使命創生〜「世界フィギュアスケート選手権2019」男子フリースケーティングの羽生結弦の演技[フィギュアスケート]
 …待っていた。運命を共に踊る相手が、再び姿を現すのを。始めたのは、彼だ。強い力で、私の心を、この世界に引っ張ってきた。…否、彼でもないのかもしれない。人智を超えた力なのかもしれない。
 フィギュアスケートを芸術にする。始めたのは、貴方です――もちろん、フィギュアスケートの歴史の中で、そう考えた人は貴方が初めてではないと思う。けれども、私がこの生において目撃すべく宿命づけられたその最初の人は、貴方だから。
 今夜、氷上に舞う選手たち、…自分がやっていることは、芸術になり得るのかもしれない…と知った選手たちの表情は、一様に明るかった。晴れやかだった。幸せそうだった。そんな表情を観ていて、幸せだった。もっと観たい…と思った。会場の、テレビの前の、多くの観客がそう思ったことでしょう。心には国境がない。だから、美は国境を越えていく。芸術を、フィギュアスケートを通じて、異なる国々の人々の相互理解が深まって、この世から虚しい争いがなくなる日を、私は本気で夢見ているのです。
 羽生結弦が、羽生結弦の使命に気づけてよかった。そして、その演技は、私に新たな使命をも創り出した。使命を生きる羽生結弦を、変わりゆく世界を、目撃すること。書き表すこと。後世の人々に伝えること。そうして私は歴史の一部になる。私自身の生の長さを越えて遥かに続く、雄大な時間の一片となる。生きる意味――その凄まじい幸福感に、観ていて一瞬、意識がホワイトアウトしそうだった――。
2019-03-23 23:59 この記事だけ表示