宝塚星組大劇場公演「さくら」「シークレット・ハンター」[宝塚]

 星組公演「さくら」「シークレット・ハンター」観劇。この公演から主演男役を務める安蘭けいをはじめとする出演陣に大いなる進化の兆しを感じたので、舞台評については今後にご期待いただくとして、二作品共、とにかく楽しいこと。久々の日本物ショー「さくら」は、観ると花見がしたくなり、花見をしたらまた舞台が観たくなるような、そして、花見の季節が終わった後も花見気分が味わえるという意味では何度もおいしい作品。クライマックスの総踊りの場面では、日本に生まれた者なら誰でも知っている、美しい四季の花々の中でもひときわ美しく咲き誇るさくらを愛でる気持ちに想いを馳せるうち、記憶の中、せつない想い出や亡き人の面影が甦ってきて思わずホロリ。“一竹辻が花”の着物も豪華! カリブ海を舞台にした併演の「シークレット・ハンター」には、かつてカナダに住んでいた時代(もう四半世紀も前! ですが)、訪れたことのあるバハマを思い出し。澄んだ空、透き通った海、飛び込んだ近くをゆうゆう泳いでゆくエイに驚き、朝食でサーブされるメロンの美味しさに感動し……。この世に楽園みたいな場所って本当にあるんだなと、子供心にも思わずにはいられなかった。そもそもユーフォリックな子供時代の想い出とあいまって、南の楽園で過ごした幸福な時間は、そのときホテルのバンドが演奏していた音楽と共に、今もはっきりと心に残っている。そして、前に「ノバ・ボサ・ノバ」観劇の際にも感じたことなのだけれども、宝塚大劇場には南の楽園の話が実によく似合うというのは、宝塚という街自体が、どこか楽園を思わせる、ユーフォリックな雰囲気に満ちているからだと思う。日本人の死生観に沿う「さくら」と、南の楽園の空気を伝える「シークレット・ハンター」、そのどちらも実にしっくりと来ているあたりがやはり、宝塚歌劇というメディアの奥深い面白さ。そして、安蘭けい率いる星組が、そんな二作品で宝塚のさらなる可能性に挑みつつあるのが非常に興味深く。「シークレット・ハンター」フィナーレ、アンコウ! と戦いを繰り広げる、技術的にも凝りに凝ったラインダンスではつらつとした踊りを見せている初舞台生の活躍をチェックできるのも大劇場公演だけだし……。やっぱり、花見と同時に楽しめる関西方面の皆様にはお得感あるなあ。