島田高志郎。
 コーチ、ステファン・ランビエールが手がけた振付がとても素敵で、滑りこなす日が楽しみ!

 ロマン・サボシン。
 もっと音楽を感じて滑って!

 アレクセイ・クラスノジョン。
 トリプルアクセル美!
 曲の拍子が途中で変わるところで、滑りにも変化、メリハリが欲しいところ。コリオシークエンスの迫力はすごかった。

 友野一希。
 曲は『ムーラン・ルージュ』。「ロクサーヌ」のタンゴのあたり、ぞくぞくした。
 …泣くもんか! と固く拳を握りしめた、大人の男の強い覚悟にしびれた。友野一希は何だかぐっと大人の男になってきたのだった。爆発力を秘めた好プログラム(振付ミーシャ・ジー)、さらなる進化に期待!

 チャ・ジュナン。
 ジャンプの失敗はあったけれども、ジェニファー・トーマス作曲の楽曲の世界を体現すべく、最後まであきらめず、スケールの大きな演技を披露しようとした姿勢が◎。

 ボーヤン・ジン。
 火花のような気迫を、ダークな衣装がよく引き立てていた。
 とても芯のある、素敵な人なんだな…と改めて思った。新たな魅力を知ることができてうれしい。

 ジェイソン・ブラウン。
 スピード感!!!
 無限の広がりを見せる白い一枚の紙を、鋭い切れ味のハサミでするすると切り開いていく。その切断面が、心に黒々とした一本の線を深く刻みこんでゆくような、そんな演技。すばらしく美しいフィニッシュ。
 芸術家・蜷川幸雄は、その演出舞台によって、新たな日本人像を世界に打ち出していった。それと同時に、今という時代を生きる世界中の人間に普遍的に響くものをも強固に提示していったからこそ、日本語のセリフを解さない観客の心をも大いに魅了するところがあったのだと思います。
 このプログラム、まだまだ行けます! 夢に向かって、共に闘いましょうぞ!

 アレクセイ・ビチェンコ。曲は『パイレーツ・オブ・カリビアン』。
 エキサイティング! まるで、血沸き肉躍る一本の短編映画を観ているようだった。その映画の主人公は、自国においてフィギュアスケートというスポーツ文化を盛り立てるべく、ずっと闘い続けてきた一人の勇ましい男なのだった。私も女海賊となって、一緒に勇ましく闘いたい!

 ミハル・ブレジナ。曲はビートルズ・メドレー。
 …さっと手を差し出されて、観る者の心も瞬時に氷上に誘われ、一緒に激しく踊ってしまうような、そんな楽しいプログラム! それは、彼というスケーターの、観客との距離の取り方が絶妙だからなのだろうと思う――観ている側を非常に尊重して、その人たちのための空間をちゃんと用意してくれる、心の余裕がある感じ。紳士! シャツの柄だけちょっと気になる(もっと貴方の魅力を引き立てる柄があるような)。

 キーガン・メッシング。
 …握り拳でドアをバン! と激しく叩くように、魂の叫びを激しくぶつけてくる人を、涙をこらえるべく唇をぎゅっとかみしめて見守るうち、…キーガン・メッシング主演の「ノーヴェンバー・レイン」(演奏:ガンズ・アンド・ローゼズ)のミュージック・ビデオの登場人物になったような、そんな気がしたロックな4分間。

 ドミトリー・アリエフ。
 曲は「サウンド・オブ・サイレンス」。…自らの内面とどこまでも向き合っていくような演技に、この、あまりに有名な曲のタイトルの意味、歌詞の意味について、改めて思いを馳せずにはいられなかった。その上で、彼自身の“サウンド・オブ・サイレンス”に耳を傾けた――氷上、無音、無言で滑っているその人の。そしてそれはすなわち、私自身の“サウンド・オブ・サイレンス”に耳を傾ける行為でもあるのだった――。
 文学、戯曲、オペラ、絵画等々、ロシアの優れた芸術作品は、日本でもこよなく愛されています。その文脈において、私は貴方の演技に非常に心惹かれます。貴方がフィギュアスケートにおいて美を追求することで、世界はきっと変わります。

