宝塚月組公演『ON THE TOWN』[宝塚]
 年末の疲れを引きずったまま突入した2019年、その正月ボケを吹っ飛ばすような、月組新トップ娘役・美園さくらの演技なのだった。
「あんた、いいとこあるじゃない!」
 出会い頭にいきなり、そう肩を叩かれたような。面食らって、肩を叩き返すのを忘れてしまうような(笑)。
 ヒロインを務めた昨年の『雨に唄えば』でも、舞台上、ぱあっとはじけるような勢いをもった娘役だなと。そして。トップ娘役の立場で臨む舞台では、はじけ方さらに半端なし。いい意味で、客席への攻撃力、破壊力満点である。よけいな自意識の一切がないから、観ていて清々しい。そして実にセクシーである。突き抜けている。おもしろすぎる――表情は、もっとやわらかくしたら、もっと魅力的だと思うけれども。プレお披露目公演からこう来たか! うれしくなって、フライングで拍手を入れる始末。蒼乃夕妃、愛希れいか、そして美園さくら。トップ娘役の地平がどんどん拓かれてゆく月組なのだった。
 そんな全力投球の美園を真正面からどんと受け止めて、トップスター就任3年目、珠城りょうの包容力もいや増すというもの。その歌唱に、背中に、ときに哀愁すら感じさせて。フィナーレで男役陣を率いる姿にも貫録あり。
 レナード・バーンスタイン作曲による、1944年初演のブロードウェイ・ミュージカルである。ニューヨークでつかの間の休暇を楽しむ三人の水兵たちの、つかの間の恋。その恋のお相手の一人を演じて、白雪さち花が大活躍である。『瑠璃色の刻』(2017)ではフランス王妃マリー・アントワネット役として堂々たる演技と歌唱を披露して場をさらい、昨年の『エリザベート』では娼館の主、マダム・ヴォルフ役。「♪タチアナはダイナマイト〜」と歌うお勧めソングに、…一番ダイナマイトなのはマダム・ヴォルフ自身なんじゃ…と思わせる、パンチの効いた歌声。そして今回、気に入った水兵をお持ち帰りしてしまう女タクシー運転手ヒルディ役。バックの映像ともマッチしためちゃくちゃな運転っぷり! 演技でここまで崩しても、その舞台姿が決して崩れないのは、白雪の娘役芸が強固だからである。
 月組に、輝月ゆうまみたいに重厚でダンディな男役がまた一人…と正月ボケの頭で観ていたら、はたしてそれは、これまでとはまた違った声色と個性を開拓した輝月ゆうまなのだった。婚約者の奔放っぷりにとことん物分かりのよさを発揮して見せるとぼけたおかしみ。珠城&美園、新トップコンビのデュエットダンスでは、二人への熱いエールにあふれたカゲソロを披露。大丈夫、月組の未来は明るい!
2019-01-14 23:20 この記事だけ表示