圧倒的な“ザ・ヒロイン”感に酔いしれるひととき。歌謡曲使いにも定評のある藤井大介の構成・演出が光る“アイドル・メドレー”コーナーでは、松田聖子や中森明菜からAKB48のナンバーまで展開されたが、星風まどかのアイドル性によって、興味深いアイドル論ともなっていた。「ボーダーライン」(1984)あたりのマドンナも思い出したり――昔のアイドルの奥ゆかしいキュートさが、彼女にはある。そして、どこか大らかな母性も感じさせて。鷹翔千空の男役としての今後の展開も大いに気になるところ。
2021-04-08 23:59 この記事だけ表示
 死への壮絶な覚悟を決めた武智十次郎光義役の尾上菊之助からあふれ出る思い――その演技に導かれた果て、浄瑠璃がただただ心に沁みて、涙を流す自動装置になったかのようだった――。そして、その母、光秀妻操役の中村魁春が心情を舞う――そのとき、あたり一面が真っ白な世界に、ただ魁春だけがいた。ふっと魂が呼び寄せられ、その世界にただ二人きりで存在した、その時間がたまらなく幸せだった――。

(四月大歌舞伎第二部、歌舞伎座)
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