彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.2『マクベス』
 シリーズ芸術監督の吉田鋼太郎が演出・上演台本を担当。そして、稲荷卓央と海津義孝と共に、グランジ・ロリータみたいな衣裳(西原梨恵)をまとって魔女役で登場する(今回ヘカティの登場はなし)。ときにキュートにときに凄んで、3人で輪になって回ったり、並んでラインダンスまでしちゃうその存在感のインパクトたるや(笑)。
 タイトルロールに扮するのは藤原竜也。ダンカン殺しの後の「眠りを殺した」のセリフと、マクベス夫人(土屋太鳳)が死んだことを告げられた――その刹那、舞台の周りを取り囲む幕が一気に落ち、彼の世界が瓦解したことがわかる演出――後の「影法師」のセリフ、よかった。セリフを交わしている相手、そして観客に言葉を伝えることを大切に、舞台をもっとENJOY。
 バンクォー役の河内大和はセリフ回しもよく、ちゃっかり王座に座り、王となったマクベスとマクベス夫人が来てもなかなかどかないあたり、野心も感じさせて。たかお鷹のダンカンも何やら腹に含むところありそうな。たかおは二役で演じた門番も自由自在に軽妙でよかった。ストレートプレイのシェイクスピア作品初挑戦のマクダフ役の廣瀬友祐は(ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』の経験あり)声もよくセリフも聞きやすく、妻子を失っての天にも届こうかという嘆きが心を打つ。長身もシェイクスピア映え、ダイナミックな吉田演出映えするので、シリーズ常連化を期待。
 それにしても、王になっても自分の地位を守ることに汲々とするばかりで、民の暮らしに思いを馳せ、これをよくするとか、立派な王らしいことを一切しないマクベスの姿にあきれ。結果論ではあるけれども、結局のところ魔女たちの予言通りになっているわけで、マクベスが自分の手を汚さずに王となっていたらどうなっていたんだろう? と考えたり。

(5月10日12時半、彩の国さいたま芸術劇場大ホール)