藤本真由
(舞台評論家・ふじもとまゆ)
1972年生まれ。
東京大学法学部卒業後、新潮社に入社。写真週刊誌「FOCUS」の記者として、主に演劇・芸能分野の取材に携わる。
2001年退社し、フリーに。演劇を中心に国内はもとより海外の公演もインタビュー・取材を手がける。
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ラクロの小説『危険な関係』を原作とする『仮面のロマネスク』は1997年雪組初演の柴田侑宏脚本作品(初演の演出は柴田自身、今回の演出は中村暁)。たびたび再演を重ねている作品だが、私は1997年12月に閉場した旧東京宝塚劇場で初演公演を観て以来の観劇。どこか『ベルサイユのばら』論とも感じられるこの作品を、雪組が『ベルサイユのばら』を上演する2024年に観られたことをおもしろく思った。原作小説の時代背景はフランス革命前夜だが、宝塚版では王政復古時代が終焉を迎える1830年のフランス7月革命の前夜へと設定が変わっていること、また、原作と異なり主人公ヴァルモン子爵(朝美絢)が終幕において『風と共に去りぬ』のレット・バトラーの如き行動をとるところも非常に興味深い。『仮面のロマネスク』初演翌年の1998年に上演された『黒い瞳』から、柴田の眼病による視力低下もあって、柴田執筆脚本を他の演出家が演出する体制となった。その『黒い瞳』の深意に私が気づいたのも、2011年に雪組全国ツアー公演で上演されたときだった……と思い、柴田侑宏のインスピレーションについて改めて考えるひとときとなった。複雑な男女の心理ゲームが繰り広げられるが、菊田一夫脚本作品『ダル・レークの恋』の複雑な男女関係にも通じる魅力をも感じさせる作品。
『Gato Bonito!!』は2018年雪組初演のラテン・ショー(作・演出:藤井大介)。主演の朝美絢が熱い熱い世界をパッショネイトに体現する。客席降りも大いに盛り上がって、楽しい。
……ちょっとちょっかい出してきてる?(笑) みたいに感じさせて、それが実は温かさ、優しさというのが朝美の包容力の形である。夢白あやの、舞台人としての毅然とした成長ぶりに心打たれる――でもでも、相手役にちょっとふっと委ねてみたりすると、さらに魅力開花しそうな。縣千は、『仮面のロマネスク』の恋に浮かれる青年ダンスニーをコミカルさも交えてノーブルにキュートに演じている。
(15時の部、ウェスタ川越大ホール)
『Gato Bonito!!』は2018年雪組初演のラテン・ショー(作・演出:藤井大介)。主演の朝美絢が熱い熱い世界をパッショネイトに体現する。客席降りも大いに盛り上がって、楽しい。
……ちょっとちょっかい出してきてる?(笑) みたいに感じさせて、それが実は温かさ、優しさというのが朝美の包容力の形である。夢白あやの、舞台人としての毅然とした成長ぶりに心打たれる――でもでも、相手役にちょっとふっと委ねてみたりすると、さらに魅力開花しそうな。縣千は、『仮面のロマネスク』の恋に浮かれる青年ダンスニーをコミカルさも交えてノーブルにキュートに演じている。
(15時の部、ウェスタ川越大ホール)