八月納涼歌舞伎』第二部「東海道中膝栗毛」へどうぞ。松本幸四郎と市川猿之助が演じる名コンビ“弥次さん喜多さん”が、とろろまみれになりながら、阿波おどり、踊っちゃってます(なぜ、とろろかは、観てのお楽しみ!)。金栗四三(中村勘九郎)ならぬ女アスリート「金栗お三四」(おみよ、演じるは弟・中村七之助!)も登場、『いだてん』オープニングテーマに乗って花道を走り抜けちゃいますぞ〜。
 第三十二回『独裁者』。
 ロサンゼルス・オリンピックで大活躍した日本の水泳チーム。しかし、永田秀次郎東京市長(イッセー尾形)は、銀メダルを獲得した前畑秀子(上白石萌歌)に、「なぜ金メダルを取って来なかったんだね」と声をかけるのだった。「だったらあんたが泳いでみればいい!」とまーちゃん(阿部サダヲ)。…あひるもホントそう思う。そして、「これは選手を讃える会じゃないのか」と、岸清一(岩松了)も食ってかかる。国を背負って闘っている者は、選手も、我々役員も命がけなんだよ! いつになく熱い岸会長。永田市長のことを、延びたうどんみたいな顔だの、それじゃうどんに失礼だ、さっさと引退して縁側で俳句を詠めだの、言いたい放題。珍しく、まーちゃんの方が止める展開に。「申し訳なかった」と永田市長。期待していたのは自分だけじゃなく、全国民だ、と。悪気はないんだよな…。その言葉通り、秀子さんのもとには日本中から、四年後の捲土重来を期す手紙が寄せられ。「わからへん」と秀子さん。四年後には自分は22歳、そんな歳まで泳いでいる女なんていない、それじゃあ河童の秀ちゃんだ、と。そんな秀子を案じ、夢枕に、死んでしまった父と母が立つのだった――このあたりのシュールともいえる展開が、ツボ。「うち、悔しいん?」「そんなに金メダルが欲しいん?」と両親に尋ねる秀子さん。やり始めたことを途中でやめたらあかん、とお母さん。銀メダルって途中? 途中よ。プールサイドに立つ秀子さんを、まーちゃんが叱咤激励し、秀子さんは浴衣を脱いで水着姿になって泳ぎ始める。――夢。がばと起きた秀子さんは、夢の中同様、浴衣を脱いで水着姿になり、「悔しい! 悔しい! 悔しい! 勝つんだ! 勝つんだ! 勝つんだ! 金メダル!!!」と泳ぎ始める。こうして、四年後に向けた秀子さんの闘い、早速スタート。…いや、「前畑ガンバレ」に至るまでに、こんな物語があったなんて。事実の断片として知っている歴史、その流れを知ることができる楽しさ。これぞ、歴史を扱う大河ドラマの醍醐味じゃんね!
 ロサンゼルス・オリンピックの余韻にいまだ浸るまーちゃんは、体協理事のポストになおも消極的。ロスに行けなかった野口源三郎(永山絢斗)はそんなまーちゃんに不満をぶつける。ピンポンボールとセリフを同時にラリーする二人。「お留守番ピック」ってまーちゃん、貴方は口から生まれてきたようなお方。日本人がスポーツに関心をもち、熱狂してくれるのはいいことだ、しかし、と、何だか違和感を覚えているまーちゃん。そこへ、岸会長。ロサンゼルス・オリンピックの報告と、東京への招致について、天皇陛下に御進講してきたのだった。天皇陛下に会えた喜びを語る岸さん。
 しかし。ドイツの首相になったヒトラーは、ゲッベルスの助言を受け、1936年にベルリンでオリンピックを開催することに。1936年の開催地がローマに行って、1940年は東京に来る…との当ては外れた。しかも、招致推進派の永田市長は、部下の汚職の責任をとって辞職。「いいオリンピックにしてください」との言葉をまーちゃんに残して。そんなまーちゃんの前に、「Stupid kappa」なんて英語でしゃべるキザな男、現る。「表へ出ろ!」と言うも背負い投げを食らうまーちゃん。キザ男の正体は。元国際連盟事務次長で、日本の国際連盟脱退により失職した杉村陽太郎(加藤雅也)。柔道六段で、嘉納治五郎先生(役所広司)の弟子。そして流れで招致委員にされるまーちゃん。すっかり治五郎先生にかわいがられてます。
