遅ればせながら、『いだてん』二十四回目〜[ドラマ]
 第一部ラストの回『種まく人』! 第二部が始まる前に何とか“いだてん”して追いついた〜。
 ――大変なのは、関東大震災の後だった。焼け野原となった東京の街。必死に生きる人々。
 …思う。天災も、戦争も、人の生活を変えてしまう。天災は、人の力でなくすことはできない。防ぎようを何とか考えるしかない。けれども、戦争は、人の力で防ぎ得る。
 嘉納治五郎先生(役所広司)は建設中の神宮競技場を避難所として提供。そして依然行方不明のシマちゃん(杉咲花)を四三(中村勘九郎)は探していた。家族、さすがに心配しているか…と思い、熊本に帰郷する四三。オリンピック周期と同じ、四年ぶりに。そんな四三を義母幾江(大竹しのぶ)が一喝!
「なーし帰ってきた!」
 妻スヤ(綾瀬はるか)が出産のときには帰って来なかったのに。東京が一番大変なときに帰ってくる男は、熊本が大変な時にはきっと熊本を捨てる意気地なしたい!
仲裁を促され、何となく大声で叫んでみる兄実次(中村獅童)。
「逆らわずして勝つ!」
 何も考えんととりあえず口から出たその言葉に、悟る四三。「そもそも人間は無力たい」そうと決まったら、早速東京へ! そういうときの決断はさすが“いだてん”。幾江は言う。“いだてん”とはそもそも、人々のために走って食い物を集めて走った神様ばい。そして東京に大量の援助物資を送る幾江。豪気。その物資を背負って東京の街を走るいだてん金栗四三。
 寄席はいつから開くのか…と孝蔵が思いきや、もう焼け跡でやっていた。…東日本大震災のときも、舞台をやるべきかやらざるべきか、議論になりましたが。まだ余震が多発していて、正直、日常生活にまだまだ不安があった時分、日本橋三越の三越劇場に若尾文子主演の舞台を観に行った。さすがにちらほら空席がある。しかし。いざ開演となったとき、「前の方の空いている席、きっと来られない人の分だよね〜」とばかりに、後ろからうわあーっと押し寄せる人々。ほとんどが高齢の方。少しでも前で若尾文子を観たい! そのパワーに圧倒されて、思った。どんな状況でも、舞台を観たい人はいる…と。「復興節」を早速作ってみんなで歌っていたのだって、そんな心の表れのような。ちなみに、日本橋三越はその少し前に耐震工事をしていたため、東日本大震災のときも、舞台のセットから花瓶一つ落ちなかったそうな。
 清さん(峯田和伸)小梅(橋本愛)夫婦のいる神宮のバラックで噺をする孝蔵。夜ともなれば、そこら中からすすり泣きが聞こえる。昼は気が張っているけれども、夜ともなれば、つらくて、涙してしまう…。笑っても泣いてもいいじゃねえかっていう落語をやってほしいと、孝蔵に語る清さん。
 大震災から一カ月。治五郎先生は、こんなときだからこそ! と、四三発案の復興運動会をみんなに提案する。スポーツマンは、スポーツによる復興を! やってきたその日。楽しく盛り上がる人々。――その姿に、思う。英語の”play”とは実に幅広く用いられる言葉である。遊びも”play”。 楽器の演奏も”play”。スポーツだって、”play tennis”とか”play basketball”と言う。“上演する”、“演じる”、そして“芝居”そのものも”play”。生きていく中で、人が集まり、楽しみや喜び、悲しみを分かち合うことの大切さ。そんな場の大切さ。
 フィギュアスケート、そして、『いだてん』について書くようになって、気づいた。みんな、よく観てるんだな…と。もちろん私は舞台評論家である。多くの人に少しでも多くの舞台を観てほしいと強く願っている。しかし、劇場だとなかなかすぐには足を運べない事情があることもわかる。公演中の舞台人が、同時期に公演している他の舞台を観に行くのは日程的に難しかったり、とか。でも、テレビで放映されているものなら、録画して、自分の好きな時間に観ることができる。…ああ、この人も羽生結弦選手、観てるんだな…とか、…この人は『いだてん』を毎週楽しみにしているんだな…とか、接点がますます増えて、多くの舞台人とさらに心のやりとりがしやすくなったな…と感じる今日この頃。
 そんな場としての、『いだてん』。マラソンなら、ここで折り返し地点。第二部も盛り上がって応援だ〜!
2019-06-30 19:50 この記事だけ表示