藤本真由
(舞台評論家・ふじもとまゆ)
1972年生まれ。
東京大学法学部卒業後、新潮社に入社。写真週刊誌「FOCUS」の記者として、主に演劇・芸能分野の取材に携わる。
2001年退社し、フリーに。演劇を中心に国内はもとより海外の公演もインタビュー・取材を手がける。
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宙組宝塚大劇場公演『NEVER SAY GOODBYE−ある愛の軌跡−』千秋楽ライブ配信![宝塚]
――政治とスポーツ、そして芸術。ナチス・ドイツ主導の1936年のベルリン・オリンピックに対抗してバルセロナで開催されるはずだった人民オリンピックは、開会予定前日にリハーサルまで行ないながら、スペイン内戦勃発のため中止となり、選手の中には義勇軍に加わる者も。闘牛をあきらめ祖国のための戦いに参加するマタドールたち。怪しげな薬を注射するソビエト連邦文化省諜報員。己のカメラでその戦いの様子を世界に伝えようとするフォトグラファー(真風涼帆)と、己の言葉の力で戦いを支えようとする劇作家(潤花)、そして二人の恋。2022年、奇しくも再演されることとなったこの作品に、宙組生が実に真摯に取り組む姿に心打たれる。作・演出の小池修一郎の、戦いを描きながらも宝塚らしい華やかな場面をきっちり入れ込んで盛り上げる手腕。『ジキル&ハイド』『THE SCARLET PIMPERNEL』のフランク・ワイルドホーンがオリジナルで書き下ろした壮大な楽曲の数々を、宙組トップスター真風涼帆がソフトな甘い歌声で歌い上げる――スーツ、革ジャン、騎士風、スパニッシュ、どんなコスチュームをまとってもかっこよくしかないのは、人としてのかっこよさに起因するものなのだろうな…と。組一丸となってのエネルギッシュな舞台に、今を生き抜く力を大いにもらった思い!
2022-03-14 23:48 この記事だけ表示