2019年あひる心のベスト発表
 今年のテーマは“ゆるす”。心をゆるす。身体をゆるす。罪をゆるす。過去をゆるす。自分をゆるす。ゆるしをゆだねる――to err is human, to forgive divine。

☆『ラブ・ネバー・ダイ』

☆三月大歌舞伎『弁天娘女男白浪』

☆愛のレキシアター『ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ』

☆フィギュアスケーター羽生結弦の演技
 「世界選手権2019」、「スケートカナダ2019」、「NHK杯2019」、「グランプリファイナル2019」、「全日本選手権2019」
 芸術上の最高傑作は「グランプリファイナル2019」フリープログラムの「Origin」。
 「全日本選手権2019」については時間の都合で年内に書き上げることができませんでしたが(年明けに!)、…ここから新たなスタートなんだな…と思った次第。

☆串田和美演出・潤色・美術・出演『K.テンペスト2019』

☆『家族のはなしPART1』主演の草g剛

☆『エリザベート』主演の花總まり
 ミスター“エリザベート”の如く、彼女のエリザベートを、そしてプロダクション全体を見守るトート役の井上芳雄。レジェンド花總まりに対し、自らの個性でエリザベート役に挑んでいったダブルキャストの愛希れいか。深い諦念にありながらもなお妻エリザベートに深い愛を捧げ続ける皇帝フランツ・ヨーゼフ役の田代万里生(ほとんど諦めきっていて、それでも、諦めきれずに妻の愛を求めて歌う「夜のボート」…!)。その他キャストの力演、そしてもちろんスタッフの尽力あったればこそ可能となった舞台だと思う。

☆『人形の家 Part2』『カリギュラ』演出の栗山民也

☆宝塚月組『I AM FROM AUSTRIA−故郷は甘き調べ−』

☆『タージマハルの衛兵』

☆『常陸坊海尊』
 この作品は、年明け1月、兵庫・岩手・新潟にて公演が行なわれます!

他に
・『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』主演の井上芳雄
・『海辺のカフカ』『神の子どもたちはみな踊る』の木場勝己
・四代目市川猿之助演出・主演 スーパー歌舞伎U『新版 オグリ』
 …まだまだ行ける作品だと思う!
・NODA・MAP『Q: A Night At The Kabuki』
 ゲネプロと、それから約一か月後に観劇した本番の舞台とで、ラスト・シーンの意味合いがまるで変わってしまっていて、その結果、作品が私の中でうまく像を結ばない。今年接した新作戯曲のなかでもっとも美しい日本語のセリフのいくつかが味わえた作品だと思うものだけれども、…なセリフの連呼もあり…。『ロミオとジュリエット』の悲劇を超えて、あくまで幸せな物語を生きようとあがき続けるヒロイン松たか子の、ふてぶてしいまでに前向きで逞しい生命力に、爽快な魅力を感じた。ときに甘美にも思える不幸に酔って気力体力を奪われるより、今この目の前にある現実をさらなる幸せへとどうつなげていくか。その様がたとえ年齢を重ねた女のふてぶてしさに映ろうとも、私自身、私固有の幸せな物語を生き抜く所存。

 2019年のインスピレーション大賞は、フィギュアスケーター羽生結弦の演技と、長塚圭史演出、白石加代子主演『常陸坊海尊』に。
 羽生結弦。
 彼は、“難しい入りからのジャンプ”ということを試みていて――例えば、“ツイズル〜トリプルアクセル〜ツイズル”等――、それが美の表現ともなっている。自分も最近、文章の入りということを今まで以上に意識するようになった。書きたいことのコアがあって、そこにたどり着くまでに、どこから入るとするっと気持ちよく書けるのか、この入りじゃうまく行かないな…等。そんな発見もおもしろく。それにしても、それまで思っていた以上に気骨があって心優しいスケーターなんだな…という発見があった「NHK杯」から、一回の演技ごとの人間的成長には目を瞠るものがあって、…一緒に走り続けていくためにも、自分もますますきちんとした人間になっていかなくてはいけないな…と。
 長塚圭史演出、白石加代子主演『常陸坊海尊』。
 年末、一連の文章を書きながら、夜の散歩の際、近所の神社に祈りを捧げていた――そうすると、あの箇所は変えた方がよいとか、ここは削った方がいいとか、いろいろとアイディアが浮かぶのである。ある晩、…書いている際の気持ちよさを大切にする…という思いが浮かんだ――その「気持ちよさ」は、「全日本選手権」のショートで羽生結弦が観る者をいざなったあの世界にたゆたう感覚につながっていた――人の美の感覚とは、この世に生まれ出ずる前の記憶とどこかつながっているのかもしれない。そして、『常陸坊海尊』について書きながら、…私は、この文章を書くために生まれてきた、この文章を書くために今この瞬間までの人生があった…との確信が身体を満たして、それが、この上もなく気持ちよかった…。そんな文章を書いていけるように、これからも精進を重ねていきたい。目の前で素晴らしい演技を見せてくれるすべての人々への深い感謝のためにも、さらにいい評論家へと成長していきたい、そんな思いで今、いっぱいである。

 …観られなかった舞台、いっぱいあったな…と。それが残念。
 来年は時間の使い方をさらに工夫してますます真摯に歩んでいきたいと思います。出逢えた、縁のあった、すべての皆様に感謝して。本年も本当にありがとうございました。皆様の幸せと健康を心から祈っています。それでは皆様、よいお年を!
2019-12-31 16:27 この記事だけ表示