「イェヌーファ」初日[オペラ]
 初日観劇(2月28日14時の部、新国立劇場オペラハウス)。
 何だか勝手に難しいというイメージを抱いていたのだけれども、聴いてみたらまったくそんなことはなく。暗闇に浮かぶ白い“箱”の中で展開する舞台、クリストフ・ロイの演出は洗練の極み。箱の向こうに広がる畑や雪景色、ディルク・ベッカーの美術も鮮やか。ユディット・ヴァイラオホの衣裳も現代風ながらも色彩に意味をもたせてスタイリッシュ。
 ヒロイン・イェヌーファが赦しを見せる第三幕が圧巻である。彼女は赦す。自分に恋するあまり自分の顔を傷つけた男を。身ごもった自分がひそかに産み落とした私生児を、自分の人生を思うあまり殺してしまった義理の母を。そして恐らくは、自分を孕ませるだけ孕ませておいて逃げてしまった不実な男をも。赦しの果てに彼女は真実の愛を知る。過つは人、赦すは神。つまりはそのとき、彼女は神に近づく。そうして近づいた瞬間に、作曲家レオシュ・ヤナーチェクはとりわけ美しい音楽を与える。
 ――以前、問うたことがある。完璧な存在である神こそが完璧な美を創造し得るはずであって、不完全な存在である人間が美を創造しようとする営為には意味がないのではないかと。――そんなことはない、と声は言う。不完全な存在が完全に向かおうとする、その行為の中にこそ美が秘められているのだと。その問答を思い出した。