『メリー・ポピンズ』[ミュージカル]
 子供のころから、原作小説『メアリー・ポピンズ』が大好きだった。小学生のころ、彼女のように空を飛びたくて、風が吹くと飛んでいこうとして傘を広げて、…それでよく傘を壊して、母に怒られた。
 昨年、舞台のヴィジュアル撮影日に、取材があった。スタジオを訪れると、濱田さんがメリーの扮装をして、撮影している。…メリー・ポピンズがいる! と思った。そしてその取材で、改めて考えさせられた。メリー・ポピンズは、いったい何者なんだろう? と。魔法使い? 宇宙人? ミュージカル『メリー・ポピンズ』は、2004年に開幕してすぐ、ロンドン・ウエストエンドで観ている。そのときはあまりあれこれ考えずに、楽しい舞台だなあと思っていたのだけれども。
 そして、日本版の観劇(3月26日18時の部、シアターオーブ)。メリー・ポピンズ=濱田めぐみ、バート=柿澤勇人。
 原作が大好きだったから、私は、子供のころにジュリー・アンドリュースが主演した映画版を観て、ちょっとメリーの愛想がよすぎると思ったくらいだった。濱田メリーは、原作と映画版の中間くらいの不機嫌さに感じられて、いい塩梅。そして、もう、メリー・ポピンズそのものにしか見えなかった。「濱田めぐみ」が消えていた。それこそ、魔法のような。
 …最後、どうして、メリー・ポピンズは去っていってしまうのかな、と思った。バンクス一家がうまく行くようになったら、いなくなってしまう。さみしい! 彼女自身はさみしくないんだろうか。みんなとずっと一緒にいたいと思わないんだろうか。
 何だか、その姿が、自分の仕事とも重なって。
 どこまで書くとおかんになってしまうのか、その辺のさじ加減が難しいなあと、いつも思う。書いた方がいい場合と、書かない方がいい場合と…。いい感じの関わり方。距離感。悩むところ。
 柿澤勇人も非常によかった――彼は、昨年上演された彩の国シェイクスピア・シリーズ『アテネのタイモン』のアルシバイアディーズ役もすばらしく、彼岸に誇らしく思った。今回の舞台では、バンクス家の子供たちを温かく包み込み、見守るバート。舞台を観ていて、自分もすっかり子供に戻っているから、「メリーがいなくなっちゃったの」と、子役たちと一緒になってバートに訴えかけたいくらい。そして、心から熱い炎を発して、柿澤バートは歌い踊った。楽しかった! 一緒にそんな時間を過ごせたことを、本当に幸せに思った。
2018-12-30 00:50 この記事だけ表示