藤本真由
(舞台評論家・ふじもとまゆ)
1972年生まれ。
東京大学法学部卒業後、新潮社に入社。写真週刊誌「FOCUS」の記者として、主に演劇・芸能分野の取材に携わる。
2001年退社し、フリーに。演劇を中心に国内はもとより海外の公演もインタビュー・取材を手がける。
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月組東京宝塚劇場公演『Eternal Voice 消え残る想い』『Grande TAKARAZUKA 110!』[宝塚]
月組トップコンビ月城かなと&海乃美月の退団公演は、座付き作家の宛書の妙が味わえる芝居とレビューの二本立て。ヴィクトリア女王統治下、政治的宗教的陰謀渦巻くイギリスを舞台に、不思議な能力をもつ男女が心を通わせていく様を描く『Eternal Voice 消え残る想い』(作・演出=正塚晴彦)は、人生及び人間について示唆に富み、ぐっと引き込まれる、見応えのある作品。ときにダークな色合いなれど、人間存在に対する温かなまなざしからの笑いが織り込まれているのがいい。『Grande TAKARAZUKA 110!』(作・演出=中村一徳)は、宝塚歌劇110年の歴史と伝統をかみしめ、舞台に立つ人々の命の輝きを大切に守っていきたいとの演出家の真摯な思いを感じさせる、華やかなレビュー。どちらの作品も、座付き作家が出演者一人一人に心を寄せて創っていることがうかがえて。今日の舞台は、芝居の冒頭から月城かなとの客席に向ける思いが強く、熱く、そこに月組生たちと専科の高翔みず希、凛城きらの思いが加わって、実に熱気あふれるものだった。そして、……トップコンビって素敵だな……と思わせてくれる、月城かなと&海乃美月のパートナーシップ。