遅ればせながら、『いだてん』二十三回目〜[ドラマ]
 ちなみに6月は舞台を23本観劇。『いだてん』でもときどき印象的に登場する富士山。「六月大歌舞伎」(歌舞伎座)夜の部『三谷かぶき 月光露針路日本』のラストを飾る富士山もまた美しかったのでした。
 さて、金栗四三(中村勘九郎)の免職撤回を求め、教室に立てこもった竹早女子たち。そんな彼女たちに四三は呼びかける。「腹ば減っとらんかね」。一同、ズコ。出てきたら豚鍋でもバナナでも大福でも好きなものを食わせてやる。乙女の空腹に訴えようという戦法である。しかし、足袋職人黒坂辛作の妻ちょう(佐藤真弓)は、四三先生に辞められたら困る〜と、食料と武器? をこっそり差し入れ。四三の計画、失敗。そして、シマちゃん先生(杉咲花)が女の身体はヤワじゃない! と発言したことから、村田富江(黒島結菜)とその父(板尾創路)が四三の免職撤回をかけて100メートル競走で戦うことに。負ける父。「もう一回やらせろ〜」。…大人げないなあ。結局6本走って全部娘の勝ち!
 嘉納治五郎先生(役所広司)は神宮競技場の計画を着々と進め、若き日の志ん生=孝蔵(森山未來)は人生で初めて夜逃げ。…初めてということは、二度目もあるのだろうか? そんな折。
 大正12年(1923年)9月1日。
 その日、四三は治五郎先生とシマちゃん先生と三人で神宮競技場を見に行くことにしていた。しかし、四三はシマちゃん先生に伝え忘れており、シマちゃん先生は浅草オペラ『お蝶夫人』を観るため、正午に浅草十二階で教え子と待ち合わせ。四三と治五郎先生は神宮へ。東京にオリンピックを招致し、愛する柔道を世界中に広めるためには150歳まで生きないと追いつかない! そのころには地球と火星とで交信できているかもしれないから、火星人にも柔道を叩きこまないといけない! と、神宮の空を見上げ、おーいおーいと叫んで火星との交信を試みる治五郎先生。…いや、スケールの大きな人はときに不思議ちゃんでもあり。
 そして、11時58分。――関東大震災。
 …揺れる浅草十二階の模型。
 東京中の酒を飲まないと! 酒屋に駆けつけ酒をあおる孝蔵。いや、酒飲みは発想が違う。酒飲みすぎて自分がふらふらしてるんだか、地面が揺れてるんだからわからねえや! …この人もまた、スケール大の不思議ちゃんなり。そして、東京の被害を語り出す。
 訛りゆえ、日本人であることを自警団に疑われる四三を救ったのは富江の父だった。四三は浅草の空を見上げる。…十二階が、八階のところで折れている。
 ――シマちゃん先生。
 探しに来たシマちゃんの夫増野(柄本佑)は泣く。今朝、初めて文句を言ってしまった。ご飯が固いと文句を言ってしまった。あんなこと、言わなければよかった…と。
 酒を飲むことをたしなめる妻おりん(夏帆)に向かい、「こんなときだから飲む」と言う孝蔵。酒飲みってホントこういうこと言いますよね…。亡くなった伯父も、アル中だった時分、飲酒について意見したら言ってました。「飲まなきゃやってられないときもある」と。
 震災噺の高座の後で、被災したおばあちゃんの写真を取り出す五りん(神木隆之介)。そこに写っているのは、シマちゃん。ということは、五りんは、シマちゃんの孫。
 私は、母方の祖母、愛子さんから関東大震災の話を聞いたことがある。大正6年(1917年)生まれの愛子さんは、銀行の支店長だった父に連れられ横浜、下関と日本中を転々としていたけれども、その時分は地元関西に落ち着いていた。9月1日は小学校の二学期の始業式だった。お昼時、学校で起きたことをお母さんに話していた。そしたら、揺れた。まさか、東京でそんな大きな地震が起きているとは思わなかった…と。
地震の話は笑いに持って行けない…とぼやく志ん生(ビートたけし)の嘆きはそのまま、作者の思いでもあろう。
 『いだてん紀行』でもやっていましたが、昨年、浅草の工事現場から十二階の遺構が出てきて、「赤レンガ、持ってっていいって〜」とツイッターで拡散されていて。忙しいのもあったし、何となく、積極的に駆けつける気が起きなかったんですよね…。この回を観て、自分の中で腑に落ちた。
2019-06-30 19:44 この記事だけ表示