16時の部観劇(有楽町よみうりホール)。紹介映像、ナビゲーター(本日はいとうせいこう)と文楽技芸員(本日は吉田簑紫郎)による解説と、アニメーション映像を背景美術に用いた『曾根崎心中』<天神森の段>という構成。いつもは顔を出している人形遣いの主遣いが頭巾をかぶっていたり、照明も通常より暗めの印象。<天神森の段>だけなのでいきなりクライマックスの心中場面からの上演なれど、三味線が鳴り、「この世の名残、夜も名残。」と太夫が語り出すと一気に引き込まれ――詐欺に遭って友人からお金を騙し取られた上に、騙りの汚名まで着せられ辱められたことが、主人公徳兵衛が恋人のお初と心中に至る大きな要因となる物語だった……と改めて。文楽では通常ないカーテンコールがあり、死んだ徳兵衛とお初(いずれも人形ですが)が甦って手を振ったりして去っていくのが新鮮。村野藤吾設計の読売会館の7階にある有楽町よみうりホールが実に村野藤吾らしい曲線、曲面にあふれていて、かつ非常に昭和な空間だったのもおもしろく。公演は29日まで。
 人は(好むと好まざるとに関わらず)同時代に生きる人々の眼差しによって多分に規定されている部分があるということを鋭く描き出す、徳川綱豊卿役の片岡仁左衛門の演技。

(11時の部、歌舞伎座)
 18時半の部観劇(オーチャードホール)。ジゼル=岩井優花、アルブレヒト=ジュリアン・マッケイ。これまたすごい舞台でした! ジゼルを亡くし、愛ゆえに、限りなく死の淵まで近づくアルブレヒト。アルブレヒトの偽り、裏切りを超え、愛ゆえに、アルブレヒトをこの世に生き永らえさせようとするジゼル――それこそが自分がこの世に生きた証となるから、そんな風にも感じられ。生きていく業について考えたりして、ちょっと怖くもある『ジゼル』でした。
 3月22日地上波放送分。

*ペア・フリースケーティング

三浦璃来&木原龍一。スピード速! 一つ一つの要素がきれいだった。三浦璃来のきりっと研ぎ澄まされた感。木原龍一はくれぐれもお大事に!

*女子ショートプログラム

 千葉百音。ステップシークエンス、楽しかった。

 吉田陽菜。明るい笑顔も派手衣装にマッチして、冒頭から、観ているこちらも思わず笑顔になって引き込まれていく吉田陽菜ワールド。躍動感があり、一緒に踊り出したくなる演技!

 イ・ヘイン。夢見る風情と力強さが共存する、魅力的な演技。ドラマティックなステップシークエンスに引き込まれた。

 キム・チェヨン。思い切りのよさを感じる演技。

 イザボー・レヴィト。世界に向かって開かれていくような雄大さを感じさせる、とても素敵な演技!

 ルナ・ヘンドリックス。派手な衣装&派手なメイクを派手と感じさせない存在感のド迫力。スピードがあり、女戦士の如きあまりの勇ましさに途中敬意の笑い。

 坂本花織。細やかさと大らかさとをきちんと共存させていた箇所の演技はよかった。

*男子ショートプログラム

 鍵山優真。前へ前へと向かう気持ちが観ていて爽快。力強さ、逞しさを感じる演技。

 三浦佳生。ステップシークエンス、伸びやかでよかった。集中&元気出して!

 チャ・ジュンファン。気迫を感じる演技。

 イリア・マリニン。ジャンプが大きく、迫力のあるかっこいい演技だった。ラズベリーツイストもあざやかに決まって気持ちいい!