 新聞社でもオリンピックの思い出話ばかりのまーちゃんに、上司の緒方竹虎(リリー・フランキー)は、回顧録を書け、ただしそれは夜、昼は仕事しろ、と。まーちゃん、上司の言うこと半分くらいしか聞いてない(笑)。「また行きたいなー」と回顧録を執筆するまーちゃんに、菊枝さん(麻生久美子)、毎夜おいしい夜食を差し入れ。さすがに菊枝さんが気になってきたまーちゃん、バーのママ、マリーに打ち明け話。俺は、水泳に夢中になったように、あの女に夢中になれるのか。「酒井菊枝、地味な女」の発語が実にリズミカルで聞いていて心地よい、菊枝さんには大変失礼な言葉なれど。マリーの占いは、お見合い相手とその人、どちらとも結ばれないわ。しかし、ママの占いはいつも逆に的中、ということは、どちらとも結ばれる!? 「気になっている人がいますので」と、露骨に菊枝さんを見ながら竹虎さんからの見合い話を断るまーちゃん。残念だけど…と、菊枝さんにお断りの話をする竹虎さん。あれ? と、やっとちゃんと見合い写真を見るまーちゃん。菊枝さんこそ竹虎さん紹介の見合い相手でした!  って、おいおい(笑)。「結婚しよう!」とまーちゃん、即座にプロポーズ。菊枝さん、うれしそう。ということで、めでたく二人は結婚〜。レースのあしらわれたブラウス、そしてウェディングドレスにヘッドドレス、菊枝さんのレトロな装いがシックで素敵! そして、「口が悪いということは、心は口ほど悪くないということですから」と、日ごろ無口なれどぼそっと口にする言葉が、深い。新聞社での結婚式の余興には、「古今亭志ん馬」と名乗る若き日の志ん生こと孝蔵(森山未來)も登場、まーちゃんと悪口の応酬〜。孝蔵役の森山未來、顔にますます凄みが出てきた。ラジオ出演などで何とか食いつないでいる孝蔵、その噺を、金栗四三のいる熊本の池部家でもラジオで聞いており。そこには、四三の著書『ランニング』を読んで感銘を受け、九州一周マラソンをしようと、小松勝(仲野太賀)なる青年の姿が。彼の両脚をいきなりしげしげと検分、運動足袋をプレゼントする四三さん。二人して「ヒャー」と水浴びし、42歳の四三さんも共に九州一周へ。…そして、熱を出して高座を休んでいた五りんも、「死んだ親父の言いつけなんで」と水浴び。…ということは?
 新市長牛塚虎太郎(きたろう)のもと、東京は「悲願」としてオリンピック招致を目指すことに。しかし、岸さんは入院。そして、東京への招致を夢見つつ、「きれいな花だ」の一言を遺し、急逝。死去の報せを帰国の船上で知った治五郎先生は、涙も出ない、男泣きは君の専売特許だったもんね、と。その遺影に、まーちゃんも、体協理事となり、オリンピック招致に尽力することを誓う。シニカルに見えて、実は感激屋、熱い篤い男だった岸清一会長――演じる岩松了の新たな魅力を知ることのできた役柄でした。ちなみに、岩松了作・演出の最新作『二度目の夏』は今週、名古屋と神奈川にて公演。ラスト十分くらいでのあっ! と驚く展開、お見逃しなく。ご本人も、犬好きの近所の電気屋役でいい味出してます。
 さて。アテネでのIOC総会から帰国した治五郎先生は、いつになく悲観的だった。このままじゃローマには勝てん。「独裁者がいると仕事が早いね」と、牛塚市長。君も自分の意見を言え! と言われ、まーちゃんは弁舌を奮う。掲げたテーゼ。
…誰のための、何のための、オリンピックか。
ただのお祭りですよ。走って泳いで、それでおしまい。オリンピックに何を期待してるの?
 簡単に考えましょうよ。このままではローマに勝てない。逆らわずして勝つの嘉納さん、どうする? と聞かれ、治五郎先生、一言。
「譲ってもらうのはどうだろう」
 …誰に? 何を?
 ムッソリーニに、オリンピックを。直接会って譲ってくださいって頼んだら、案外譲ってくれるかも。
 …仰天。意表を突かれた。そして爆笑!!!
“お得意の開き直り発言”と、作中描写されていましたが。譲ってくださいって! そういうもんなの、開催地って?
