10月に退団を控えた雪組トップスター彩風咲奈の主演公演(相模女子大学グリーンホール)。彩風がまもなく長い旅に出る大スター、ミスター・ブルームに扮し、自身の舞台人生を振り返っていくという趣向(作・演出:野口幸作)。2007年の星組公演『さくら』『シークレット・ハンター』で初舞台を踏み(初舞台ロケットの再現も)、その後はずっと雪組で育ってきた人なので、その間の雪組の歴史を自ずと振り返るような側面も。抑えた声で放つセリフにときににじませる乾いた自嘲の味わいに、男役としてこれまで見せてこなかった顔を見る思い。その一方で、心どこか解き放たれたように踊る姿にはみずみずしさがあふれていて、退団イヤーに彼女から新たな魅力を引き出した演出家の手腕が光る。エネルギッシュなダンス場面が続いた後に、力強く歌い上げる様も印象的。退団公演『ベルサイユのばら−フェルゼン編−』での魅力発揮&新境地開拓にも大いに期待。