2018年宝塚歌劇ベスト&新人賞発表〜[宝塚]
 宝塚の舞台において描くべき愛と美をあくまで追求した、心ある人々の踏ん張りによって、ギリギリのところでワーストはなし。それにしても、『蘭陵王』高緯役の瀬戸かずやの演技は、2018年の宝塚歌劇に見事なピリオドを打つものだった。

 今年も、選ぶのに迷うほど充実した作品が多かったけれども、ベストは小池修一郎潤色・演出の月組『エリザベート』に。何度も上演されてきた名作に新たな風を吹き込もうと挑む全員の頑張りにより、作品理解においてこれまでにない境地に至ることができた。月組の『雨に唄えば』(中村一徳演出)、雪組『凱旋門』(柴田侑宏作、謝珠栄演出・振付)についても然り。
 日本人の心性を描いて楽しかったで賞を月組『カンパニー』(石田昌也作・演出)に。そして、汎用性高かったで賞を星組『ANOTHER WORLD』(谷正純作・演出)に(日本舞台芸術界に鬼&地獄ブーム!)。
 ショーは、日本物作品の新たな境地を拓いた宙組『白鷺の城』(大野拓史作・演出)。あひるも台湾に行きたかったで賞に、星組『Killer Rouge/星秀☆煌紅』(齋藤吉正作・演出、日本青年館バージョン)。東西大劇場バージョンを踏まえてのブラッシュアップが光った。そして、この作品の一連の上演を通じて、星組娘役トップ綺咲愛里が大躍進! 客席にさっそうと攻めてくるかっこいい美少女キャラを確立した。“心の名場面”は、彼女が三人組の芯となり、台湾でもヒットしたブラックビスケッツの「Timing」を歌い踊るコケティッシュなシーン。

 今年は、昨年の予想通り、新人賞複数!
 一人目は、雪組トップ娘役、真彩希帆。『ひかりふる路〜革命家、マクシミリアン・ロベスピエール〜』では、フランク・ワイルドホーン作曲の大曲の数々を澄んだ歌声で歌いこなし、主人公ロベスピエールがこの世に残していった良心とも解釈し得るヒロイン、マリー=アンヌに扮して堂々たるトップお披露目。『凱旋門』でも、大ベテラン轟悠を相手に、激動のパリ、男たちの間で刹那の恋に身を焦がさずにはいられない難役ジョアンを演じて、魂をほとばしらせるような演技を見せた。
 彼女は声が美しい。澄んで聖性を感じさせる、その先に、エロスがにじむ。これは微笑ましい点でもあるのだが、『Gato Bonito!!』のタンゴの場面でのデュエットダンスの際など、「頼もー!」と気合が入りすぎて、愛を踊るというより果たし合いのように見えた。娘役はたおやかに〜! 鼻息荒く見えてしまっては、せっかくの芸もGOE(出来栄え点)マイナス。
 さて。最初はここで、雪組トップスター望海風斗への要望を書く予定でしたが、「タカラヅカニュース」を観るだに…、大いに改善されている模様! 1月2日からの東京宝塚劇場公演『ファントム』が楽しみ!

 二人目の新人賞は、宙組トップ娘役、星風まどか。
 プレお披露目公演『WEST SIDE STORY』は、人々の対立の中、あくまで愛を信じて生きるヒロイン、マリアを体当たりで造形、作品の芯を見事に務め上げた。私は、彼女の演技と、「フィギュアスケート世界選手権2018」男子フリーでの友野一希の演技を通じて、この物語のヒロインがなぜ、イエス・キリストの母と同じ名前であるのか、改めて知った思いがする…。少女漫画が原作であるお披露目公演『天(そら)は赤い河のほとり』では、古代オリエントに迷い込んでしまった現代女子高生のユーリ役。主人公に抱きついた際に片足が膝のところでちょんと上がるポーズは胸キュンもの(小柳奈穂子の作・演出がツボを得ている!)。ユーリは人々と共に闘うこととなるが、戦士の姿となっても、例えば、かつての月組娘役・蒼乃夕妃がこのような場合、“男前”となるのに対し、星風は“男前”にはならない。そこに個性がうかがえる。併演の『シトラスの風−Sunrise−』では“明日へのエナジー”の場面にまで駆り出され、軽快なダンスを披露していた。秋の『白鷺の城』『異人たちのルネサンス』でも、作品上与えられた大きな役割を立派に果たしたばかりである。レオナルド・ダ・ヴィンチが主人公の『異人たちのルネサンス』では、舞台ラストで名画「モナ・リザ」が登場する、そのとき、ダ・ヴィンチにインスピレーションを与えたヒロイン・カテリーナを演じていた星風が、それまでいかに「モナ・リザ」に自らのたたずまいを合わせていたか、胸を衝かれるものがあった。
 星風まどかは、必死である。作品上与えられた役割、トップ娘役としての責任を果たすため。一切の余計な自意識が入り込む余地がない、その必死さが、彼女の表情をいつも実に艶っぽいものにしている。学年は若く、童顔だけれども、娘役として落ち着いた発声ができるのも、演じる役柄に幅を与えている。何よりすばらしいのは、この一年、宙組トップスター真風涼帆を相手役として必死に支え続け、その復調を受けて喜びに光り輝いているところである。娘役魂!
 真風涼帆は見事復調、宙組全体も上昇気流にあり、他の四組を追える展開となってきた。二月の博多座公演で上演される『黒い瞳』については、最近、…生きている人間の熱い生き様が本当にヴィヴィッドに描かれた、宝塚の歴史に残る名作なのだ…との思いを新たにする出来事があったばかりである(プガチョフ役の愛月ひかるにとっては、専科入り前、さらなる実力を蓄える大チャンスである)。宙組の未来は明るい。
2018-12-28 17:56 この記事だけ表示