『フェードル』の大竹しのぶ!
 13時の部観劇(シアターコクーン)。ヒロイン・フェードルは、禁じられた宿命的な恋に身を焦がし、己の心の迷宮へと彷徨い込んでゆく。心の内の微細な襞一つ一つ、そのすべてに入念に分け入っていくようにして、人間の感じ得る感情を限界まで味わい尽くそうとする、そんな大竹しのぶの演技に、――生きている! との心の高まりを覚え、思わず立ち上がって赤い布か何か――自分のこの肉体の中にも流れる熱い血に似た色の何か――を激しく振り回しながら言葉にならない声を発したい衝動に駆られた。そうして私は大竹フェードルと共に生を謳歌した。それは、そのとき劇場空間で同じ時間を分け合っていなければ体験し得なかった確かな生の瞬間だった――大竹しのぶと同じ時代に生きる幸せを思う。恋は人を異なる地平へと連れてゆく。自分でも知らなかった自分に出逢わせてくれる。この世にはもっと“恋”が必要だと、私は思う。
2021-01-20 23:20 この記事だけ表示