 ネイサン・チェン。曲はエルトン・ジョンの「ロケットマン」(衣装の柄は若干謎)。
 美は万人に開かれているものです。昔は、王侯貴族のために絵を描いたり、パトロンのために作曲したりしていた。美は、富や権力によって専有されるものだった。でも、もはやそういう時代じゃない。私は晴れていると、夕日を眺めて、…ああ、今日も綺麗だな…と感じ、日によって異なるその彩りを愛でる。そんな自然の美しさのように、美は世界中の人々によって共有されるものだと思っています。
 ジャンプが美しくなってきたと思う。貴方が楽しんでいたから、観ている方も楽しくて、あっという間だった! (歓声がすごすぎて、最後の方は曲が聞こえなかった。笑)
2019-10-22 17:15 この記事だけ表示
 放映順〜。

 アンナ・シェルバコワ。
 栄養をとってください!

 エリザベータ・トゥクタミシェワ。
 美貌に一段と磨きがかかり。観ていて心が一緒にくるくると舞い上がって行くようなトリプルアクセル!
 妖艶で大人っぽいルックスの人だけれども、次第に、20代前半という年齢ならではのかわいらしさも見えてきて、ますます魅力的。

 樋口新葉。
 髪型(お団子の形)と眉毛、要再考。
 ジャンプを着地した際のポーズがとても綺麗に決まる。エネルギーを観る者にどーんとぶつける演技ができる人だから、彼女のスケートに心惹かれる人が多いのだと思う。特に後半、どんどん曲と一体になっていって、よかった!

 ブレイディ・テネル。
 彼女の動きの特徴をよく活かした選曲。

 坂本花織。
 化粧◎! ますます大人の女性の魅力アップ。
 シェイ=リーン・ボーン振付の、実にいいプログラムである。シーズン通してふくらませていける余地がまだまだある。スピード感と迫力があるのだけれども、ところどころで女らしさが加わると、それがアクセントとして利いて、さらにアピール力が増しそう。ジャンプも含め、スケート全体、観ていてますます気持ちよく。
2019-10-20 13:54 この記事だけ表示
 グランプリシリーズ初戦から見応えあり!

 島田高志郎。
 確かな美しい技術を着実に積み重ねていっている印象の演技で、コーチのステファン・ランビエールの手腕が光る。せっかくの長い腕をときに活かしきれていないような。バサッと上げてしまうのではなく、余韻をただよわせるように動かすと、演技全体にさらにスケール感が増すように思う。

 ミハル・ブレジナ。
 最初のポーズからしてかっこいい! 次第にどんどんノッてきて、粋な男の魅力全開。彼ならではの魅せるスケート。

 友野一希。
 久しぶりに、前へ前へと気持ちが攻めていく演技が観られてうれしい!
 昨シーズンのエキシビションの“ロボット・ダンス”をも思い出すユニークな振付で、音楽とあいまって壮大な世界観が展開される。友野一希の魅力を存分に引き出そうとする、振付のフィリップ・ミルズの意欲がうかがえる。シーズン通しての進化が非常に楽しみな好プログラム。

 アレクセイ・ビチェンコ。
 最初から最後まで身体が実に動いていて、スピード感ある演技。そして、にじみ出る渋さ、セクシーさ。
 コンテンポラリー・ダンスの取材で、テルアビブに単身出張したことがあるのですが、そのとき、地中海の美しさ、食べ物のおいしさ、建物の色の鮮やかさ、イスラエルという国の美しさをいろいろと知ることができて。彼の演技を通してさらに理解を深められるとしたら、こんなにうれしいことはない!

