「錦秋十月大歌舞伎」夜の部『婦系図』![歌舞伎]
 心にしとしとと降り続ける雨のように美しい舞台。
 人生の恩人である師匠酒井俊蔵(坂東彌十郎)によって芸者上がりのお蔦(坂東玉三郎)と別れさせられる主人公早瀬主税(片岡仁左衛門)。作者泉鏡花の実体験をもとに書かれた『婦系図』と言えば、「切れるの別れるのッて、そんな事は、芸者の時に云うものよ。……私にゃ死ねと云って下さい」というお蔦のセリフが有名。そのセリフが飛び出す<湯島境内>において、主税に「月を見な、時々雲も懸るだろう」というセリフがあり、鏡花の師匠である尾崎紅葉の『金色夜叉』の「来年の今月今夜のこの月を僕の涙で曇らせてみせる」という有名なセリフを思い出し。

(16時半の部、歌舞伎座)