『いだてん』二十七回目〜[ドラマ]
 今宵も18時からBSプレミアム&20時からNHK総合で視聴〜。二回観てしみじみかみしめました。
 志ん生(ビートたけし)の思い出話。師匠の着物を質に入れて破門になった孝蔵(森山未來)、長男誕生の際に産婆に払うお金もない。
 一方、バー・ローズのママ(薬師丸ひろ子)に「30歳までしか生きられない」と占われ、次のオリンピックまで生きられない…とますます生き急ぐまーちゃんこと田畑政治(阿部サダヲ)。
 そして、“いだてん”こと金栗四三(中村勘九郎)は38歳。長男正明(演じるは、四三の幼少期を演じた久野倫太郎!)を連れて上京してきた兄の実次(中村獅童)と再会、日本橋で語り合う――橋のたもとに今もまだ残る日本橋野村ビル(設計:安井武雄)は、このころまだ建ったばかり。熊本に帰ってきてほしい、みんな待っている…と語る兄。
 まーちゃんは次のロサンゼルス・オリンピックに向けて目標を掲げる! が、字が汚くて誰も読めない(笑←と書きたいところですが、あひるが観ながら書いたメモの字、自分でも読めないぞ〜!)。監督に推されたのは鶴さんこと松澤一鶴(皆川猿時)。え、みんな俺のこと何だと思ってたの…? とショックを受けるまーちゃんに、「応援団長」「計測員」と率直な意見が。鶴さんがまーちゃんを、監督を監督する総監督に据えて事なきを得る。世界水準のプールを建設したいと直談判しに来たまーちゃんに、岸清一(岩松了)がポケットマネーを提供。よ、太っ腹! まーちゃんと岸さん、認め合う者同士のスリリングな毒舌の応酬。
 「アニキトク」の電報に、故郷へ帰るも、父のとき同様、最期に間に合わなかった四三。実次に言いたい放題だった養母幾江(大竹しのぶ)が、…もう張り合いがない…と見せる乾いた心の表現に、その哀しみの深さを知る。――甦る兄の思い出。思えば、熱苦しさに愛嬌のあるお兄さんでした。弟の才能を信じ、尽くし続けた兄。この人がずっと支えていなければ、いだてん金栗四三は走り続けてはいられなかった。劇場でも思うのだけれども、役者中村獅童は、観る側が安心して心を委ねられる包容力をもった人である。実次役で、その包容力を存分に発揮する姿を観られたのがうれしく。
 家でゴロゴロした果て、納豆売りに転身してみるも、うまく行かない孝蔵。表へ飛び出して行ってしまった妻への思いを率直に語るも、妻、聞いてたよ! そんな彼に、妻(夏帆)は寄席へ出てほしいと頼む。…孝蔵の、人と異なる才能にあふれているからこそ、不器用で生きづらい、そんなせつなさが、何だかだんだん心にしみてきて。
 そのころ、東京市長の永田秀次郎(イッセー尾形)は、皇紀2600年にあたる昭和15年(1940年)に東京にオリンピックを呼ぶことを提案される。「ピックピックピックね」、“オリンピック”が上手く言えない永田の言い間違えや、いとリズミカル。
 ロサンゼルス・オリンピックの前哨戦として「日米対抗戦」を思いついたまーちゃん。日本新記録を出した前畑秀子(上白石萌歌)に興奮し、勢い余って女子ロッカーへ。暴言を吐くまーちゃんの頬を、鶴さんがペチ。いいコンビなり。そして彼はふと気づく。――30歳までしか生きられないって言われたけど、俺もう32歳じゃん! 忙しくて歳数えるの忘れてたよ! って、何だそりゃ(笑)。早死にして妻子を悲しませたくないから結婚もするまいと思ってたけど、そうと決まれば結婚だ! すばらしい変わり身の早さ(ほめてます)。
 四三は帰郷を告げに、嘉納治五郎先生(役所広司)の元へ。そこで知った真実。父も、兄も、死ぬ前に、嘉納先生に会ったと嘘をついた…と思っていた。けれども、兄は実際、嘉納先生に会っていた。会って、豪快に投げられて、弟が世話になったことのお礼を述べていた。――改めて心にしみる、兄の想い。東京にオリンピックを呼ぶ――と聞いて、四三の心が逸らないわけがない。けれども。
 ここで、金栗四三と田畑政治、主人公同士が初めて二人きりに。三度のオリンピック、一番の思い出は? と、まーちゃん。振り返って、紅茶と甘いお菓子がおいしかったと言う四三に、まーちゃんは「聞くんじゃなかった」と。――それは、四三にしかわからない感慨である。ストックホルム・オリンピック、暑さで意識を失った彼の口に含ませられた、紅茶とお菓子の味。けれども、金栗四三の物語を観ていた私たちは、その思いを分かち合えるところがある――そんな回に、ストックホルム・オリンピック、人生のあの分岐点で彼を惑わせた幼少期の四三を演じた久野倫太郎が顔を見せている、その妙。――まーちゃんには、今はまだわからない。彼のオリンピックの物語は、これからである。
 「聞くんじゃなかった」と毒舌を吐きつつも、初めて世界で闘った日本人、金栗四三のことを認めないわけにはいかない…と、まーちゃんが独り言で珍しく素直な敬意を表明。と思いきや、四三はまだ去ってはいなかった――というオチと、先ほどの孝蔵の妻への想いの吐露のシーンとが、今回のタイトルともなっている落語の『替り目』の内容とも、そしてまた、金栗四三から田畑政治へという主役交代の替り目とも見事重なって。粋な限り。
2019-07-14 23:47 この記事だけ表示