『いだてん』八回目〜[ドラマ]
 取材で小石川のKバレエカンパニーを訪れたところ、「金栗四三青春の地・金栗足袋(ハリマヤ足袋)発祥の地 文京区」と書かれたフラッグが商店街にはためいていました。確かに、東京高等師範学校(現筑波大学東京キャンパス文京校舎)にも伝通院にも近いKバレエ。
 兄(中村獅童)の工面したお金とみんなのカンパで旅費も調達でき、無事ストックホルムに旅立つこととなった金栗四三(中村勘九郎)。その胸に去来する思い――なぜ自分は、言葉も通じぬ異国に行ってまで走らねばならないのか、いったいなぜ、こんなことになってしまったのか。そんな彼を、兄は叱咤激励する。壮行会で四三は、旅費の工面に尽力してくれた幼なじみのスヤ(綾瀬はるか)を思いながら、「自転車節」を絶唱する――スヤはそのとき、兄に金を都合してくれた家に嫁いで行っている。
「…洋行前って、あんな気分になるよね…」
 …隣で観ている夫の表情が暗い! 20年以上前の海外留学時の苦労あれこれ――言葉が通じない、食事が合わなくて10キロ以上痩せ、パスポートの写真とすっかり人相が変わってしまった等――を思い出したようである。…いや、貴方がケンブリッジ留学するとき、「洋行」という言葉はもはや一般的ではなかったはずですが。
「…でも、確かに、ああいう風に、お前が行かなければ後の人間が続かないと言われれば、行かざるを得ないんだ…!」
 四三の悲壮感に共鳴するところありのようである。私たち世代でそうなら、それ以前の人々の覚悟はいかばかりか。シカゴに留学していた父や、海外出張も多かった祖父を思い。考えてみれば。Kバレエ創始者熊川哲也も15歳で海外に渡って行ったのだった。札幌から、東京を経由しないでいきなりイギリスへ。
 四三と共に旅立つ三島弥彦(生田斗真)を新橋停車場まで送りに来る、兄弥太郎(小澤征悦)と母和歌子(白石加代子)。「三島家の恥」とばかり言い、弥彦のオリムピック出場に反対しているかに思えた母和歌子の手には、日の丸を縫い付けた運動着が…。泣くあひる。男泣きする弥彦。もらい泣きする四三。さらに泣くあひる。「泣く」ばかり書いていますが、白石加代子の演技がいかにもなウェットな感じではないからよけい心に沁みて泣くのである――先週、四三が三島家でテーブルマナーを学んでいる際、食べ物を思いっきり和歌子に飛ばしてしまったときの表情も絶品であった――。そして、「男だって泣くときはある!」ということをきちんと描いているのもよかった。考えてみれば、成田空港から「洋行」して行った夫も泣いていましたばい。
 そして、今回から大竹しのぶ登場〜。わくわくしていたようで、昨夜、あひるの夢に先に登場(笑)。豪傑な女性のようですが、今後、四三とどう絡んでいくのか、楽しみ。
2019-02-24 23:38 この記事だけ表示