『白い病気』
 病院の無菌室を連想させる舞台装置。けぶったような蛍光灯の光。
 暗い部屋で、戦争について語る家族――リヒャルト・シュトラウスの「メタモルフォーゼン」を初めて聴いたときのことを思い出す。ナチス・ドイツ崩壊直前、母国が爆撃され、破壊されていく中で、書かれた曲。曲の向こうに、確かに聴こえるもの。軍靴の響き。ラジオが伝える戦争のニュース。
 人々の間に蔓延する難病の特効薬を発見した医師がいて、軍事国家の独裁者もその病気にかかっていて、医師は、独裁者に、戦争をやめれば薬を渡すと言って、それでも、独裁者は戦争をやめなくて…。いったい、何のために争っているのか。本末転倒。

 原作はカレル・チャペック。潤色と演出と美術を担当、そして主人公の医師を演じたのが、串田和美。私の、成蹊小・中・高の先輩。伯父の幼なじみ。――彼の創る舞台を観ていると、…ああ、同じ学び舎で学んだ先輩だな…と感じるときがある。いい意味で。私は母校について書くことが多いけれども、何も成蹊学園のすべてを好きというわけではない。嫌なところもある。アンビヴァレントである。けれども、串田先輩の舞台には、私の好きな成蹊学園を感じる。のんびり、おっとりしているところ。ガツガツ競争しに行かないところ。品のいいところ。そう感じていると、成蹊のあのキャンパス、桜並木にケヤキ並木、『赤毛のアン』ごっこをした林、『メリー・ポピンズ』を真似て飛ぼうとしたグラウンド、四季折々に美しい景色を思い出す。
 その目で、権力の座にある、もう一人の小・中・高の先輩を見る。
 …うーん。この人、本当に先輩? いい意味でも、悪い意味でも、成蹊らしさをまったく感じないんですよね…。ものすごく、謎。

(3月9日14時の部観劇、KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ)
2018-12-30 18:34 この記事だけ表示