『民衆の敵』初日
 11月29日18時半の部、シアターコクーン。
 町の不正を暴くため、一人、立ち上がる主人公の医師(堤真一)。――その姿に、人間にとってもっとも大切な真実と自由を追求する上で、芸術家が社会において果たすべき役割とは何なのか、劇作家ヘンリック・イプセンは大きなものを託している――イプセン自身がいかなる気持ちで自らの内よりその言葉を生み出したのか、主人公の背後に劇作家の姿が見えてくるような思いすらする。のだが。誰彼構わず敵に回すやり方に、次第に、「…その戦い方ではさすがに通らんばい…」とつい何となく博多弁でつぶやいてしまうような違和感を覚える、その際、終幕に至るまで主人公の味方であり続けながらも、その荒ぶる言動をじっと黙って聞いている、そんなホルステル船長役の木場勝己の佇まいに、…この人は実のところ、どう考えているんだろう…と見入ってしまうものがあり。弟である主人公と対峙することとなる市長役の段田安則は、序盤の堤とのやりとりにおいて、今年観劇した芝居の中でももっとも緊迫感に満ちた演技を見せ、助演賞もの。利権構造や報道のあり方、世論の出来上がり方など、百年以上前に書かれたとは思えないほど、現代に生きる我々に突きつけるものの多い作品。
2018-11-29 23:11 この記事だけ表示