『華氏451度』
 本を所有してはいけない世界。本は焼かれるべき世界。ファイアマンである主人公は、本を焼く。華氏451度で。――しかし、彼の内に、次第に疑問が生じてくる。なぜ、本は禁止されるべきなのか。そして、禁じられている本をこっそり持ち出して読むようになり、それが原因で、追われるようになり…。
 レイ・ブラッドベリのSFディストピア小説が原作である(上演台本・長塚圭史、演出・白井晃)。けれども、今回のこの舞台は、管理社会の恐ろしさを主題にするというよりは、書物が、ひいては、芸術作品が人間にもたらしているものとは何なのか、その深い意味に迫ろうとしている。そして、実にサスペンスフルな展開が舞台上構築されていて、…つかまる、どうしよう、どうしよう…と、後半にかけて、観ていてものすごくドキドキした。
 最終的に、主人公は、本をそれぞれに記憶し、語り継いでいっている人々のグループと出会う。舞台が描き出してゆくのは、人間にとって、それぞれの頭でしっかり物を考えていくこと、その大切さである。管理社会の恐ろしさも、そもそもそこにあるわけで。
 私が書いていることも、この世界のほんの一部に過ぎない。どうぞ、このブログ以外にも、いろいろ読んでください。
 堀部圭亮の、対照的な二役の演じ分けが、とても印象に残った。

(10月1日14時の部、KAAT神奈川芸術劇場ホール)
2018-12-30 19:06 この記事だけ表示