 チャ・ジュナン。赤がアクセントで利いている、すてきな衣装!
 彼の演技は、いい感じの粘りが非常に魅力的。

 ボーヤン・ジン。髪型、かなり改善!
 彼という人間のおおらかさ、心の大きさが、演技全体で表現されるようになってきて、ジャンプ以外の要素でも見応えあり。

 ドミトリー・アリエフ。曲はロック・オペラ『モーツァルト』より。この作品は、11&12月、梅田芸術劇場メインホール&東急シアターオーブにて、宝塚歌劇団星組新トップ・コンビ、礼真琴&舞空瞳によって上演されます!←宣伝。
 4回転ルッツ3回転トゥループのコンビネーション、迫力! 祈りのようなものを感じさせる演技。

 ジェイソン・ブラウン。
 …何だろう、観ていて、心が締めつけられて、すすり泣き。
 引き絞られてピンと張った弓矢のように美しい、足替えキャメル・スピン。
 男性の力強さとしなやかさが共存していて、本当に素敵なスケーターだな…と。何だか壮絶な覚悟を感じさせる演技でした。

 ネイサン・チェン。
 衣装、いい感じ!
 曲はシャルル・アズナブールの『ラ・ボエーム』。何だか非常に難しい三拍子の曲ですが、その曲が演者の身体に真に入った状態で演技されると、観ている方はきっとものすごく心地よく感じられるのだろうと思う。