「よし、譲ってもらおう!」
 こうと決めたら治五郎先生、早い。日本の魅力を伝える資料を作れ、写真集がいいと、まーちゃんに命じ。いや、もう、演じる役所広司がフルスロットルで加速して、オリンピックに取り憑かれた男のある種の狂気を体現。そんな役所広司が、愛おしい。譲ってもらおうって…。譲ってもらおうって…。今も、思い出し笑いが止まらない。
 見事、治五郎先生も絶賛の写真集『日本』を作成したまーちゃん――阿部サダヲの目にも、次第に、オリンピックに取り憑かれた男のある種の狂気がきらめくのを感じた今回。しかし。写真集を手に、海外を説得しに回ろうと立ち上がった治五郎先生の身に、異変が――?
 『いだてん紀行』。出ましたね、ジャパン・オリンピック・スポーツ・スクエアの岸清一の銅像。子孫の方も、銅像の姿に似ていたのでした。
2019-08-25 23:29 この記事だけ表示
 ――不死鳥。いくたびも、いくたびも、甦り、立ち上がり、舞い、跳ぶ。それは、人の心にも似て。肉体は滅びるとも、魂は死なず。
 松任谷由実は、昨年末の「紅白歌合戦」の歌唱より断然心がこもっていた。私は、ユーミンの歌と共に、少女から大人になった世代です。

注)パフォーマンス時のナレーションは受信の大いなる妨げなり!
2019-08-24 22:39 この記事だけ表示
 人間が自分の心に嘘偽りなく生きていくこと、その困難と尊さが描かれた作品ゆえ、出演者には嘘偽りのない演技が求められる。永作博美、山崎一、那須凜、梅沢昌代。四人のキャストそれぞれが、ノラ、トルヴァル、エミー、アンネ・マリーとして、舞台上に真心をもって生きた。その様を、一瞬たりとも見逃したくなかった。瞬きする暇すら惜しい105分。栗山民也の演出は終始、緊迫感を損なうことがない。
 人はそれぞれ異なる環境に生まれ、異なる価値観や考え方を持って生きている。分かり合えた、と思っていた相手とさえ、実はズレがあったということも往々にしてあり得る。それでいい。この世には、一人として同じ人間はいないのだから。ただ、共に生きて行こうとする上で、ときに、そのズレを互いに認識し、分かり合おうとする営為は当然必要となってくる。何となく、相手も当然わかっているだろう的な、なあなあな態度では済まされないときがあるのである――対話が、必要な時。
 四人は語る。語り合う。ぶつかり合って、傷つくことを恐れない。
 作者――アメリカ人劇作家ルーカス・ナス――が、心から血反吐を吐くように紡ぎ出した言葉だから、その言葉を真価そのまま客席に伝えようとする上では、役者自身、心から血反吐を吐くようにセリフを言わざるを得ない。四人のその闘いを、食い入るように凝視していた。心の血反吐に洗われた魂が新たな輝きを得ていく様を観ていた――その行為は当然、観る者にとっても、心から血反吐を吐くことを要求するものなのであるが。
 凝視のあまり、泣くまいとしていた。瞳の表面張力に遂に限界が来たのは、経過時間90分前後あたりであろうか、かつて妻ノラに出て行かれた夫トルヴァルが、「人といること」について「そんなに難しくなくちゃいけないのかな?」と吐露するくだり。その後の、ノラの告白。――闘う。闘う。ノラは闘う。そんなにしてまで闘わなくたっていいではないかと言う人もいるかもしれない。そういう人の方が多いのかもしれない。でも、どうしても闘ってしまう人、闘わざるを得ないと思ってしまう人が、いつでも、どこかにいて、そうやって闘ってきた人たちがため、世界は少しずつ、変わっていっている。
 …ありがとう…と、ルーカス・ナスと、日本初演チームに首を垂れたい。
 まだ、頭がぐるぐるしている。そのぐるぐるの渦の上に、…蜷川幸雄が演出した、清水邦夫の『雨の夏、三十人のジュリエットが帰ってきた』(2009)のラストで、「うたえ! 自分の歌をうたえ!」と絶叫する、夏子役の故中川安奈――栗山民也夫人――の姿がなぜか、見えている。

(8月20日19時、紀伊國屋サザンシアター)

<関連執筆記事>

*永作博美さんインタビュー
https://spice.eplus.jp/articles/233625

*コラム「すべてを捨てて出て行った女が、15年ぶりに語る衝撃の告白!〜『人形の家 Part2』の楽しみ方、教えます」
https://spice.eplus.jp/articles/243488

*栗山民也さんインタビュー
https://spice.eplus.jp/articles/249138
2019-08-20 23:59 この記事だけ表示
 ええ回やった…(笑)。タイトルバックまでに泣いちゃったじゃんね〜、二回観て二回とも。
 久々登場の金栗四三(中村勘九郎)。養子に入った池部の家で仕事に励み、じゃなかった、押し花に興じ。あひるの記憶が確かならば、押し花しているときの四三さんは、あかん。そんな四三さん、ロサンゼルス・オリンピック、女子200メートル平泳ぎ決勝、前畑秀子の実感放送が始まると聞き、大急ぎでラジオの前に。
 レース前、相変わらずまーちゃん(阿部サダヲ)のテンション、高っ。そして、秀子さん(上白石萌歌)も落ち着かない。そんな彼女を、チームメートは励まして言う。緊張したら、まーちゃんの顔を見て、きゅうりを食べているところを想像してみて、と。というわけで秀子さん、タバコをくわえるまーちゃんを、きゅうりをかじるまーちゃんに、幻視。神様に祈る。どうか、2着、3着に入りますように――。
 泳ぐ姿が、気持ちよさそうだな…と思った。
 ここでタイトルバック!
