藤本真由
(舞台評論家・ふじもとまゆ)
1972年生まれ。
東京大学法学部卒業後、新潮社に入社。写真週刊誌「FOCUS」の記者として、主に演劇・芸能分野の取材に携わる。
2001年退社し、フリーに。演劇を中心に国内はもとより海外の公演もインタビュー・取材を手がける。
ご意見・お問い合わせ等は
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花組梅田芸術劇場メインホール公演『TOP HAT』ライブ配信[宝塚]
フレッド・アステア&ジンジャー・ロジャースの同名映画をミュージカル化した『TOP HAT』の、宝塚での二度目の上演(2015年宙組により日本初演)。ブロードウェイのスターダンサー、ジェリー(柚香光)とファッション・モデルのデイル(星風まどか)が、誤解を乗り越え結ばれるまでを描く、明るく楽しいダンス・ミュージカルである。今回、舞台全体がテンポよく弾み、ジェリーとデイルのカップルと、ジェリーをロンドン公演に招聘したプロデューサーのホレス(水美舞斗)とホレスの妻でデイルの友人のマッジ(音くり寿)のカップルとの連関もよく描き出されていた。
そもそもマッジは、デイルをジェリーと引き合わせようとしていた。だが、デイルがジェリーのことをマッジの夫ホレスと勘違いしてしまったことから騒動が起きる。そして、結婚している夫、妻というものがどんな風か想像がついていないところがあるからこそ、デイルの混乱はますます深まってゆく――二幕の、ジェリーとマッジと一緒にいる場面で、マッジからジェリーを勧められるデイルの困惑と来たら! さまざまな変装劇を見せるホレスの執事ベイツ(輝月ゆうま)の活躍もあり、誤解は解け、ジェリーとデイルは晴れて結婚に踏み切る。その直後に、ホレスとマッジ夫婦が歌う「Outside of That, I Love You」が置かれているという流れが、今回、唸るほど絶妙だと感じた。「Outside of That, I Love You」は、互いに、…あなたのこういうところが嫌い、嫌い…と指摘し合って、「それ以外はアイ・ラブ・ユー」と締める、軽妙なナンバーである。すなわち、このナンバーを境に<結婚前/結婚後>がくっきり描き出されるという趣向。でもまあ、マッジがホレスに対する不満をあれこれ言いながらもデイルに結婚を勧めているところからしても、結婚生活に総じて満足していそうな二人ではある。不満をピシピシッとシャープに歌い上げて行く音くり寿のマッジを、水美舞斗のホレスが…弱っちゃうな…という感じで受け止めていたのが◎。
ダンスもコメディも大いに行ける花組トップコンビ、柚香光&星風まどかが、ジェリーとデイルの恋の紆余曲折をロマンティックなムードたっぷりに描き出して。二人の着こなし、そして衣装さばきのスタイリッシュさに目を瞠る。そして、最終的にジェリーとデイルのキューピッドとなるベイツ役輝月ゆうまの、しれっとした表情のキュートさが心に残る。
(4月3日視聴)
そもそもマッジは、デイルをジェリーと引き合わせようとしていた。だが、デイルがジェリーのことをマッジの夫ホレスと勘違いしてしまったことから騒動が起きる。そして、結婚している夫、妻というものがどんな風か想像がついていないところがあるからこそ、デイルの混乱はますます深まってゆく――二幕の、ジェリーとマッジと一緒にいる場面で、マッジからジェリーを勧められるデイルの困惑と来たら! さまざまな変装劇を見せるホレスの執事ベイツ(輝月ゆうま)の活躍もあり、誤解は解け、ジェリーとデイルは晴れて結婚に踏み切る。その直後に、ホレスとマッジ夫婦が歌う「Outside of That, I Love You」が置かれているという流れが、今回、唸るほど絶妙だと感じた。「Outside of That, I Love You」は、互いに、…あなたのこういうところが嫌い、嫌い…と指摘し合って、「それ以外はアイ・ラブ・ユー」と締める、軽妙なナンバーである。すなわち、このナンバーを境に<結婚前/結婚後>がくっきり描き出されるという趣向。でもまあ、マッジがホレスに対する不満をあれこれ言いながらもデイルに結婚を勧めているところからしても、結婚生活に総じて満足していそうな二人ではある。不満をピシピシッとシャープに歌い上げて行く音くり寿のマッジを、水美舞斗のホレスが…弱っちゃうな…という感じで受け止めていたのが◎。
ダンスもコメディも大いに行ける花組トップコンビ、柚香光&星風まどかが、ジェリーとデイルの恋の紆余曲折をロマンティックなムードたっぷりに描き出して。二人の着こなし、そして衣装さばきのスタイリッシュさに目を瞠る。そして、最終的にジェリーとデイルのキューピッドとなるベイツ役輝月ゆうまの、しれっとした表情のキュートさが心に残る。
(4月3日視聴)