藤本真由
(舞台評論家・ふじもとまゆ)
1972年生まれ。
東京大学法学部卒業後、新潮社に入社。写真週刊誌「FOCUS」の記者として、主に演劇・芸能分野の取材に携わる。
2001年退社し、フリーに。演劇を中心に国内はもとより海外の公演もインタビュー・取材を手がける。
ご意見・お問い合わせ等は
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パーシーの帽子が欲しい!〜宝塚月組「スカーレット ピンパーネル」番外編[宝塚]
脱帽! の前に、帽子をかぶった話をしておくべきでした。
二年前の初演を初めて観たとき、一幕が終わった瞬間、「凄い! 楽しい!」という想いと共に、あひるの頭にあったこと。
パーシーの帽子が欲しい!
男もお洒落をしなくては! と楽しげに歌い踊るナンバーで、パーシーがそれは自慢気にかぶっている、ピンクの羽根がついたしまうま柄の帽子。あひるもあんな帽子をかぶって、舞踏会に行ってみたい!(一体、現代日本のどこでやっているというんだ…)
行くべき場所は一つしかない。「たのも〜」という気持ちで、神戸はトアロードにある、世界で一番好きな帽子屋に急ぐあひる。そこにははたして、パーシーのしまうま帽と張り合えるアイテムがあった…!
大きなつばの白い帽子。ラベンダー色のベールがつばを一周して、長く腰のあたりまで垂れ下がっている。つばの上、三色の大きな花の隣には蝶々があしらわれていて、何と、歩くとびよーんびよーんと動くのである!
これならパーシーと勝負しても勝てるかも! …しかし、一体どこでかぶったらいいのか、それが問題だった。考えられるのはガーデン・ウェディングくらいしかなかったけれども、当時、周囲にガーデン・ウェディングを挙げるような友達はおらず、まさか、自分がいまさら挙げるというわけにもいくまい。聞けば、その帽子を試しにかぶった中で似合ったのは、あひるともう一人、わずかに二人だったという。そしてそのマダムも、自分の住んでいる街ではどう考えても浮いてしまう…とおっしゃっていたとか。そこまで言われると、もうあひるが買うしかないのでは? と男前な決断を下そうとするあひる。だが、買うだけ買って家に飾っておくには、ちと値が張り過ぎた。お洒落ってつまりは洒落、洒落でしまうま帽だの衣装だの買えるパーシーの財力がつくづくうらやましい…と思いつつ、あひるはその帽子をあきらめたのだった。
あの帽子どうなったかな、誰か買う人いたのかな…と何となく心の隅にあったこの二年。そして観た今回の月組版。今度のパーシーは何と、ラベンダー色に白とラベンダーの羽根のついた帽子をかぶっているではないか! これはもう、初めての印税であの蝶々の帽子を買うべし! というお告げかもしれないと思い、またもやトアロードに飛んでいったあひる。…しかし、例の帽子は展示用の品となって、お店から姿を消していたのだった。残念。
しかしながら、お店の方と、ひょんなことから宝塚談義。
「前におもしろいっておっしゃっていた『スカーレット ピンパーネル』、今回初めて観ることができたんです。舞台も素晴らしかったし、帽子も衣装もそれは手が込んでいて、思わずじっくり眺めてしまいました」
「主人公のかぶっている帽子、凄くなかったですか? 実は、今回の舞台を観て、蝶々の帽子、やっぱり買おうかなと思ったんです。初演のときから、パーシーの帽子に張り合えるのは、あの蝶々の帽子しかない! と思って」
「まあ、うちの帽子で張り合おうと思ってくださったなんてうれしい! 実は、今回、舞台を拝見して、思ったことがあったんですよ。宝塚はお客様に素晴らしい夢を見せている、うちのお店も、お客様に夢を見せる帽子を創っていかなくてはって。あの蝶々の帽子のように」
…というわけで、トアロードに面した素敵なウィンドウに、パーシーのしまうま帽に対抗できる帽子がまた並ぶ日も遠くはないかと。そしてあひるは、街中でもかぶれる、ちょっと他では見当たらない感じの夏の新作帽子を手に入れたのであった! しまうま帽に勝てるかは? だけど、パーシーに見せたら一体、何て言うかしら。
二年前の初演を初めて観たとき、一幕が終わった瞬間、「凄い! 楽しい!」という想いと共に、あひるの頭にあったこと。
パーシーの帽子が欲しい!
