宝塚月組東京特別公演「大坂侍」[宝塚]
 青年館公演14日14時の部を観劇。笑った! そして、ホロリ。
 主演・霧矢大夢の、役者としての“筋力”が存分に生きた作品である。ダンスにしても、本当に巧い人は、己の肉体の可動域限界までぶんぶん手足を振り回したりせず、美しく見える際ぎりぎりのところで止めていたりして、そこにセンスと筋力が問われる。得意のダンスにおいてもそのような魅力を大いに発揮する霧矢は、多様な座標軸を瞬時にバランスよく行き交うことのできるセンスと筋力を持ったタイプの役者でもある。シリアスと笑い。シニカルと温かみ。あきらめと希望。どの方向性もきっちり表現しながら決して深入りし過ぎることはないその姿勢が、男役としてのストイックな色気を醸し出す。そして、幕末の大坂、時代遅れの侍として生きるか否かの岐路に立たされた主人公として、生と死を淡々と見つめる人間としての深みと凄みあってこそ、ときににぎやか過ぎるほどにぎやかに“大坂人パワー”を描いたこの作品は決してベタつくことはない。歌謡ショーっぽい演出あり、お化けのうらめしや? ダンスありと(マイケル・ジャクソンの「スリラー」のビデオのパロディ、には見えなかったが…)、多少ドタバタ気味ながら、霧矢をはじめとする月組上級生&専科から参加の未沙のえる、箙かおるの芸達者ぶりあって、きっちり“なにわ人情もの”として成立している。