 キーガン・メッシング。
 ボロ泣き。
 緩急のつけ方がすばらしい。
 思うのです。人は、そのとき自分にできることをその都度精いっぱいやり遂げていくしかない。私に今できることは、安定感ある彼の演技が非常に美しかったと記すこと。そのようにして、自分なりのやり方で、祈りを捧げること。
2019-10-19 23:07 この記事だけ表示
 10月12日の土曜日、朝からずっと、台風が怖くて、何も手につかず、おろおろしていた――買い出しや防災関係のあれこれはすべて夫がしてくれた。こういうとき、本当に役に立たないな、我ながら――。それが。一番暴風雨が激しくなった夜になって、星組についての文章を書き始めたら、驚くほど落ち着いて――。
 紅ゆずる&星組パワー!
 最後に観劇したのは9月の半ば。そのとき、…ああ、愛をもらったな…としみじみ思ったのである。『GOD OF STARS-食聖-』で、“真・料理の聖人コンテスト”のための食材を求めてさすらう主人公ホン(紅ゆずる)は、遭難しかけて、料理下手のアイリーン(綺咲愛里)が焼いた、何が入っているかよくわからない恐ろしいクッキーを食べて、アイリーンの父(天寿光希)と二人、何とか難を乗り越える。すべては黙劇のそのくだり、客席に向かってハートのクッキーを掲げる、紅ゆずるのそのお茶目な姿に。音楽にのって宇宙の果てまで飛んでいくレビュー『Éclair Brillant』のフィナーレ、飾りのない黒燕尾服で一人舞台に立つ、紅ゆずるのその雄姿に。
 こんな立派なトップスターになって卒業していくとは思わなかった!!!
 最後の最後のチャンスでめぐってきた新人公演主演、『THE SCARLET PIMPERNEL』でのシンデレラ・ストーリー。…今でも、あのとき、長い手足をへにゃへにゃ動かして、主人公パーシー・ブレイクニーを熱演していた姿が思い浮かぶ。男役を、いかにも男らしいタイプと、男装の麗人タイプに分けるならば、紅ゆずるは男装の麗人系である。『太陽王〜ル・ロワ・ソレイユ〜』で演じたムッシューは、ソフトで中性的な姿が、少女時代のアイドル、カルチャー・クラブのボーイ・ジョージのように麗しかった――私は子供のころから、性差を超えてかぶいている存在に強く心ひかれてきたようである――。ただ、ストロングなイメージはなかった。それが、あんなにも芯のしっかりとした存在となって、大劇場の舞台に一人立っていて――。
 星組トップスターに就任してから主演した作品も、どれも心に深い印象を残すものばかり。マサラ・ミュージカルあり、ブロードウェイ・ミュージカルあり、“あの世”ミュージカルあり、アニメ化された人形劇の舞台化あり、宝塚の過去の名作の復刻ありと、盛りだくさんに色とりどり。なかでも代表作を挙げれば、“あの世”ミュージカル『ANOTHER WORLD』と、退団作『GOD OF STARS-食聖-』になるだろう。忘れちゃいけない、“紅子さん”もいた。トップスター紅ゆずるを追いかけて、台湾公演にまで行ってしまった劇場案内係(という設定の、紅扮するユニークなキャラクター)。最近は、夢が見られない、壊れるとかいう理由で、男役の“女装”(というか、そもそもの女性としての姿)に対する抵抗心が明らかに昔より高まっていて、日常でもずっと女装して過ごしていたという江戸時代の女方じゃあるまいしと私などは思うのでありますが、トップスターがここまではっきりと女性の姿で出てきて、ネイティブの関西弁で笑いを取って、でも、夢は壊れるどころかますます大きくふくらんでいって…。
 なぜって。私は、宝塚退団後の紅ゆずるが、これまで以上にますますおもろい人生を歩んでいって、「宝塚のトップスターに、こんなにおもろい人がいるんだ…!」という笑撃、衝撃を与えて、「こんなにおもろい人がトップスターを張っていたということは、宝塚って、想像していたよりもっとおもろいところなのかもしれないな…」と、世間の考えを変えていく、そんな明るく楽しくおもろい未来を夢見ているからです。
 宝塚歌劇団は、関西発祥の劇場文化である。だから、おもろいところもいっぱいあってほしい。何も、五組で必ず一人とまでは言わないけれども、定期的に関西出身のトップスターが生まれてほしい。そう願うものだから。
 何だか。思い出しても思い出しても、楽しくおもろかったことばかりが浮かんでくる――つらいときだってあったと思う。でも、貴方は決してあきらめなかった。宝塚への愛を、パワーに、笑いに変えて、絶望の淵から這い上がってきた。そして、深く大きな愛を宝塚の観客に与えるまでになった。そのことが、私は心からうれしい。そんな姿をこれまでずっと観てこられたことがうれしい。
 …舞台と、客席と。舞台人と、評論家と。一緒に頑張ってきた存在だと思うから、…そりゃあ、こうして書いていて、今、私の目には涙が浮かんでいて…。でも、これからも、そのおもろい人生の道行きを見守っていきたい! と思うと、何だか楽しくなってきて。
 在団中に「徹子の部屋」と「ブラタモリ」を制覇した人だから、卒業後の進路についてはまったく心配していません。身体の力が抜けた感じの笑いというところで、シアターコクーン芸術監督に就任した松尾スズキの笑いの世界とも親和性がありそうな。