 第三十一回『トップ・オブ・ザ・ワールド』。
 レース中、またもや係員に、プールサイドに近づきすぎないよう止められるまーちゃん←おなじみの光景(笑)。日本食レストランで、日本人が西洋人に勝てるわけがないとまーちゃんに言った日系人のウェイトレス、ナオミ(織田梨沙)も、まーちゃんにもらったチケットで前畑の泳ぎを観にやってくる。白熱したレースに、次第に声援を送り始めるナオミ。ゴールの瞬間−−無音ですべてが展開して、前畑秀子が耳に入った水を抜いた瞬間、うわあっと歓声が聞こえる演出がいい。僅差で、2位! これが日本女子初の水泳種目でのメダル。「よく頑張ったぞ、前畑くん」と、まーちゃんも素直にねぎらう。「神様が助けてくださったのです」と、実感放送で秀子さん。闘争心がなさそうなのに、あっけらかんと実力を発揮してしまう感じが、いいなと。うれしそうにラジオを聞き、ラジオをなでて秀子さんをねぎらう四三さん。
 死角と思われていた男子100メートル背泳ぎで、日本は金銀銅を独占! 泣いてすがってしまい、嘉納治五郎先生(役所広司)に「しっかりしろ」と言われる岸清一(岩松了)。客席の日系人の間から、自然流れ出す「君が代」の合唱。日本人選手の活躍に、IOCのラトゥール会長もびっくり。そんな彼に、治五郎先生は言う。日本は急に強くなったのではない。日本には400年の伝統をもつ古式泳法がある、これは人と競うためにではなく、水と一体となるためにあるものであると。観てみたいというラトゥールに、お見せしましょうと治五郎先生。そういうわけで、エキシビション、決定〜。「駅舎美人?」とまーちゃん。…カタカナに弱いタイプ? 鶴さん(皆川猿時)以下、水泳チームが乗り気な中、いまいちやる気のないまーちゃんに、「泳げんのとちゃいます?」と、”河童と呼ばれている割にまーちゃん泳げないかもしれない疑惑”をぶつけるノンプレイングキャプテン高石勝男(斎藤工)。
 続く男子1500メートル自由形でも日本は金銀メダルを獲得。そして、200メートル平泳ぎ決勝前夜。寝られず、鶴田義行(大東駿介)にしりとりしようと持ちかける小池礼三(前田旺志郎)。「寝ろ」と言われ、「ロサンゼルス」と、先輩の語尾に勝手にしりとり。そんなこんなで決勝〜。鶴田は高石に言っていた。今回は来るんじゃなかったと。小池の練習台として来たけれども、ついて行けず、かえって気を遣わせていると。けれども、彼は決意する。やるか、老体にムチ打って、と。
−−抜かれなかった。抜かせなかった。小池に。鶴田1着。アムステルダム・オリンピックに続き、二大会連続金メダル! …自分の役目は小池くんに一位を取らせることだったけれども、実は、一日一本だけ勝つ気で本気で泳いでいた。でも、いつも勝てなかった。今日は、彼は年寄りに気を遣ってくれたのだと思う−−と鶴田先輩。そう語るときの、大東の表情がとてもいい。人との勝負ではなく、己との闘いに勝った人間の清々しさ。そして、レースの描写、泳ぎの描写が、とても美しかった。スポーツに躍動する人間の心身、その美しさをしみじみと感じた――。
 お待ちかね、エキシビション〜。まーちゃんもふんどし姿で参加! 手と足を後ろで縛ってそのまま泳ぐ「手足からみ」に始まり、「いな飛び」、「大抜手」「一重伸し」等々、…懐かしい。小中学生のとき、学校でのデモンストレーションで見たあれあれ〜。同じ学校出身で、やはり日本泳法になじみのある母は、テレビの画面を見ながら昔覚えた型を実演しており。そしてまーちゃん、泳げたよ。河童の如くスイスイと日本泳法を。最後はみんなで、立ち泳ぎしながら文字を書く「水書」を披露〜。痛快痛快! これぞ、理想的なエキシビション。勝者が、その競技について、己の信じるところ、思うところを表明する場としての。その表明によって、その表明が与える感銘によって、その競技はますます発展していく。エキサイトした海外選手も次々とプールに飛び込み、花火も上がり、これぞ平和の祭典なり!
