花組新トップスター柚香光、プレお披露目公演にして堂々のフルスロットル発進である。見どころいっぱいのダンス・コンサートで、その魅力がはじける。培ってきた芸がある。その芸をもって、宝塚歌劇において届けたい舞台がある。そんな男役がトップスターの座に就き、個性を開花させる瞬間を見届ける喜び――柚香光が組配属されたときのトップスター、真飛聖時代の、熱さ、男くささ満開の花組の男役芸を思い出す。柚香は、先輩を相手にしてさえ芸で堂々と挑みかかっていくような勝ち気な舞台を早くから見せていて、そのころから頼もしさを感じさせたものである。今、センターに立って――何年も前からトップを張っていたのでは? と思いたくなるような安定感と、これからも男役の道を真摯に究めていきたい! というみずみずしい一途さとが共存するのがうれしい。そんな柚香の旅立ちを、作・演出の稲葉太地が大いに盛り上げる。
 2020オリンピック・イヤーにちなみ、第一幕は、柚香扮するギリシャ神話のアキレウスが現代にタイムスリップしての騒動をコミカルに描く。超小顔、驚異の等身バランスで、『はいからさんが通る』『花より男子』といった漫画作品の宝塚版に主演し、ヒットを飛ばしてきた柚香。その身体からシャープな切れ味のダンスを繰り出すのだが、肘から先の動きが、長い腕がさらに長く伸びていくのでは…と思わせるものがあり、後味が実にエレガント。跳躍もふわっと浮遊感がある。そんな動きで見せるストリート・ダンスの妙。あらかじめ自分で吹き込んだ“心の声”と、それに対して見せる表情とで、現代に迷い込んでしまったギリシャの英雄の困惑を表現していくのだが、その絶妙のおとぼけ具合が、コメディも行けるところを証明している。作中「彫刻のよう」と描写されるルックスながら、いい意味での俗っぽさも持ち合わせているからこそ、現代日本を舞台にした漫画作品のキャラクターといったあたりも演じられるのが、男役としての強みである。第二幕では和太鼓にも挑戦、和のテイストの衣装姿も粋な限り。スパニッシュの場面では、宝塚の男役ならではのストイシズムとフラメンコのストイシズムとがマッチする高揚感。そして、今年誕生百周年を祝う花組が上演してきた作品の歌でつづる場面。――大正3年に生まれた宝塚歌劇は、大正モダニズムの中で揺籃期を過ごし、昭和の時代に入ってレヴューを始めとするさまざまな劇場文化を取り入れ、今日まで栄えてきた。その意味で、過去の名曲群を歌い継いでいく際、昭和のニュアンスがどうしても必要になってくるところがあるのだが、柚香は、2020年という今を生きながらも、見事なまでにその昭和のニュアンスが似合うのだった――そうして、柚香光という、誕生したばかりのトップスターが、宝塚歌劇の歴史の大きな流れに見事接続されていく様を、激しい飛沫上がるナイアガラの滝、その自然の驚異に心奪われるような思いで眺めていた――。

(1月8日14時の部、東京国際フォーラムホールC)
2020-01-08 23:59 この記事だけ表示