藤本真由
(舞台評論家・ふじもとまゆ)
1972年生まれ。
東京大学法学部卒業後、新潮社に入社。写真週刊誌「FOCUS」の記者として、主に演劇・芸能分野の取材に携わる。
2001年退社し、フリーに。演劇を中心に国内はもとより海外の公演もインタビュー・取材を手がける。
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令和6年3月文楽入門公演 「BUNRAKU 1st SESSION」[文楽]
16時の部観劇(有楽町よみうりホール)。紹介映像、ナビゲーター(本日はいとうせいこう)と文楽技芸員(本日は吉田簑紫郎)による解説と、アニメーション映像を背景美術に用いた『曾根崎心中』<天神森の段>という構成。いつもは顔を出している人形遣いの主遣いが頭巾をかぶっていたり、照明も通常より暗めの印象。<天神森の段>だけなのでいきなりクライマックスの心中場面からの上演なれど、三味線が鳴り、「この世の名残、夜も名残。」と太夫が語り出すと一気に引き込まれ――詐欺に遭って友人からお金を騙し取られた上に、騙りの汚名まで着せられ辱められたことが、主人公徳兵衛が恋人のお初と心中に至る大きな要因となる物語だった……と改めて。文楽では通常ないカーテンコールがあり、死んだ徳兵衛とお初(いずれも人形ですが)が甦って手を振ったりして去っていくのが新鮮。村野藤吾設計の読売会館の7階にある有楽町よみうりホールが実に村野藤吾らしい曲線、曲面にあふれていて、かつ非常に昭和な空間だったのもおもしろく。公演は29日まで。