「オリンピック最高!」「帰りたくねえなあ」と、まーちゃん。そんな彼に、選手村の黒人守衛デイブは聞く。ここに貼ってある「一種目モ失フナ」って、どういう意味? 「所詮戯言さ」とまーちゃん。目標を剥がした下にあったのは。「オリンピックで大切なのは、勝つことではなく参加することである」との、有名なクーベルタンの言葉――。
 ロサンゼルスを旅立つ水泳チームのバスを、日系人もアメリカ人も、日の丸を振って讃える。そして、バスを止めた日系人のおじいちゃん曰く。自分は今日初めて、白人から話しかけられた。日本の水泳選手はすばらしいと。−−日系人はそれほどまでに、白人社会に受け入れられていなかった。ナオミも、「ミスター・カッパ」とまーちゃんに呼びかける。日本人と言うだけで、どんなに肩身の狭い思いをしてきたことか。でも、祖国を見直したと。己のルーツに誇りを持てた人々は、往来で叫び出す。「俺は日本人だ!」「I am Japanese American!」と。その声に、周りの人々も、誇りをこめて、「I am Irish American!」等々、己のルーツを叫び出す――観ていて、ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』の、祈りのように美しいナンバー「サムホエア」を思い出した。人種を越えて、人々が分かり合い、共に生きることのできる”どこか”−−。「俺も日本人だ!」と叫び、帽子を飛ばすまーちゃん。「私も日本人だ!」と、そこに現れた治五郎先生も。まーちゃんより高い場所に昇って、東京にオリンピックを呼べたら、皆さんを招待します! と宣言。出た! 治五郎先生の大きく出たなシリーズ! 「知らないぞ〜」と岸清一の見せる何とも微妙な表情が好き。それにしても治五郎先生、いつもいいところで登場していいところを持っていくな(笑)。
 前畑秀子さんの活躍に刺激を受け、奇声を上げての四三さんの冷水浴、ひさびさ復活〜。再び走り始めて。
 新聞社に戻って来たまーちゃん。誰もいない職場で、お土産の板チョコをそれは無造作に配る姿を、一人、菊枝嬢(麻生久美子)は見ていた。その前で、大横田勉(林遣都)に金メダルを取らせられなかったことを悔やみ、床に手をついて涙ぐむまーちゃん。俺が牛鍋を食べさせていなかったら…。一生悔やむのだろうな。田畑のバカヤロメ。…メダルの鬼が、人間に戻った瞬間。それを見ていた菊枝嬢は言う。「全部取らなくてよかったと思います、私は」←これが、『いだてん』での菊枝嬢の第一声! これからの目標がなくなってしまうし、一つ残したのは、田畑さんの品格かと。って、いいこと言ってくれてるのに、「変な声」ってまーちゃん、そりゃないぜ。早速、「品格です」と他の人に菊枝嬢の言葉を引用するまーちゃん調子のいいお方。そして、事件が。東京市長永田秀次郎(イッセー尾形)が、「なぜ金メダルを取って来なかったんだね」と前畑秀子に。はたしてまーちゃん、どう出る? …というところで次回のお楽しみ〜。来週の土日は「高円寺阿波おどり」だよ!
