「錦秋十月大歌舞伎」昼の部 [歌舞伎]
 その時々の己の心を映し出す鏡のような演目だな……と、名作の名作たるゆえんをかみしめた『平家女護島 俊寛』――序盤、聴いていて、俊寛たちが鬼界ヶ島に暮らす様が、ドローンか何かで撮影した映像さながらに俯瞰で見えるようだった。秋の箱根の芦ノ湖畔の美しさがパノラマの如く広がるように感じられる中で繰り広げられる『音菊曽我彩 稚児姿出世始話』。ポンポン弾むやりとりや井戸替えに従事する人々のありように、江戸の長屋の喧騒が耳から体感できて、出てくる人々がみな愛おしくなる『権三と助十 神田橋本町裏長屋』。公演は明日まで〜。

(10月25日11時の部、歌舞伎座)