「ブラスト!」meets宝塚(春野寿美礼コンサート、「中也が愛した女」、映画「ジョージ・マイケル〜素顔の告白〜」)[宝塚]

 本日も東京メトロ一日乗車券コース。
 「春野寿美礼 イン・コンサート『I GOT MUSIC』」(昭和女子大学人見記念講堂)12時の部観劇。宝塚花組主演男役・春野寿美礼が、クラリネットにスネアドラムの演奏、タップ、オーケストラの指揮と八面六臂の大活躍。もちろん、美声で聴かせる熱唱もたっぷりと。ジャズ・テイストのクラリネット、「ブラスト!」の石川直直伝のスネアドラムと、“楽器を演奏するかっこよさ”という、男役の魅力の新たな境地を見せてくれた。クールで端正なルックスから、優等生、正統派貴公子のイメージが強いけれども、こんなにも多面的な魅力をもったスターであるところがいつも非常に興味深い。個人的には、春野寿美礼ほど、人間の本質にある孤独と真摯に向き合い、深く受け止め、そんな自分の姿をすがすがしいほどにいさぎよく表現して魅力的なパフォーマーはなかなかいないと思っている(ここでいう“孤独”を否定的な意味合いで理解してほしくない。人間の本質を確かに見つめているからこそ、人と人とのつながり、それを求める人間の心をもきちんと表現できるのだと思うし、だからこそ、春野寿美礼の微笑みはいつも慈愛に満ちて優しい)。その意味で、私は彼女の持ち味をかねてから“究極の孤独芸”と呼んでいるのだが、今回のコンサートでも、そのあたりの心情を聴かせる曲が深く印象に残った。それにしても、出演者が一列に並んでの楽しいスネアドラム演奏や、「ブラスト!」Tシャツを着た春野寿美礼と石川直のツーショットが載ったプログラムを見たら(石川直のヤマハの広告もあり)、「ブラスト!」が観たい気分でいっぱいになった。

 続いては、「ドラマ・リーディング いのちをともにした女たち〜近代日本女性史〜 Bプログラム『中也が愛した女−いかに泰子いまこそは−』」(紀尾井小ホール)15時半の部観劇。中原中也と小林秀雄、文学史に名を残す二人の男性が激しく恋を争った長谷川泰子を演じる秋山菜津子がすばらしい。冒頭、年老いた泰子として発するしわがれ声の第一声だけで、こういう女の人っている! という圧倒的なリアリティ、そして泰子の生き様がありありと見えてくるようで、背中がぞくっとした。若いときの生き生きとした魅力も、二人の男性に愛されたという人物像に説得力がある。それにしても、ゼルダ・フィッツジェラルドや高村智恵子など、芸術家に愛され、結果、精神を病んでいく女性の物語はつくづく胸に痛い。常に「自活しなければ」と自らに言い聞かせる泰子の、「我に職を与えよ!」との悲痛な叫びが心に残る。初めて訪れた紀尾井小ホールの、ロビーの窓から見える緑の中の迎賓館が美しかった。

 本日ラストは映画「ジョージ・マイケル〜素顔の告白〜」完成披露試写会(スペースFS汐留)へ。イギリスが世界に誇るスーパースター、ジョージ・マイケルのヒストリーを、懐かしい映像と、マライア・キャリーやエルトン・ジョン、ボーイ・ジョージ、それにもちろん本人の話もたっぷりとまじえてつづってゆくドキュメンタリー。昨年、彼がひさかたぶりのオリジナル・アルバム「ペイシェンス」を発表した際、インタビューを担当し、解説と対訳を手がけた縁で、プレス・シートに文章を書かせていただいている。そのために先日、字幕なしバージョンを観せていただき、かなり激しく泣いた私ですが、今回も胸にこみあげるものが多く、またまた目頭が熱くなり…。エイズに倒れたクイーンのフレディ・マーキュリー追悼コンサートで、同じ病に侵されているかもしれない自分の恋人(後にやはりエイズで亡くなる)への祈りをも込めて「愛にすべてを」を絶唱するシーンなど、涙なくしては観られないものがある。ワム!時代の相棒アンドリュー・リッジリーも登場して、ジョージとの変わらぬ友情と、ワム!解散へと向かう時期の苦しい想いを語るのもグッと来る。アンドリューの頭がすっかり薄くなっていたのはショックだったけれども、すごくいい顔になっていて(昔より魅力的かもしれない)、きっといい人生を歩んできたんだろうなと思わせてくれるのもうれしい。「もっと聴きたい!」と思うと次へと切り替わってしまって、観終わったら思わずCDを聴き返したくなる曲の使い方も憎いほど。
 それにしても、わいせつ行為をしてロサンゼルスの公衆トイレで逮捕されたかなり恥ずかしい事件のときの心情まで正直にしゃべってしまう、その率直さこそが彼の音楽の魅力の源泉なのだなと改めて思う。スーパースターなのに、さまざまな事件が起きるたびにいちいち、ナイーブ過ぎるほどに傷ついて、その深く傷ついた心から、いつしか美しい楽曲が生み出されてくる。「この曲が流行っていたとき、少女だった自分はこんなことを考えていたな・・・」なんて振り返るとあまりに懐かしくて、でも、そういう時代があったからこそ、今、自分がこうしてここにいられるのだと思うと、ジョージの曲と一緒に人生を歩んでこられたことに感謝せずにはいられない。その意味でも、ワム!世代の人は絶対に観に行くべき作品! ワム!世代ではない人も、観れば必ず、織田裕二や平井堅もカヴァーしている(そういえば昔、郷ひろみや西条秀樹もカヴァーしていましたが)彼の楽曲の魅力がわかるはず。劇場公開は、永遠の名曲「ラスト・クリスマス」が街中に流れているであろう12月頃、渋谷のBunkamuraル・シネマにて!