轟悠の、宝塚の男役としての最後の舞台作品。作・演出を手がけるは植田紳爾。今年、二月大歌舞伎『泥棒と若殿』(歌舞伎座)を観た際、…こういう作品を宝塚でも観たい! 娘役が演じる役が一つもないのは困るけど! と思ったのだが、その願いが叶った。それも、ヒロインが最高の女のやせ我慢を見せるという形で。別れに際して姿を見せないヒロインお鈴の、その澄んだ声だけが遠くから聞こえてくるラストの痛切な美しさ。轟悠の最後の相手役、大切な作品のヒロインを、音波みのりが見事務める。観客の轟への惜別の念を代弁するかのようなセリフを、深い愛をもって語る汝鳥伶の至芸。
 ――今日が、男役・轟悠を生で観る最後の機会だった。

(7月28日11時の部、東京芸術劇場プレイハウス)
2021-07-28 23:44 この記事だけ表示