 おもろい人は、人生、おもろいことを見つける才能に長けた人。大丈夫、きっと、宝塚歌劇にも匹敵するような、おもろいことを見つけていける! この先の道でも、おもろい人、紅ゆずるとたびたび相まみえんことを!
2019-10-13 01:41 この記事だけ表示
 紅ゆずると綺咲愛里、星組トップ・コンビにとって初めての大劇場レビュー作品となった『Bouquet de TAKARAZUKA』の、フィナーレ近くのダンス・シーン。紅の後について踊っていく綺咲の、紅の動きと自分との動きとをどこまでもぴったりシンクロさせようとする、並々ならぬ努力がうかがえて、その長い腕が宙を舞う様を、…美しいな…と思って見惚れていた。その懸命さは、親ガモについていく子ガモをも思わせて、何だか微笑ましくもあった。
 紅ゆずるは、関西人である。おもろい人である。そんなトップスターの相手役を務めるということは、ある程度おもろくなくてはならず、しかし、あんまりコンビでおもろくなりすぎてしまうとそれもまた困ったものであって、そのあたり、やはり関西人でもある綺咲愛里の、ちょっと澄ましているようでいて、でも、やるときゃやるわみたいな匙加減、按配は、実によかったと思うのである。
 その片鱗がうかがえたのが、あの世を描くRAKUGO MUSICAL『ANOTHER WORLD』。現世に帰ってきたヒロインが豹変するシーン、…実はけっこうド迫力の人なんじゃあ…と思わせるあたり、おもしろかった。併演のショー『Killer Rouge』も、紅い衣裳がよく似合って、攻めてくる美少女像を確立。
 『GOD OF STARS-食聖-』のヒロイン、アイリーンは、そんな綺咲愛里の好ましさの集大成のような役どころである。ピンクのベロアのジャージ姿でカンフーを披露して大暴れし、料理はド下手、でも、彼女の一途さ、けなげさが、主人公をはじめ多くの人々の心を動かしていく。フリフリのアイドル風コスチュームも、美脚が映えて◎。ピンクとベージュと黒の三色使いが印象的なワンピースに同じ配色のヒール、そこにやはり同系統の配色に金糸もあしらわれたコートを羽織るシーンも、着こなしが見事だった(衣装は有村淳)。主人公ともビシバシ大いにやり合う役どころ。劇中でもそのトーク力の高さに(役柄上だが)言及される紅相手に、舌戦を繰り広げる。こんな役柄もできるようになったんだな…と、感慨深い。
 初日前囲み会見でも、紅さんについていく! との想いがいつも伝わってきて、微笑ましかった。相手役、舞台人の後輩として、注がれた想いをちゃんと受け止めて、自分という花を大きく花咲かせて。トップお披露目作で挑戦した『THE SCARLET PIMPERNEL』のヒロイン、女優のマルグリット役あたり、今また観たいものだな…と思ったりもする。…もし、道が、10月14日以降も続いて行くのだとしたら、またどこかで逢えますね!
2019-10-13 01:37 この記事だけ表示
 作・演出の小柳奈穂子は、公演プログラムで、『GOD OF STARS-食聖-』について、「過去に見たあらゆる香港映画のテイストをごった煮にした作品を作ってみることにしました」と記している。先日、ロンドンに行く飛行機の中で、シンガポールの超富豪たちが出てくる映画『クレイジー・リッチ!』を観ていて、…おお、この作品もごった煮にされているぞ〜…と。『クレイジー・リッチ!』に出てくる超富豪の家では、家族をつなぐ絆として、餃子作りの話が出てくる。『GOD OF STARS-食聖-』でも、ヒロイン・アイリーン(綺咲愛里)と、別れ別れになった父、母とをつなぐのは、餃子。その餃子をもって、主人公の料理人ホン(紅ゆずる)は“真・料理の聖人コンテスト”に挑み、勝つ。ホン曰く、「何もかもを優しく包み込」む、餃子。
 その言葉に思う。宝塚歌劇は“餃子”である、と――世界中のさまざまな文化を呑み込み、包み込み、他のどこにもない舞台作品として提示する、日本独自の芸術文化。
 小柳奈穂子は、なかでも近年、今までにないジャンルやタイプの“包み込み”に成功してきている座付き作家である。『Shall we ダンス?』や『幕末太陽傳』といった日本映画。『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!-』については、今年四月に亡くなった『ルパン三世』原作者のモンキー・パンチ氏が、「この話を劇場版映画でもやったらいいのに〜」と初日前の囲み会見で話していたことが忘れられない。
『オーム・シャンティ・オーム-恋する輪廻-』の原作はインド映画、台湾公演で上演された『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』の原作は、台湾の人形劇「布袋劇」をベースにした同名のテレビ人形劇。この二作品とも、主演を務めたのは星組トップスター紅ゆずるだった。
