『桜の園』!
 10日13時の部観劇(PARCO劇場)。アントン・チェーホフの戯曲(英語版=サイモン・スティーヴンス、翻訳=広田敦郎)を、ショーン・ホームズの演出で。こんなにもprovocativeな作品だったんだ……と思い、でも、だからこその日本における受容なのだ……と改めて気づかされ――日本人にとっては、第二次世界大戦の敗戦及びその後の混乱と重ね合わせ得るところの多い作品だと思う――。価値観の激しい変化への個々の対応の違い。ある一つのものが、人によっては異なる思いの象徴、反映となっていること。
 さまざまな記憶が胸に甦り、ときどき、立ち上がって言葉にならない叫びをあげたい衝動に駆られた――甦ってくるのは、土地や家屋にまつわる記憶が多かった。そうした個人的な記憶の背景に、戦後日本の土地政策やいわゆる「土地神話」があることをも感じた。――強い風に思わず身体がくるっと回ってしまい、もともと見ていた方角に再び視線を戻すと、……そこにはもはや誰もいなかったような、そんな感覚をも味わった。多くの人と分かち合いたい、そして、人々の中からどんな記憶が甦ったか分かち合いたい、そんな舞台。公演は29日まで。その後、地方公演あり。
 ちなみに。インタビュー(https://spice.eplus.jp/articles/316190)でおうかがいしたホームズさんの戯曲の読みをまず応用したのは、3月のKバレエカンパニー公演で聴いたチャイコフスキーの『白鳥の湖』(http://daisy.stablo.jp/article/498706737.html?1691762637)。
 余談ですが。宝塚星組『JAGUAR BEAT−ジャガービート−』のクリスタルバードがもがれた片翼は、クリスタルバード以外が持っていると不幸になるという設定だそうな(私の解釈ではクリスタルバードはミューズ、インスピレーション)&クライマックスの第23場で流れる曲は、宝塚オリジナルの歌詞がついていますが、原曲は春畑道哉の「JAGUAR」、日本のプロ野球中継で長らく使用されているインストゥルメンタル曲です。