宙組東急シアターオーブ公演『ZORRO THE MUSICAL』その2[宝塚]
 宙組新トップスター桜木みなとのお披露目公演。2008年にロンドン・ウエストエンドで初演された、ジプシー・キングスの楽曲でつづるミュージカルを、谷貴矢の潤色・演出で上演。宝塚のショー・レビュー作品においてジプシー・キングスの曲はたびたび使用されてきており、おなじみのメロディが流れると過去の名シーンが心に甦ったり。
 19世紀初頭のカリフォルニア、ロサンゼルス市長アレハンドロ(松風輝)の息子ディエゴ(桜木みなと)には兄ラモン(瑠風輝)がいる。父によってスペイン留学を命じられたディエゴはジプシーたちと楽しく暮らしていたが、幼馴染のルイサ(春乃さくら)がやってきて、アレハンドロ亡き後暴政を行なうラモンから民衆を救ってほしいと言う。帰国するディエゴを、ジプシーのイネス(天彩峰里)も追いかけてくる。兄ラモンや人々の前でおどけた振る舞いをしながら、ディエゴは仮面の男ゾロとなって正義のために闘う――。二つの顔をもつ男、ディエゴ/ゾロ。演じる桜木みなとは、過去の宝塚スターたちのさまざまな美点を思い起こさせつつ、新たな時代の男役像を感じさせる芸の持ち主である。パッショネイトな場面では真飛聖のようなかっこよさがあり、音月桂のような愛くるしさと、初風緑のように突き抜けた明るさをももつ。そして実は演技派。ちゃらちゃらとおどけてルイサを失望させつつも、仮面をつければゾロとしてかっこよく登場。途中で大縄跳びの場面が登場するのは、やはり二つの顔をもつ主人公が正義のために闘う『THE SCARLET PIMPERNEL』へのオマージュである。正義のヒーローとして闘う過程で、桜木ディエゴが自分の弱さと向き合う素直な顔ものぞかせるのが人間的魅力となっている。人はいかなるリーダーについていくのかという問いを投げかける物語を、熱い歌やフラメンコを交えて演じていく桜木、そして桜木のもと熱くのびのびとパワフルな演技を披露する宙組生たち。宙組の新たなスタートにぴったりの作品となった。
 ルイサを演じた春乃さくらは芯の強さの表現が一本調子になっていたような。桜木ディエゴが弱さを克服してこそ発揮できる人間としての強さを表現していたあたりも参考に、相手の演技を受けて返すという基本に忠実に芝居を磨いていったらいいと思う。ディエゴのよき理解者であるイネスを演じた天彩がいい女っぷりを大いに発揮して熱い舞台を盛り上げていた。