一人と、二人〜「NHK杯2019」アイスダンス・フリーダンスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロンの演技[フィギュアスケート]
 ――直前練習で、二人ですーっとまっすぐ滑っている。…ただそれだけで、二人は、どうしてあんなにも、互いでなくてはならない、そんな、コンビとしての唯一無二感を感じさせるのだろう…。見つめ合って立っているだけで、二人の世界。
 詩の言葉を、踊る――氷上のコンテンポラリー・ダンス。二人の肢体は一つになり、そしてまた分かれ――その様に、プラトンの『饗宴』で言及されるアリストパネスによるエロス(ギリシャ神話の愛の神)についての演説――人間はかつては二体一身であったのが、ゼウスによって半分に切られ、互いにその半身を求めるようになった――を思い出さずにはいられなかった。
 氷上の演技に見入る。――芸術上、誰かと、こんな風にコンビを組めたら――と渇望する。私の憧れをいつも引きつけてやまないのは、オペラ『エレクトラ』『ばらの騎士』『アラベッラ』等を生んだ、作曲家リヒャルト・シュトラウス&詩人・劇作家フーゴ・フォン・ホフマンスタールのコンビである。けれども。私は評論家である。誰か一人の相手とだけコンビを組むようなことはあってはならない。誰か一人の人間の美しさだけを書き表しているようでは、相手の世界も、自分の世界も、狭い範囲に限られてしまう。
 だから、願う。――その瞬間、私の目の前で美を体現している相手と、その都度、最高のコンビを組みたいと――でき得ることなら、パパダキス&シゼロンのように。欲張りな話だけれども!
 一人で、できること。一人では、できないこと。二人で、できること――。
 それをこれからも限りなく追求していくことを誓って。
 観ていて、途中で、…ああ、これ、もう一回、最初から観たい! くりかえし観たい! と心に切望が湧き上がる、そんな二人の演技だった。
2019-11-26 23:10 この記事だけ表示