 宇野昌磨。心の中に確かにある大切なものを両の手のひらでそっと慈しむような演技。人としての幹の大きさを感じさせた。

 アダム・シャオ イム ファ。エンターテイナーとしての成長と可能性を感じさせる演技だった。
 LUUP(シェアリングサービス)の電動キックボードに乗ってみたらめちゃめちゃ楽しかった! 最初、慣れるために時速6キロモードにしていて、……歩いた方が速い? ……と思いながら走っていたら(最高速度は時速20キロ)、「こう乗るんだ!」とばかりに別のLUUPキックボードに颯爽と追い抜かれました(笑)。目線が高くなるのでいい感じの建築発見にも向いているし、街が違って見えてきて、ものすごく気分転換に。しかし、いつも使っていない筋肉を使ったので、明日は多分筋肉痛。
 試合開始2分、きれいな連係プレイの果て田中碧が先制ゴール! 「え、あなたまたそこにいたの?」みたいな感じで前田大然が非常に気になり。それと、試合に出ていない長友佑都の存在感がすごかった。次の試合の開催地は未定になってしまいましたが、森保ジャパン、ガンバ!
 21日13時の部観劇(東京芸術劇場プレイハウス)。NHK大河ドラマ『光る君へ』で藤原兼家快演中の段田安則がタイトルロールに扮し、イギリスのショーン・ホームズが演出を担当。おもしろい! 『リア王』でこんなに笑うことがあるとは思わなんだ――最初の方など、「えっ?!」と思うその「?!」がそのまま顔に浮かんだような表情で、口を開けて観ていた――。段田安則はスーツの衣裳でリア王を演じているのに、ときどき、昔の装束をまとっているかのように見える瞬間がある不思議。人間の愚かしさがあれこれ描かれている中で、ときに人が自分自身を守るためにつく嘘の残酷性がとりわけ心に響き。狂気については、昨日観た『ジゼル』にも共通する思いを抱いたところがあり。客席でシェイクスピア作品に向き合う感覚として非常にゆかしいものを感じた。
 12時半の部観劇(オーチャードホール)。ジゼル=浅川紫織、アルブレヒト=堀内將平。すごい舞台でした! ……『ジゼル』ってこんなにおもしろかったんだ……と。浅川紫織のジゼルの心理描写が冒頭からすばらしかった。今宵はこれにて。
 最近、まひろ(吉高由里子)父の藤原為時(岸谷五朗)の情けない演技がちょっとツボ。
 まひろ、父を職につけてくれと兼家(段田安則)に直訴! しかしまひろを正論でいなす段田兼家の声のよさ。やりたい放題息子たちを出世させる兼家――段田兼家を観ていると、そこまでして権力に執着する人間の哀しさみたいなものが感じられて。
 今夜会いたいとまひろに伝えてくれと言う道長に、いい加減にしてくださいと、まひろの従者の乙丸(矢部太郎)、言い返した! 乙丸と、道長の従者の百舌彦(本多力)と、二人いい味出してます。結局は道長とまひろの逢瀬、実現――ギターがせつなくむせび泣き。この回の音楽遣いも素敵――。しかし、道長の、北の方は無理だがそれでも妻になってくれとの頼みをまひろは受け入れられない。先週の、一緒に逃げてくれも無理、これも無理、「勝手なことばかり言うな」と怒って帰っていく道長を止めたくて、思わず「行っちゃう〜!」と声が出てしまったあひるであった。
 いかにして、まひろは物を書く人・紫式部となっていくのか。それを探究する物語は、その物語を書く人の、物書きとしての覚悟と決意を伝える物語でもあって。
 陰謀について家族に告げる兼家(段田安則)の声のいいこと。言っていることはひどいのだけれども、聞きほれる。陰謀がうまく行っての笑いもすごい。
 道長(柄本佑)からの平仮名の和歌の手紙に、漢字だらけの漢詩で返すまひろ(吉高由里子)が好き。そんなまひろを「女なのに」とは思わない道長も。
 月夜の逢瀬で、一緒に逃げようとまひろに言う道長。『ロミオとジュリエット』でジュリエットがロミオに言うようなことを、道長がまひろに言うような感じでもあり。柄本佑の演技がせつなくてとてもよく、……まひろ、一緒に逃げればいいのに……と思うあひる。
 この回の音楽、とてもよかった。ひときわ心に響いた。