こまつ座『太鼓たたいて笛ふいて』
 作家林芙美子の評伝劇の10年ぶりの再演(作・井上ひさし、演出・栗山民也)。この10年の間に森本薫の『女の一生』、有吉佐和子の『ふるあめりかに袖はぬらさじ』といった舞台作品を経験してきた林芙美子役大竹しのぶの肉体が今発する戯曲の言葉を興味深く聞き。芙美子の母キク役の高田聖子はこのところ別役実の『カラカラ天気と五人の紳士』やクシシュトフ・キェシロフスキ監督の映画シリーズの舞台化である『デカローグ8「ある過去に関する物語」』といった作品での快進撃が続いているが、歌えて動けて喜劇的表現に秀でた人だけに、初参加のこまつ座でも大いに躍動。キク役としての居方も劇世界に対して投げかけるものが大きく、今後のこまつ座への参加も期待したい。

(11月7日13時の部、紀伊國屋サザンシアター)