 最近、2.5次元ミュージカルが大流行…という話をよく聞くけれども、それを言ったら、宝塚歌劇における『ベルサイユのばら』初演は1974年である。45年前である。年季が入っている。そのときは、漫画を宝塚でやるなんて…と、批判の声もあったという。けれども、『ベルサイユのばら』は空前のヒット作となり、存亡の危機にあった宝塚歌劇を救った。小柳奈穂子の作劇にもみられるように、新たなジャンルにも次々と手を伸ばしてこれを呑み込み、包み込み、地平を広げていこうとする貪欲な姿勢が、宝塚歌劇の歴史を紡いできた。そして、これからも。
 それにしても、「小林寺」のくだりには笑ってしまった。主人公ホンは、“真・料理の聖人コンテスト”に勝つため、「中華料理学院」に“満漢全席”の修行に行く。と、その住所にあったのは「小林寺」。「仏の座にして伝統ある武術の始祖」と聞いて、「まさか…ここは…少林寺⁉」と驚くホン。「違います、よく看板をご覧なさい」と言われて見れば、「小林…寺‼」――このとき、看板の字を映し出している映像(奥秀太郎)で、「小」と「少」の違い、すなわち「ノ」が、「ありませんよ〜」とばかりに点滅するのがツボ。
 すなわち、料理の奥義を修めることのできる「中華料理学院」とは、小林寺の厨房のことなのだった。ここでホンは行方をくらましていたアイリーンの父(天寿光希)とめぐり合い、彼がかつてアイリーンに作っていた餃子を学んでコンテストに挑む。奥義を修める「小林寺」――宝塚歌劇の創始者、小林一三の名前を連想せずにはいられない。そして、思い切った設定にするな、やるなあ…と思ったのは、この公演にまさに小林一三翁の玄孫が出演していたから。今年四月入団、稀惺かずと――彼女が宝塚音楽学校に合格したとき、とある週刊誌の取材を受けて、宝塚ファンがいかに一三翁を尊敬しているか、彼女の父親ばりに熱く語ったところ、一行も記事にならなかった過去をもつあひる(笑)――今回の舞台で、…おお、入団一年目なのにやるなあ…と思うことがあり――。『ルパン三世 -王妃の首飾りを追え!-』での『ベルサイユのばら』パロディに次いで冴え渡る小柳の剛速球。
 星組トップ・コンビ、紅ゆずると綺咲愛里の退団作が、泣けて笑える楽しく明るい物語でよかった! と心から思う。小柳は前述の二作に加え、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』でも紅の主演作を担当している。小柳にとって、紅ゆずるという男役は、新たなジャンルへと挑むモチベーション、インスピレーションを与えてくれる存在でもあったのだろうと思う。『GOD OF STARS-食聖-』においても、小柳の『オーム・シャンティ・オーム』をはじめ、二番手時代、トップ時代に紅が出演してきたさまざまな作品が包み込まれていて、この作品全体がさながらサヨナラショーのような趣。…ああ、こんな作品もあった、この役柄も楽しかった…と、いろいろ振り返りながら泣いたり笑ったりして、未来へと続くハッピーエンドがあって…。二人の門出にふさわしい。
 料理下手であるアイリーンが作った、壮絶な味がするらしき餃子。「パパが死んだらママが悲しむだろう」「若いもんにはまだ先がある。ここは老い先短いワシがいこう」と押し付け合う際の、テンポよい応酬。そしてそして、食べたホンの「七色の雲のかかった山の上に日光菩薩と月光菩薩が見えた」との答えに、「餃子はそんな生死の先をさまようような危険な料理じゃない」「餃子には入れていいものと悪いものがあるのよ」とさらに笑いのダメ押し――そこからホンは、ホーカーズ(屋台)の様々な食材を自分で包んでゆであげる“パラダイス餃子”を思いつくわけだが。“真・料理の聖人コンテスト”からして「料理の鉄人」のパロディであって、ちゃんと、あの番組のテーマソングを思わせる音楽(を担当しているのは青木朝子、そして、ヒャダイン)が流れる。このあたり、観ていて、…小柳奈穂子が澤瀉屋の歌舞伎パロディ作品に参戦したらすごいことになりそうだな…と思うあひる。
 “真・料理の聖人コンテスト”へとつながっていくくだりは、月組トップ・コンビ霧矢大夢&蒼乃夕妃の退団作『エドワード八世』(作・演出:大野拓史)の、バッキンガム宮殿でのジョージ五世のジュビリー・ボールのシーンに匹敵する名場面。銀橋とセリと盆、宝塚歌劇の舞台装置がフル活用され、これまでに流れてきたさまざまなナンバーが同時に、しかし調和するように流れて展開される、めくるめくスペクタクル――。
 ホンは実は、この世界に落ちてきた魔界の皇子、紅孩児(『西遊記』に登場する神仙の一人)であった。終幕、観世音菩薩に許されたホンは、善財童子と名乗って現世でアイリーンと共に生きることとなる。ホンとアイリーンのパラダイス・ホーカーズには、人間だけではなく、魔界からの客人からも大勢訪れ賑わい…という様に、最近ハマっているオンラインゲーム「ゲゲゲの鬼太郎 妖怪横丁」――商品を販売して妖怪を集め、その力を借りてボス妖怪を倒すゲーム――の横丁風景を思い出さずにはいられないあひるであった。小柳奈穂子もゲーマーと聞く。今後の“餃子”の中身にも期待。

