『星の降る時』
 弱さや醜さも含めた人間の真実に向き合う強さに感嘆するイギリスのベス・スティールの2023年初演戯曲に、演出の栗山民也と日本人キャストがまっすぐに向き合う。登場人物全員が愛おしくなり、演じる役者一人一人に対し、……この人にはこんな魅力があったんだ……と発見がある舞台。誰もが人生で一度は言ったことがあるようななにげない日常の言葉を口にして美しさを現出させ、生きること、人間存在を聖なるものに感じさせる段田安則。段田と秋山菜津子が言葉を交わす場面はそっとサプライズで贈られたプレゼントのような瞬間。炭鉱があった町の話で、八十田勇一がなくなった炭鉱の名を一つ一つ挙げていくくだりも心を打つ。アントン・チェーホフの『三人姉妹』を思わせる三姉妹を演じる江口のりこ、那須凜、三浦透子も生き生き。近藤公園の上品な色っぽさ。東京公演は6月1日まで、その後、山形・兵庫・福岡・豊橋公演あり。元炭鉱町の話ということもあり、一人でも多くの九州の皆さんにも観てほしい!

(5月29日18時、パルコ劇場)