『海辺のカフカ』初日
 5月21日18時半の部、赤坂ACTシアター。
 …正直、観劇するにあたっては複雑な思いがあった。私にとって、蜷川幸雄演出作品を観劇するとは、その激しい魂のほとばしり――ときに私に、一週間も連続して夜な夜な悪夢を見せ続けるような――を受け止めるという行為であって、演出家が亡くなった今、それははたして成立するのか…という懸念があったから。しかし、シガー・ロスの曲に乗って、アクリル・ケースの装置の数々が舞台上を滑り始めた瞬間から、懸念は消えた。蜷川幸雄は、生きていた。舞台の中に。――私の中に。劇場に集う人々の中に。それぞれの心の中に確かに遺された彼のかけらをみんなで持ち寄って、いま一度、その存在を創り出してゆく、そんな儀式に参加しているような気さえした――。
 啓示に満ちた物語世界に心たゆたううち、――自分が最近、何故フィギュアスケートと『いだてん』についてばかり書いているのか、気づいた。鍵を握る人に明日会うことに今日決まったので、大丈夫です。そして最近、自分にとって、赤坂ACTシアターという“場”に何かがある…と感じる。
 村上春樹が創り、そして、蜷川幸雄が読んで創った『海辺のカフカ』の世界に、一人でも多くの人がふれることを願って。
2019-05-21 23:43 この記事だけ表示