『椿姫』[オペラ]
 指揮=レオ・フセイン、演出=ヴァンサン・ブサール、合唱=新国立劇場合唱団、管弦楽=東京フィルハーモニー交響楽団。2015年初演のプロダクションで今回が6度目の上演。
 人生と人間を知れば知るほどヴェルディ作品はおもしろい。ヴィオレッタ(カロリーナ・ロペス・モレノ)、アルフレード(アントニオ・コリアーノ)、アルフレードの父ジェルモン(ロベルト・フロンターリ)、三者三様の打算や甘え――ヴィオレッタには「愛の相手、アルフレードで大丈夫?」、アルフレードには「社交界の人気者を独り占めした優越感もなくない? あと、生活費をヴィオレッタがいっぱい出していたこと、本当に気づいてなかったの?」、ジェルモンには「お父さん、息子の教育……」等々思った。そういった部分あっての人間を音楽は包み込んでいく。フロンターリが熱演を見せる第2幕1場の音楽において、ヴィオレッタとの愛を許そうとしないジェルモンなる存在に対する「赦し」を深く感じた。他者に愛され救われる部分も無論あろう。しかし、最終的には、愛する対象を得ることによって愛というものについてより深く知り、その結果、自分自身をも愛することができるようになって、救われる、そんなことを感じた。ロペス・モレノが実に強い女性としてタイトルロールを造形。第1幕の「花から花へ」で歌われる快楽志向はほとんど貧富の差をはじめとする世界の理不尽に対する復讐のよう。終幕における布を高く掲げてのtriumphantなポーズによって、この作品の原作小説のモデルとなった実在の高級娼婦マリー・デュプレシとその人生が示唆するものが改めて深く心に刻み込まれて。何度も観ているプロダクションだが、暗さが印象的なグイド・レヴィの照明も含め、今一度新たに感じ取れるものも多かった。

(4月6日14時、新国立劇場オペラパレス)