宝塚雪組公演「星逢一夜」「La Esmeralda」[宝塚]
 ――「七夕の願い事が叶った!」と、喜ぶ人がいた。
 「まゆちゃんは何をお願いしたの?」と、幸せそうなその顔を見て、私は、願いが一つ叶ったと思った。何故なら、今年短冊に書いた願い事は、「皆が幸せになりますように」だったから。
 ――星逢、七夕の夜のドラマティックな再会が描かれる雪組公演「星逢一夜」を観て、心に思い浮かべたのはそんなやりとりだった。
 宝塚歌劇団期待の若手、上田久美子の大劇場デビュー作である。2013年、作・演出デビューを果たした「月雲の皇子」が好評を博し、当初は宝塚バウホール公演のみだったのが急遽東京公演が決定。ブラームスとシューマン夫妻を描いた昨年の「翼ある人々」は第18回鶴屋南北賞の最終選考に残った。そして三作目がこの「星逢一夜」。宝塚大劇場公演の評判も高く、東京へとやって来たが、宝塚歌劇の正統を行く、骨太さと繊細さとを兼ね備えた作劇が光る。ヴィジュアルの美しさ、舞台機構の活かし方も見事なもの。「翼ある人々」もそうだったが、何より、「…宝塚歌劇を好きでよかった…」としみじみ感じさせる作品世界が素晴らしい。周囲からの期待に押し潰されて摩耗することなく、伸びやかに力を発揮していって欲しい人である。
 ラテン・ショー「La Esmeralda」の作・演出は齋藤吉正。そして今作は、きわめて正しい齋藤吉正ワールドである。戦隊ものヒーロー作品のエキサイティングなオープニングが最後までハイテンションで続いていくようで、体感時間が世にも短い。彼の衝撃的&伝説的大劇場デビュー作「BLUE・MOON・BLUE」にも通じる、音楽の眩惑。「夏はまだまだ終わっちゃいないぜ!」とでも言うような、熱い熱いショー。齋藤吉正が元気に己を貫いて突っ走っていったときにしか生まれ得ない世界は、観る者をも元気にする。そしてやはり、思うのである。「宝塚歌劇を好きでよかった!」と。
 どちらの作品においても極めて高いレベルの舞台を展開していることに、雪組生は誇りをもっていい。これぞ、本道たる二本立て、私の愛する宝塚歌劇である。