男もお洒落をしなくては! と楽しげに歌い踊るナンバーで、パーシーがそれは自慢気にかぶっている、ピンクの羽根がついたしまうま柄の帽子。あひるもあんな帽子をかぶって、舞踏会に行ってみたい!(一体、現代日本のどこでやっているというんだ…)
行くべき場所は一つしかない。「たのも〜」という気持ちで、神戸はトアロードにある、世界で一番好きな帽子屋に急ぐあひる。そこにははたして、パーシーのしまうま帽と張り合えるアイテムがあった…!
大きなつばの白い帽子。ラベンダー色のベールがつばを一周して、長く腰のあたりまで垂れ下がっている。つばの上、三色の大きな花の隣には蝶々があしらわれていて、何と、歩くとびよーんびよーんと動くのである!
これならパーシーと勝負しても勝てるかも! …しかし、一体どこでかぶったらいいのか、それが問題だった。考えられるのはガーデン・ウェディングくらいしかなかったけれども、当時、周囲にガーデン・ウェディングを挙げるような友達はおらず、まさか、自分がいまさら挙げるというわけにもいくまい。聞けば、その帽子を試しにかぶった中で似合ったのは、あひるともう一人、わずかに二人だったという。そしてそのマダムも、自分の住んでいる街ではどう考えても浮いてしまう…とおっしゃっていたとか。そこまで言われると、もうあひるが買うしかないのでは? と男前な決断を下そうとするあひる。だが、買うだけ買って家に飾っておくには、ちと値が張り過ぎた。お洒落ってつまりは洒落、洒落でしまうま帽だの衣装だの買えるパーシーの財力がつくづくうらやましい…と思いつつ、あひるはその帽子をあきらめたのだった。
あの帽子どうなったかな、誰か買う人いたのかな…と何となく心の隅にあったこの二年。そして観た今回の月組版。今度のパーシーは何と、ラベンダー色に白とラベンダーの羽根のついた帽子をかぶっているではないか! これはもう、初めての印税であの蝶々の帽子を買うべし! というお告げかもしれないと思い、またもやトアロードに飛んでいったあひる。…しかし、例の帽子は展示用の品となって、お店から姿を消していたのだった。残念。
しかしながら、お店の方と、ひょんなことから宝塚談義。
「前におもしろいっておっしゃっていた『スカーレット ピンパーネル』、今回初めて観ることができたんです。舞台も素晴らしかったし、帽子も衣装もそれは手が込んでいて、思わずじっくり眺めてしまいました」
「主人公のかぶっている帽子、凄くなかったですか? 実は、今回の舞台を観て、蝶々の帽子、やっぱり買おうかなと思ったんです。初演のときから、パーシーの帽子に張り合えるのは、あの蝶々の帽子しかない! と思って」
「まあ、うちの帽子で張り合おうと思ってくださったなんてうれしい! 実は、今回、舞台を拝見して、思ったことがあったんですよ。宝塚はお客様に素晴らしい夢を見せている、うちのお店も、お客様に夢を見せる帽子を創っていかなくてはって。あの蝶々の帽子のように」
…というわけで、トアロードに面した素敵なウィンドウに、パーシーのしまうま帽に対抗できる帽子がまた並ぶ日も遠くはないかと。そしてあひるは、街中でもかぶれる、ちょっと他では見当たらない感じの夏の新作帽子を手に入れたのであった! しまうま帽に勝てるかは? だけど、パーシーに見せたら一体、何て言うかしら。