継承〜宝塚月組・珠城りょう退団[宝塚]
 よく頑張った!
 その一言を、今は贈りたい。
 珠城りょうのトップ時代、月組には、『All for One』、『カンパニー−努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)−』、『BADDY−悪党(ヤツ)は月からやって来る−』、そして『桜嵐記』と、バラエティに富んだ傑作が生まれた。一番心に残る代表作としては、サラリーマンの役どころをまっすぐな魅力で見せた『カンパニー』を挙げたい。「愛している」という代わりに、「月がきれいですね」と言う、日本の男。その無骨な魅力は、愛する女に甘い言葉を与えることのない男、愛を「愛」以外の言葉で表現する男、『桜嵐記』で演じた楠木正行にもつながって。
 『Dream Chaser』のラストで、珠城りょうは、飾りのない黒燕尾服姿で踊り続ける。男役陣を率いて。美園さくらとのデュエットダンス。次いで、月城かなとら、後を継ぐ者たちにエールを送るように踊り、そして、ソロ。その姿に、私は、元月組トップスター霧矢大夢の黒燕尾服の踊りをはっきりと思い出したのである。――継承されていた、と思った。継承されていく、と思った。そのことが、心からうれしかった。
 愛希れいか、美園さくら、二人の超個性的な娘役を相手にして、本当によく頑張った!
 宝塚大劇場の千秋楽のライブ配信を観て、…このまま退団してしまうのでは悲しい…
と思った。彼女が積み重ねてきたことを自分自身で信じられなくなっているのが淋しかった。しかし。珠城りょうは、宝塚への愛ゆえに、踏ん張った。『All for One』の戯曲を自分自身で読み解いたときのように、その愛は舞台であざやかにはじけた。だからこそ、座付き作家上田久美子が去り行く彼女に贈った『桜嵐記』は、傑作として人々の心に残り続ける。
 月組を守ってくれて、ありがとう。
 今日一日、そして人生の第二幕の幸せを、心から祈っています。
2021-08-15 01:27 この記事だけ表示