『台風23号』
 作・演出・出演=赤堀正秋。戦後最大の台風の上陸を前にした小さな海辺の町が舞台。永遠に荷物を配達し続けるかの如き配達員(森田剛)、永遠に配達されないかの如きとある荷物、微妙に食い違う会話が、ときにサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』を思わせて(別役実の『カラカラ天気と五人の紳士』を読んだのかな、とも思ったり)。最終的に不条理ならざる地点に着地するのだけれども、演出上の工夫とキャストの力演もあり、単なるいい話となることを免れている。赤堀自身が演じるかなりクセの強いタクシー運転手と秋山菜津子演じるスナックのママとの関係性についても然り――それにしても、ドラマ『不適切にもほどがある!』の校長先生役での赤堀正秋の女装、きれいでしたね。認知症とおぼしき老人を演じる佐藤B作をはじめ、演出家の意図を出演陣がよく理解して体現しており、なかでも、淡々としかしときに飄々とおかしい森田剛が非常に新鮮。海に面した、坂と階段の多い町、その家々での暮らしを想像させずにはおかないBOKETAの舞台美術も魅力的。

(10月8日13時の部、THEATER MILANO-Za)