宝塚雪組公演『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』で苦手克服[宝塚]
 2月21日の初日前の通し舞台稽古を見学した後、あひるは意を決して近所のレンタルビデオ店に向かった。『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』の原作映画を借りるために。――人生、観たことがありませんでした。ギャング映画だから。バイオレンス、苦手。舞台でも、映像でも、そういうシーンになると、…本当は撃たれてない撃たれてない刺されてない刺されてない斬られてない斬られてないこれはお芝居だから実際には死んでない死んでない怪我してない怪我してない血は流れてない血は流れてない…と心の中でいちいち激しく繰り返しながら観ることになり非常に疲れるのである。思いもよらぬ銃殺シーンに、静まり返った劇場の中で、あひるの「ひいっっっ…」という声が響き渡ったことも。いかに名高かろうと、宝塚公演の原作であろうと、観る気になれないでいた。それが。
 雪組の舞台が凄かった。2月中旬に退団を発表したトップスター望海風斗と、トップ娘役真彩希帆と。高い歌唱力で知られる二人が、声色を縦横無尽に操り幼少期から壮年期まで演じる、ほろ苦い恋。物語を豊かに彩る雪組生の充実ぶり。そして、現在と回想とが重層的に交錯する物語を軽快にテンポよく華やかにショーアップして展開していく座付き作家小池修一郎の作・演出の手腕。これだけの舞台を生んだ原作映画、やはり観なくては! ということで、決意を固めて完全版をレンタルしてきたのですが。
 開始数分。…だめだ。もうこれ以上は無理…。視聴断念。少々ネタバレになりますが、最初の銃殺は何とか耐え。しかし、その次の、顔中が血まみれの拷問シーンで力尽き…。
 一週間後。本番の舞台を観劇。…この作品についてきちんと言語化したい、その上ではやはり、映画版をどうしても観なくてはならない! 劇場から帰宅したあひるは、借りたままだったDVDをもう一度手に取った。そして、遂に最後まで観た。こうして一つ苦手を克服。観てよかった。ああいう映画だと思っていなかった。…正直、今でも暴力的なシーンが頭の中でぐるぐるぐるぐる回っています(苦笑)。しかし、あの映画作品の中に、宝塚歌劇にふさわしいロマンティックな美学を見出し、それを見事抜き出して舞台化した小池修一郎は凄いな…と。今作が、宝塚歌劇団理事の立場で手がける最後の作品とのこと。映画版と宝塚版との違いの中に、彼がこれまでの43年間、宝塚で見てきた夢、そして、これからも見続けるであろう夢がうかがえて。ダビデの星――六芒星――に向かって心情を絶唱する望海風斗のヌードルス。大階段をほとんど埋め尽くす巨大なスカートの衣装で華やかなブロードウェイのショーの芯を務める真彩希帆のデボラ。――夢。宝塚歌劇という、夢。
2020-03-09 23:48 この記事だけ表示