2019-08-18 23:59 この記事だけ表示
 クーラーによる冷えに大苦戦しておりますが、多少の夏バテは『いだてん』で吹っ飛ばすぞ〜。
 1932年、ロサンゼルス・オリンピック開幕! 参加国は37か国…に、思う。オリンピックはまだまだ、一部の余裕のある国々にとっての祭典でしかなかったのだと。「始まったら終わる」「ずっといたいよ」と、選手村にてオリンピック堪能中のまーちゃん(阿部サダヲ)。…気の短い人間ってこういう考え方しますよね。あひるも、「コップに水がまだ半分残っている」ではなく、「コップに水がもう半分しかない」と思うタイプ。と、そこに響き渡る音。なんと、嘉納治五郎先生(役所広司)が柔道のパフォーマンス中〜。“ファン・ミーティング”と称し、希望者をバッタバッタと背負い投げ。そんな治五郎先生にまーちゃんは尋ねる。なぜオリンピックで柔道をやらないの? と。まだ機は熟していない、と治五郎先生。普及活動を行ない、満を持して正式種目にする、そのころ自分は100歳だ! そんな治五郎先生に、「150まで生きるぞ」とつぶやくまーちゃん。役所広司が心から楽しんでこの役を演じているのが伝わってきて、いいじゃんね〜。
 そこへ現れたNHKの河西アナ(トータス松本)&松内アナ(ノゾエ征爾)。実況放送を禁じられた二人に、まーちゃんは、臨場感を伴う再現放送を提案。名づけて、実感放送〜。アナウンサーが競技を観戦し、夜、スタジオにて、選手を招き、実感をこめて伝える。松内アナ役のノゾエ征爾、飄々といい味出してます。昨年は三島由紀夫の『命売ります』脚本・演出を担当、今年はジャン・コクトーの『恐るべき子供たち』の脚色を手がけ、肩の力の抜けたユーモアセンスで文学作品と客席とを軽やかにつなぐ手腕を発揮しています。松内アナ、実感こめすぎるあまり、10秒くらいの競技を1分かけてしゃべっちゃった(笑)。そして、8月7日、水泳競技開幕〜。と、ここでタイトルバック! あざやかな入りで痛快、痛快。今宵はどこが変わったかな? とチェックするのが楽しみな、凝りに凝ったタイトルバックですが、手がけるは上田大樹。舞台では、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品でのすばらしい手腕にも毎回唸らされており。
 第三十回『黄金狂時代』。
 水泳最初の種目、100メートル自由形。応援に力が入るあまり、プールサイドに近づきすぎて係に止められていたまーちゃん。実感放送では、臨場感を出すため、バケツに水を入れて持ってきて、手でバチャバチャ、効果音。見事、金銀メダル獲得〜。リトルトーキョーでの祝賀会はまーちゃんのおごりだ! よっ、太っ腹! 牛鍋を豪勢におごるまーちゃん、前言通り、口も出すが金も出す。そこへ、IOC総会に出席してきた治五郎先生&岸清一(岩松了)が。1940年オリンピックには、東京より前にすでに9都市が立候補。なかでも力が入っているのは、独裁者ムッソリーニが招致に熱心なイタリアのローマ。ドイツのヒトラーが政権を取り、かねてからの“オリンピック無用論”通り1936年ベルリン・オリンピックを返上してくれれば、1936年の開催地がローマに回って、1940年に東京に呼べるかも…とのまーちゃんの思惑に、「ユダヤ人を公然と差別する男だぞ!」と激する治五郎先生。「スポーツが政治に屈するようなことはならん!」「平和なのは選手村の内側、だけじゃいかん」と、熱く持論を展開。あひるも熱く支持!
