月組宝塚大劇場公演『グレート・ギャツビー』千秋楽ライブ配信![宝塚]
 作り手が、自身の人生を観る者と真摯に分かち合う作品だったから、私自身、観ていて自然と自分の人生を振り返っていた。…多くの人に赦されて、ここまで生きてきたな…と。終盤の墓場の場面で主人公ギャツビーの父親(英真なおき)が登場したあたりから最後まで、嗚咽が止まらなかった。そうして、1991年の雪組初演(その際のタイトルは『華麗なるギャツビー』。それが、F・スコット・フィッツジェラルドの小説『グレート・ギャツビー』の、世界初のミュージカル化だった)を観たときには若さゆえわからなかったラストの演出を、心の中で深くかみしめながら観ていた――亡くなった祖母と、母と一緒に観ていた。その日、着ていたワンピースまで覚えている――。
 ジャズ・エイジのアメリカ。裏社会に生きる男。そして、愛。得意中の得意のテーマを扱って、演出家・小池修一郎の魂が生き生きと輝く。華やかなシーンへの導入とその盛り上げ方の巧いこと! 主人公ギャツビーに扮した月組トップスター月城かなとは、脚本を読み解き、自身のしっかりとした解釈を提示することのできる男役である。「私がギャツビーだ」の登場から場をさらうかっこよさ。ニック(風間柚乃)に過去を騙る際の語りの巧みさ。当たり役! そして、小説では語り手であるニックを演じる風間が、金と時間を持て余した上流階級と自分とが異なる存在であることを素直に体現していることもあって、観ていてすっと物語に引き込まれる。ヒロイン・デイジー(海乃美月)のキャラクターについては、私自身、いまだに解釈に悩むところがあり、この機会に再考したく。デイジーの夫トム(鳳月杏)は、ニックとも上手く対立軸を作れるとおもしろいような。
 ジョージ・ウィルソン役の光月るうの二幕のソロには、心がちぎれそうだった…。そこからの幻想のダンス・シーンの迫力。暗黒街の男マイヤー・ウルフシェイム役の輝月ゆうまの貫録。役が少ない作品ながら、芸達者な月組生たちがさまざまな役柄で活躍するのを観るのも楽しく。