 アイリーンのホーカーズのお店「愛麗飯店」のデコボコ店員コンビ、レン(如月蓮)&マオ(麻央侑希)の二人の男役が、本作で退団する――紅ゆずるの役名は「ホン」、綺咲愛里の役名は「アイリーン」と、このあたりのネーミングも実に愛にあふれていると私は思う。如月蓮は、紅が(自発的に)結成したユニット「紅5」のメンバーの一人、ノーブルな顔立ちで醸し出すほっこりした味が魅力。麻央侑希は、プロ野球の名監督として鳴らした広岡達朗氏の孫だが、祖父とは対照的な、突き抜けたような明るさを、退団公演にてフルに発揮。今回の公演では、ダンス・シーンでも長身を大いに活かして踊っていて、…正直、もったいなさすぎる!
2019-10-13 01:35 この記事だけ表示
 「Dancing On My Own」。…ずうっと涙をこらえていて、でも、最後の最後で思わず一筋頬を伝っていって、…その様を、美しいな…と思って静かに見つめているような、そんな演技。
 「See You Again」。演技が変わった。彼の内面――若くして実は非常に成熟したところのある――が、より自然に出てくるようになった。その成熟さなくして、今期、一人で歩むという道は選べなかったと思う。
 敬意をこめて!
2019-10-11 22:44 この記事だけ表示
 振り返って。人生、ラブレターをもらった経験はあまりないように思うのだけれども、…もし、このようなラブレターをもらうことがあるとしたら、それはとても幸せなことではないだろうか…と。筆致、壮絶ですが。
 翻って。…『いだてん』もKバレエカンパニー『マダム・バタフライ』も、野田秀樹作品をきちんと研究していたらこんなことにはならなかったのではないか…と、最近考えていたところでした。
2019-10-06 22:53 この記事だけ表示
 実は。ロンドンの宿泊先でトラブル多発→ロンドンのどこか(地下鉄の駅?)でスキミングに遭ったクレジットカードが不正利用され、帰国後再発行手続きに大わらわ→運転手の不注意によりバスの扉に思いっきり挟まれ左半身打撲と、プチ災難続きでどんよりしていたのですが。さきほど、たまたまつけたタカラヅカ・スカイ・ステージの「タカラ's 歌#64『齋藤吉正特集』」で、『満天星大夜總会』(2007)の「♪HANACHANG」(花總まりがアイドル「ハナチャン」に扮して歌い踊るナンバー)を観たら一発で元気に。改めて、何というか、もやもやを吹っ飛ばす痛快パワーがある名シーンですな…。ありがとう齋藤吉正(2007)。
 土日、予定がいろいろ入っていてリアルタイムでは観られませぬが、フィギュアスケートあれこれ録画済!
2019-10-05 00:24 この記事だけ表示