 女子選手の姿、自分には刺激が強すぎる〜、スポーツで発散できないもやもやもあるんです〜と、平泳ぎの小池礼三(前田旺志郎)、青年の主張。落ち着け! と思ったら、同じ種目の先輩鶴田義行(大東駿介)が代わりに「落ち着け」突っ込んでくれました。そして、寝不足でバテ気味の鶴さん(皆川猿時)のもとへ、開会式の入場行進のころから腹痛に苦しんでいた大横田勉(林遣都)が、腹が痛い〜とやって来るのであった。やばい! 俺牛鍋食わせちゃった! とあせるまーちゃん。せっかく鶴さんが食事の管理をしていたのに。…腹が痛い〜と、志ん生(ビートたけし)も。いやいや、それは、「疝気の虫」の稽古。と、ロサンゼルス・オリンピック水泳種目と、落語の噺が絡み合い始め。若き日。質に入った着物が流れないようにと、友人万朝(柄本時生)が自分の代わりに質屋に毎月お金を入れているのを知った孝蔵(森山未來)は、妻おりん(夏帆)と万朝の「疝気の虫」を聞きに行く。楽しげに聞いている妻に、孝蔵、何か言いたげ。大横田の腹痛は何とか治ったが、今度は前畑秀子(上白石萌歌)が腹痛…って、願掛けでおみくじを飲んだから。これもあんた? と鶴さんに疑われるまーちゃん(笑)。万朝の見事な「疝気の虫」に、自身を情けなく思い、「弟子にしてくれ!」と頭を下げる孝蔵。「高座下りたら人間のクズなんです!」と、おりんも。…いや、俺は二つ目であんたは真打ちじゃん、そうだったわ、とのとぼけたやりとりが絶妙なり。ということで、お金を貸してもらって着物を質から出し、万ちゃんのとりなしで師匠にも詫びを入れ、孝蔵、噺家として再スタート〜。着物を羽織る孝蔵、その照れくさそうな表情に、噺にしか生きられない、落語が好きなくせに素直に好きとは言えない、そんな不器用な人間の色気が見えて。
 大横田は胃腸カタルだった。800メートルリレー、どうする。休ませる鶴さん、温情あるな…と思っていたら、ノンプレイングキャプテン高石勝男(斎藤工)を推す鶴田やまーちゃんに、勝っちゃんでは勝てん、横山で行く、タイムがすべてです、とシビアな面も見せて。「全種目制覇して、日本を明るくするんでしょ」「奇跡なんてそんな眠たいことを総監督が言ってどうする」と厳しい鶴さんに、いつになく素直に謝るまーちゃん。鶴さんの英断が功を奏し、大差&世界新記録で金メダル〜!
 翌日、400メートル自由形。大横田は序盤ふるわず。横山じゃなくて勝っちゃんをリレーに出して、400メートルに横山を出せばよかった…と今さら悩む鶴さんをなだめるまーちゃん。追い上げる大横田。しかし。オリンピック・レコードは出したものの、勝てず。それでも銅メダル、見事なものなのですが。実感放送の場、コメントを求められ、自分は期待に応えられなかった…と謝りながら次第に泣き崩れそうになる大横田を、もうしゃべるな! と抱きしめる勝っちゃん。漢(と書いて「おとこ」と読む)。
 まーちゃんの予定稿の「金」に、「同」を書き加えて「銅」にする朝日新聞速記係の酒井菊枝(麻生久美子)。ここまで一言も発していない彼女の第一声が楽しみなり。
 女子200メートル平泳ぎ。葉巻みたいにきゅうりをくわえるまーちゃんが見守る中、いよいよ前畑秀子、登場! というところでの五りん(神木隆之介)の「今日はここまで」に、寄席の客も、テレビの前のあひるも、ガクッ。早く来週になあれ〜!
2019-08-12 00:46 この記事だけ表示
 …観終わって、しみじみ来て、涙してしまった…。18時からの回と20時からの回の二回とも…って、毎週泣いてるじゃんね〜。と、本編に入る前に、先週の続き。
 前回ふれましたが、7月30日、日本青年館ホールにて、専科の轟悠主演の宝塚月組公演『チェ・ゲバラ』、始まりました。あひるはその初日を観劇〜。舞台は中南米、ということで、チェ・ゲバラのみならず、あちらこちらでヒゲ祭り。濃い。しかも。チェ・ゲバラは、若いころはヒゲが生えていなかった。もみあげは立派なれど。その後、口ヒゲの段階を経て、万人知るところのあの容貌になっていた。ヒゲに歴史あり。それにしても、轟悠は、ヒゲも、そして若い役も、いつまでも似合いますな。
 世界をよき場所にしようと理想に燃えた熱い人々のドラマを堪能し、日本青年館を出て千駄ヶ谷駅方面に歩き出せば。隣に、「ジャパン・スポーツ・オリンピック・スクエア」のビルが建っており、その真ん前に、岸清一の像が! …似てる。『いだてん』の、岩松了に。続いてクーベルタン男爵の像も発見。…え、これは、『いだてん』のクーベルタン男爵(ニコル・ルンブレラス)をそのまま像にしましたよね? と思うくらい、酷似。嘉納治五郎先生の像もありました〜。そして、全員、ヒゲ。思いもかけず、神宮ヒゲ祭り。以上、あひるの『いだてん』ヒゲ紀行でした〜。
 第二十九回『夢のカリフォルニア』。
 五りん(神木隆之介)は二つ目に昇進〜。そんな彼をじとーっと見ている二つ目居残りの兄弟子今松(荒川良々)の心境や如何。
 1932年、オリンピックが開催されるアメリカ・ロサンゼルスに旅立った日本水泳チーム。カリフォルニアの明るい日差し。世界各国から選手村に集まった人々。「これ、理想郷じゃんね!」と喜ぶまーちゃん(阿部サダヲ)、選手団を率いて華麗にダンシング! おお、ミュージカル仕立て。まーちゃんセンターの決めポーズも決まった! 先週の5・15事件のようなシリアスな芝居から、今回のようなミュージカル風まで、毎週まるで違う作品を観ているみたいで、幅の広さが、いい! 「オリンピック最高〜!」と、普段からテンションが高いまーちゃん、さらにハイテンション。「誰か止めて〜」と、鶴さん(皆川猿時)。
 しかし。当時のアメリカでは日系人排斥の動きが高まっており、プールに入れば、日本人と一緒の水に入りたくないとアメリカ選手が引き上げる始末。「貸し切りだ!」と、あくまで前向きなまーちゃん。日本語でケンカを売りに行ったり、得意の肯定⇔否定コロコロも「違う! ノー! イエス!」と日本語とブロークンな英語が混ざったり。そんなまーちゃん率いる日本水泳陣を、昨年の日米対抗戦の雪辱を期すアメリカチームのキッパス以下は分析、研究していたのだった。
 アントワープのときは日本泳法でバカにされたのに、研究されるまでになるとはすごいじゃないか! と、日本の嘉納治五郎先生(役所広司)も大得意。1940年オリンピック開催地として立候補するために、ロサンゼルスに渡ることに。ここで、あひるの疑問が解ける瞬間が。あんなにオリンピックに行きたがっていた可児さんこと可児徳(古舘寛治)は、はたして一回くらいオリンピックに行ったのかどうか。ここで、「一度も行っていない」発言が本人の口から。いや、ずっと気になっていたのでした。
 選手村で、盆踊りめいた踊りを踊ってみせたり、インドの人々とボリウッド風なダンシングを繰り広げたり、まーちゃん、どこに行ってもマイペースで楽しそうなり。しかし、選手起用をめぐって、水泳チーム内ではさざ波が。オリンピック出場経験のあるベテランの高石勝男(斎藤工)と鶴田義行(大東駿介)は、若い選手たちの台頭に心穏やかではない。ノンプレイングキャプテンって何だよ! と荒れる高石。
 「ディスイズ何の天ぷら?」、まーちゃんの珍妙英語、おもしろすぎ。食べてみたらおいしくて、「キューカンバーの天ぷら、アゲイン」。いや、まーちゃんみたいな人は、たとえ言葉ができなくても、どこに行ってもやっていけますな。「やってみないとわからんからおもしろい!」と、日本チームの勝利を高らかに宣言。そんなまーちゃんが貼り出した目標「一種目モ失フナ」の紙をたびたび破り捨てていたのは、…なんと、鶴さんだった。「メダル一枚くらいくれてやったっていいじゃないか!」と、まーちゃんに物申す鶴さん。…いや、あひるも、なんでまーちゃんそんなにメダル至上主義者になっちゃったの〜と憂えていた。鶴さん、代弁ありがとう。
そんな鶴さんに、まーちゃんは本心を明かす。満州事変、5・15事件、今の日本は暗いニュースばかりだ。スポーツでニッポンを明るくしたい、と――。そんなまーちゃんの真摯な想いを、高石も聞いており。
 運命の選手選考会。
 必死に泳ぐ高石を、みんなが口々に応援。最初は日本チームにそっけない態度をとるも、彼の夜の秘密の練習を見逃すまでになった黒人のプールの守衛さんまでもが応援だ〜。高石の力泳に心打たれ、しまいにはまーちゃんまで応援。泣くまいとする涙顔で、「ありがとう、お疲れ」と口にするまーちゃん。これぞ、鬼の目にも涙〜。
 ――選ばれなかった。そして、ノンプレイングキャプテンとしての自分の役割を生き始める高石。…“世代交代”と言葉で言うのは簡単だけれども。選手それぞれに人生があり、積み重ねてきた日々があり…。一人一人に注がれる、優しく温かな眼差し。
 そのころ、治五郎先生は英語でスピーチ、東京は正式にオリンピック開催地に立候補。そして、遂に、ロサンゼルス・オリンピック開幕だ〜!
2019-08-04 23:59 この記事だけ表示